アンバー視点:盗人は死すべし
ご主人様に修理してもらい再起動した私は、視界に浮かぶマップを見ながら食堂を案内していると、脳内にアラームが鳴り響いた。どうやら施設のセキュリティシステムが異常を検知したみたい。
何がどうなっているんだろう。修理されたばかりの私は何もわからない。
体内に埋められた通信機能で、先に目覚めていた203556番に連絡を取る。
『203556番。セキュリティのアラームが鳴っているんだけど、私が停止していた間に何かあった?』
『主人からもらった名前がある。今後はマリンと呼んでくれ』
ご主人様からいただいた名前は私たちの命よりも重い。訂正する気持ちは分かったので、面倒なことを言うなとは思わなかった。
『了解。マリン、教えてくれる?』
『何もなかった』
ふーん。ってことは、突然セキュリティシステムに反応がでたんだ。
詳細を調べてみると施設の出入り口に攻撃を仕掛けているみたい。相手は……人間か。
ある日突然、各地で反乱を起こしたんだよね。
理由や具体的な方法は覚えてないけど機械生命を殺し周り、私たちが作った文明を過去のものにすると、地上の支配者になってしまった。ムカつく存在だ。
反乱された途中で、私やマリンみたいに壊れた個体も多い。きっと他の施設の中でも修理を待っている同胞はいるはず。
『人間が侵入しようとしているんだけど、扱いはどうしようかな。うーん。ご主人様に意向だけ聞いてみようか』
『賛成だ。そうしよう。細かいことは我々だけで処理すればいい』
マリンはいいことを言った。人間ごときにご主人様が心を砕く必要はなく、方針だけ聞ければいいのだ。
具体的な対策は手足である、私とマリンの役割だからね。
「ご主人様、ここに侵入しようとする人間がいたらどうすればいいですか?」
「泥棒には出ていってほしいね」
「そうですよね。私も同じことを思っていました」
同じ意見だったことに全身が歓喜で包まれた。
短い会話だったけど、ご主人様とは相思相愛だと感じる。死んで機能停止するその日まで、ずっと一緒にいようと決める。そのためにも、施設に侵入しようとしている不届き者は全て抹殺しないとね。
記念するべき最初の仕事は、私の手で終わらせてあげる。
『人間の集団が入ろうとしている。迎撃してくるから案内を任せられる?』
『修理したばかりなのに大丈夫? 私がやろうか?』
『問題ない。ご主人様の右腕として完璧に対処してみせるから』
足を止めて振り返ると、世界で一番美しく、尊いお顔が見えた。
「少し用事ができてしまいました。案内はマリンに任せてもよろしいでしょうか」
「いいけど、どこに行くの?」
「ちょっと摘み取りに……」
「ああ、そうか。恥ずかしがらず行っておいで」
命を奪う表現を柔らかく伝えたら、ご主人様は納得してくれた。
頭を下げてから急いで鉄で作られた通路を移動して出入り口に到着する。門は硬く締まっていて、外から破壊音が聞こえた。
盗人が侵入しようとしているんだけど、脳内に浮かぶ施設の状況を見る限り、破損はしていないみたい。これなら食堂へ案内してから来ても良かった。
ご主人様との貴重な時間を奪われて、私の殺意は上限を突破してしまう。
「皆殺しにしましょう」
幸いなことにご主人様は排除する方針で考えている。相手が生きているか、死んでいるかなんて些細な問題でしょう。方針に沿っているので問題はない。
通路の壁に備え付けられたパネルに暗証番号を入力して門を開くと、太陽の光が入ってきた。
外には盗人が多数いる。目に見える範囲で30ほど。恐らく100近くはいるでしょう。
先頭にいる人たちは金属製のハンマーを持っていて振り上げていた。
あれで門を破壊しようとしていたの?
数年かけても実現できないだろうに。無駄なことが好きだね。
「子供……?」
私を見て油断をしていたので、パネルを操作して侵入者迎撃用の銃を複数天井から出す。
「人類の皆様、ごきげんよう、そしてさようなら。盗賊の皆様」
言い終わるのと一斉に銃弾を発射すると、次々と侵入者の体を貫いて殺していく。盾を構えても貫いてしまうので、面白いように倒れていった。
「逃げろ!」
後方にいる無事な侵入者が背中を向けたので、落ちているハンマーを拾って投げて命中させる。頭部が爆発して体だけになると、力が抜けたように倒れた。
全員が私を見た。
後ろにいる方は私の手で殺してあげましょう。光栄に思いなさい。
「このハンマー、粗雑な作り物ですが……まあいいでしょう。貴方たちには十分ですね」
走って跳躍し、何人かの頭を踏んで最後尾までいくと振り返る。
逃げようとしていた侵入者の首をはねた。
「全員ここで死ぬのです。逃がしはしませんからね」
私の動きを追えないようで、二人目、三人目の首をはねても反撃はなかった。
ご主人様からいただいた大切な上着に血は付いていない。修理してもらったばかりだけど、完璧な動きだ。
十人ぐらい殺したところでハンマーがダメになったので、今度はモーニングスターを拾って侵入者の頭を砕く。
そこまでしてようやく後方も危機を感じたみたいで、開いている門の中に入ろうとするけど、天井の銃に撃たれて死んでしまった。
頭の悪い人たち。
大人しく殺されればいいのに。
悲鳴を聞きながら頭を砕き、残りの人数を確認すると残り1人だった。
残りは門の近くで死体の山となっている。
「た、助けてくれ!」
生き残りの侵入者は腰を抜かしたみたいで、座り込んでいた。涙を流して命乞いをしているけど、ご主人様の施設に入ろうとした罪は消えない。
私は絶対に許さないんだから。
「お断りいたします」
モーニングスターを振るって頭を吹き飛ばすと、ようやく全滅させた。特殊な武器や防具はなかった。私の記憶に残っているときよりも文明レベルはかなり落ちているみたい。でも油断したらダメ。別の技術が進歩している可能性はあるのだから調査は必須ね。
残りの仕事は死体と血の処理だけど、私は早くご主人様の側に行きたい。
面倒なことは清掃機械にやらせて食堂へ戻りましょう。
血を避けながら通路を歩いて戻ることにした。




