第46話 試験が終わって1
今回は、華穂視点の話です。
「キ〜ンコ〜ン、カ〜ンコ〜ン」
「では、これで終了する」
先生の合図で、期末試験が終わった。
「は〜、やっと終わった〜」
クラスの中に、安堵の声が聞こえる中。
私は、荷物を片付け、これから帰ろうとしていた所。
「華穂、一緒に、ドコか遊びに行かない?」
クラスの娘が、私に尋ねてきた。
「う〜ん、どうしようかな?」
私が、悩んでいると、
「ねえ、華穂、一緒に行こうよ」
瑞希がそう誘ってきた。
「ほら、由衣も一緒に行こう」
「う、うん・・・」
一緒に、由衣も巻き込む。
まあ、しょうがないか、由衣をそのままにして置けないし。
「うん、良いけど、その前に、ゆうくんに連絡しないと」
私はそう言うと、携帯を取りだし、ゆうくんにメールを打つ。
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”これから、瑞希達と遊びに行きます、夕飯までには帰るから待っていてね”
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ゆうくんに、メールを打ち終わると、瑞希達と共に、教室を出た。
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教室を出ると、いつも間にか、男女十人ほどの団体が出来上がっていた。
しかし、その中に私は、蓮くんの姿を発見した。
「あれ、蓮くんも、一緒なの?」
「うん、瑞希に誘われたんだよ」
そう言いながら、蓮くんは苦笑した。
少し前の方にいる、当の瑞希の方を見ると、何やら意味ありげな笑顔で、こちらを見ている。
瑞希のヤツ・・・。
私は、瑞希をジト目で睨んだ。
「あ、ほら、遅れるよ」
「あ、うん」
私が、瑞希に気を取られている内に、集団が先の方に進んだみたいだ。
そんな私に、蓮くんが注意をしてくれた。
私と蓮くんは、小走りになって、集団に追い付いた。
・・・
集団が、階段を降り、下駄箱付近で渋滞していた。
下駄箱の配置が、クラス単位で配置されているので、全校集会なんかの時に渋滞しやすいのだ。
そうして、遅々として進まない中、待っていると。
イキナリ、誰かに脚を引っ掛けられ、転びそうになった。
「危ない!」
そう思った瞬間、私は、誰かから抱き止められていた。
一瞬、パニックになったが、気が付くと、私は、蓮くんに抱き止められていたのである。
「大橋さん、大丈夫?」
蓮くんが、心配そうな顔でそう尋ねた。
蓮くんの腕は、ゆうくんよりも力強くて、とても頼もしく思えた。
私は、いつの間にか、彼の腕の手を添えると、振り返りながら、彼の顔をジッと見詰めていた。
「・・・大橋さん、もう良いよね」
蓮くんは、そんな私の様子の困惑していた。
私は、自分の状況に気が付くと、急いで彼から離れる。
遠くからの視線に気が付き、その方を向くと、そこには、ニヤニヤ笑っている瑞希の姿が見えた。
「大橋さん、大丈夫だよね」
「あ、ごめんね、大丈夫だよ」
再び、尋ねてきた彼に、私は、そう答えた。
「ほら、急がないと」
蓮くんが、そう言うと、すでに殆どの人間が玄関に出ていて。
残っているのが、二人だけになっていた。
そうして、出ていた人間みんなが、私達を、生温かい笑みを浮かべて見ている。
そんな生温かい視線を受けながら、靴を履き替えると、待っているみんなに合流した。
外に出ると、すでに梅雨が明けているので、日差しが強くて辛い。
私と蓮くんは、そんな日差しよりも辛い、周囲からの視線を受けると、顔を赤くしたまま、みんなと一緒に、繁華街へと向かったのであった。




