第61話 姉とイケメン3
今回は、華穂視点の話です。
「(ギィー、ギィー)」
オールを漕ぐ音が、静かな水面に響いていた。
今、私は、ボートに乗っている。
漕いでいるのは、蓮くんだ。
成り行きで、私は、蓮くんが漕ぐボートに乗っていたのである。
どうして、こうなったかと言うと。
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昼食を終えた後、瑞希の突然の提案で、私は、蓮くんと一緒に行動する事になった。
「はあ〜、イキナリ、どうしたんだろうね、瑞希は・・・」
「まあ、小さい頃から、あんな感じだったなあ」
苦笑しながら、蓮くんがそう言った。
しかし、蓮くんは理由を知っている様だ。
「でも、どうしようかな〜、お腹一杯だから、まだすぐには泳ぎたくは無いし」
「ねえ、華穂さん、あれに乗ってみない?」
そう言って蓮くんが、海岸に上げてあるボートを指差した。
「そうねえ、このままブラブラしていても、しょうがないから、いいよ」
「じゃあ、チョット待っててね」
私の言葉を聞いて蓮くんが、ボート屋さんの所に、駆け出した。
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こうして、私達は、一緒にボートに乗ることになった。
「華穂さん、あの岩場に言ってみない?」
蓮くんが、そう言って、振り返った。
私は丁度、蓮くんと向かえ合わせに座っていたので、蓮くんが見た先を見ると、人が10人位立てる程の岩場が見えた。
反対側を見ると、海岸から1km程、離れてるいるだろうか。
それから蓮くんが、その岩場に向けてオールを漕いだ。
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「(ゴッン)」
小さな音を立てて、ボートが岩場に着いた。
「揺れるから気を付けてね」
蓮くんが、ユックリ立ち上がりながら、私に注意する。
その後、蓮くんは揺れるボートから、器用に岩場に降りた。
私は、揺れるボートに足を取られながら、何とか舳先に来る。
それから、蓮くんの手を取り、岩場に降りようとして、
「あっ!」
ヨロけてしまい、転びそうになった。
「おっと」
蓮くんがそれを察知すると、素早く引き寄せると、私は蓮くんに受け止められた。
蓮くんに受け止められると同時に、私は思わず、蓮くんに抱き付いてしまう。
蓮くんの体は、見ため以上に筋肉があり、しかも素肌は暖かい。
「華穂さん、大丈夫?」
「う、うん・・・」
私が抱き付くと、反射的に、蓮くんも抱き返して来た。
蓮くんが受け止めたおかげで、転ぶことは無かった。
・・・
「(もう〜、足が地面に着いているのに〜)」
すでに、足が岩場に着いているのにも関わらず、まだ蓮くんが私を抱き締めている。
思いのほか、抱き締める力が強いので、声どころか、呼吸すらままならない状態だ。
「(うえ〜ん、恥ずかしいよお〜)」
私は、蓮くんの体の感触と腕の力強さ、それと体温の暖かさに、心臓がドキドキしていた。
結局、蓮くんが気付くまで、しばらく、この恥ずかしい状況が続いたのであった。




