第101話 もう一度、幼い頃の夢
その後も、僕は姉さんの事について考えていた。
もう少しで、答えが出そうなんだけど、どうしても出てこない。
そんな状況がもどかしくて、更に考え込んでしまうのだ。
そんな訳なので、その後の授業でも、放課後になっても、僕は口数が少なくなっていたのである。
「・・・」
今日も、瑞希先輩達と一緒に下校していたが、瑞希先輩と蓮先輩は、僕のそんな様子を見ているけど、特には何も言ってこない。
恐らく、由衣先輩から、告白の事を聞いていたのだろう。
「・・・」
また、姉さんの方も相変わらず、無言だったので、僕達の集団はまるで、お通夜の様な状態であった。
・・・
家に帰りと夕飯の支度をし、二人で夕飯を食べたが、今日は特に、二人とも無言で食べていた。
姉さんが様子がおかしくなっても、反応が鈍いけど、僕は姉さんにそれなりに語りかけていたが、今日は、自分も無口になっていたので、食卓が異様な雰囲気になったのである。
そんな異様な雰囲気の中で、味が分からない食事を終えると、姉さんと僕は、それぞれ自分の部屋に戻った。
・・・
自分の部屋に戻ると、僕はベッドに横たわる。
そうして、再び、ベッドの上で考え始めるが、さすがに今日は、ずっと考え込んでいたので疲れたのか、眠気が襲ってきた。
そして僕は、そのままベッドの上で、眠り込んでしまった。
・・・
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・・・
「お姉ちゃん、手を離さないでね」
二人で遊んだ後、家に帰る途中で、僕は、お姉ちゃんにそう言った。
この間、道に迷って泣き出した所を、お姉ちゃんが探し出した事があったのだ(第71話参照)。
それから、お姉ちゃんは僕の手を、いつでも繋いで歩いてくれる様になっていた。
僕はその事を思い出すと、不安になって、お姉ちゃんにそう言ったのだ。
「うん、ゆうくん、ずっと一緒だよ」
そう言って、僕に微笑みかける、お姉ちゃん。
「お姉ちゃん、ホントに・・・」
僕は思わず、お姉ちゃんにそう聞いてしまう。
「ホントだよ、ゆうくん、いつまでも一緒に居ようね」
「うん、ずっと一緒だよ」
その言葉を聞いて、僕は自然に頬が緩んでいく。
そうして、二人は、お互い微笑みながら、手を繋いで帰って行った。
・・・
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・・・
「・・・あっ」
目が覚めると僕は、先ほど見ていた夢の事を思い出していた。
あれは、僕が道に迷って、姉さんが探してくれた後の事だ。
それ以降、姉さんが、いつも僕の手を繋ぐようになったのである。
それから、常に姉さんと手を繋いでいる内に、いつしか僕の手が姉さんの感触を覚えてしまった。
姉さんと手の感触を覚えると同時に、いつの間にか、僕の隣に姉さんがいるのが当たり前になっていた。
いや、最早、僕の半身と言っても言い存在にすら、なっていたのだ。
そうなのか!
どうして、姉さんとの関係が壊れるのを恐れていたのか。
どうして、姉さんに固着していたのか、これで分かった。
そして、別に特別な関係にならなくても良いのだ。
いままで通りで良かったのだ、ただ、お互いにずっと隣に居てくれる事を誓い合えば良いのだから。
・・・
それから、由衣先輩との事も答えは出た。
由衣先輩と手を繋いでも、姉さんとは違う感触に違和感を覚え、そして、姉さんの感触を求めてしまう。
先輩とは何も無ければ、先輩の事を受け入れていただろう。
けど、僕の隣に居て欲しいのは、姉さんだけだと、頭でも理解する事が出来たからには、もう姉さん以外の女の子は目に入らない。
それが分かれば、次に、姉さんの方に気持ちを確認しないと。
そう思うと、僕は、姉さんの部屋へと向かった。




