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第61話 姉とイケメン3

今回は、華穂視点の話です。

 「(ギィー、ギィー)」



 オールを漕ぐ音が、静かな水面に響いていた。


 今、私は、ボートに乗っている。


 漕いでいるのは、蓮くんだ。


 成り行きで、私は、蓮くんが漕ぐボートに乗っていたのである。


 どうして、こうなったかと言うと。


 ・・・




 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 昼食を終えた後、瑞希の突然の提案で、私は、蓮くんと一緒に行動する事になった。




 「はあ〜、イキナリ、どうしたんだろうね、瑞希は・・・」


 「まあ、小さい頃から、あんな感じだったなあ」




 苦笑しながら、蓮くんがそう言った。


 しかし、蓮くんは理由を知っている様だ。




 「でも、どうしようかな〜、お腹一杯だから、まだすぐには泳ぎたくは無いし」


 「ねえ、華穂さん、あれに乗ってみない?」




 そう言って蓮くんが、海岸に上げてあるボートを指差した。




 「そうねえ、このままブラブラしていても、しょうがないから、いいよ」


 「じゃあ、チョット待っててね」



 

 私の言葉を聞いて蓮くんが、ボート屋さんの所に、駆け出した。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・


 こうして、私達は、一緒にボートに乗ることになった。


 

 「華穂さん、あの岩場に言ってみない?」



 蓮くんが、そう言って、振り返った。


 私は丁度、蓮くんと向かえ合わせに座っていたので、蓮くんが見た先を見ると、人が10人位立てる程の岩場が見えた。


 反対側を見ると、海岸から1km程、離れてるいるだろうか。


 それから蓮くんが、その岩場に向けてオールを漕いだ。




 *****************




 「(ゴッン)」



 小さな音を立てて、ボートが岩場に着いた。



 「揺れるから気を付けてね」



 蓮くんが、ユックリ立ち上がりながら、私に注意する。



 その後、蓮くんは揺れるボートから、器用に岩場に降りた。


 私は、揺れるボートに足を取られながら、何とか舳先(へさき)に来る。


 それから、蓮くんの手を取り、岩場に降りようとして、



 「あっ!」



 ヨロけてしまい、転びそうになった。



 「おっと」



 蓮くんがそれを察知すると、素早く引き寄せると、私は蓮くんに受け止められた。


 蓮くんに受け止められると同時に、私は思わず、蓮くんに抱き付いてしまう。


 蓮くんの体は、見ため以上に筋肉があり、しかも素肌は暖かい。




 「華穂さん、大丈夫?」


 「う、うん・・・」




 私が抱き付くと、反射的に、蓮くんも抱き返して来た。


 蓮くんが受け止めたおかげで、転ぶことは無かった。



 ・・・

 


 「(もう〜、足が地面に着いているのに〜)」



 すでに、足が岩場に着いているのにも関わらず、まだ蓮くんが私を抱き締めている。


 思いのほか、抱き締める力が強いので、声どころか、呼吸すらままならない状態だ。



 「(うえ〜ん、恥ずかしいよお〜)」



 私は、蓮くんの体の感触と腕の力強さ、それと体温の暖かさに、心臓がドキドキしていた。


 結局、蓮くんが気付くまで、しばらく、この恥ずかしい状況が続いたのであった。



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