第103話 イケメンとの別れ
前日の夜に、私とゆうくんは、お互いの気持ちを通わせた。
ゆうくんの気持ちが分かり、そして、私の心が固まったのだ。
今日は蓮くんに、固まった自分の心を言わなければならない。
・・・
昼休み、蓮くんに放課後、校舎裏に来て欲しいと言っておいた。
私は先に行って、彼を待っている。
「はあっ」
私は、待ちながら溜め息を付いた。
これから言わなければならない事は、彼にとって、とても残酷な事だからである。
でも、これは、言わなければならない事だ。
なぜなら、ゆうくんが私の事をどう思っているか知らずに、勝手に諦めていたから。
そして、そのため、私が蓮くんの思いに薄々気付いていながら、自分の気持ちをハッキリさせなかったから。
だから、どんなに罪悪感に苛まれていようとも、これは自業自得なのだ。
そんな事を考えながら、彼を待っていた。
・・・
そして、しばらくして、蓮くんの姿が見えた。
彼は、落ち着いた表情で、こちらに向かっている。
私は、彼に言う言葉を考えると、胸が締め付けられる思いがする。
「華穂さん、で、返事って何かな」
蓮くんが私の前に立つと、穏やかに、そう尋ねてきた。
「・・・」
「・・・」
私は、緊張で喉が乾いてしまい、ナカナカ言葉が出ない。
だけど、そんな私を気遣って、辛抱強く、蓮くんが待っている。
・・・
どれくらい時間が経ったのだろうか。
しばらく、お互い無言のまま向かい合っていたけど、
「ごめんなさい!」
「!」
彼は驚いたが、しかし、納得したような表情になった。
「・・・やっぱり、そうなんだね」
「えっ!」
彼の言葉に、今度は私が驚いた。
「僕が告白したでしょ、あれから、華穂さん。
君は、とても思い詰めた顔をしていたよ。」
「・・・」
「だから僕は、何となく、本当は誰か他に思っている人間がいるんだと、思う様になってたし。
それに、瑞希からも、誰かとは言われなかったが、そう言う風な人間がいると聞いている」
「・・・」
「それに、君にそんな顔をして貰いたくないんだよ。
君にそんな表情をさせる為に、僕は、告白したんじゃないから」
「蓮くん」
私は、知らない内に、涙が頬に流れていた。
「じゃあ、これ以上いたら、お互い辛いから僕は行くね」
蓮くんが、そう言うと振り向くと、そのまま校舎の方に向かう。
私は、そんな彼の後ろ姿を涙を流しながら、見詰めていた。
心の中で、彼に謝罪と感謝の言葉をつぶやきながら。
******************
私は、校舎に入る蓮の姿を見た。
蓮は、落ち込んだような、スッキリしたような、複雑な表情だった。
その蓮の顔を見て、結果を悟る。
「蓮!」
私は、そんな蓮に声を掛ける。
「ああ、瑞希・・・」
「本当に、バカだよあの娘は、こんな優良物件を振るなんて」
蓮を見ると、溜め息を付きながら、そう言った。
「・・・」
私がそう言った後、蓮は無言になる。
「もお、そんな辛気臭い顔をしない。
そうだ、蓮、今晩私の部屋に来なさい」
無言になった蓮を見た後、蓮のそう言う。
蓮を自分の部屋に入れるのは、久しぶりだなあ。
小さい頃は、よくお互いの部屋を行き来していたんだよね。
「ええ〜!」
私が昔の事を思い出しつつ、そう言うと、蓮が抗議の声を上げた。
「”ええ〜!” じゃない、絶対来なさいよ!」
蓮の背中を叩きながら、強制的に、命令する。
「イテテ、分かったよ〜」
そんな私に、苦笑する、蓮。
まあ、今晩、蓮のヤツをタップリ慰めてやるかあ。
そんな事を思いつつ、蓮と一緒に帰るのであった。




