フィンの備忘録・1
息抜きを挟みます。
フィンの独白オンリーなので
シリアスな展開を物凄い勢いで、コメディに塗り替えて
しまっています。
コメディ調な文章を読みたくない、という方は
この章を飛ばして下さって大丈夫です。
読まなくても支障のないように、次章へ繋げます。
〇月〇日
サリム皇子とナタリア姫とのお茶会に、クロード殿下とリセアネ姫が乱入。
ナタリア王女がここのところずっと元気がない。
冷たいエドと過保護なクロード殿下たちのせいだと思うが、出過ぎた真似をしたらこっちが酷い目に合いそうなので、傍観している。
ごめん、ナタリー。
今日はとうとう嫉妬のあまり、エドが暴走。
自分以外の男の為に着飾ったナタリア姫に我慢できず、彼女のドレスに文句をつけるなんて馬鹿すぎる。案の定、夜、隣の奴の部屋からうめき声が聞こえた。
覆水、盆に返らず。←エドワルドへ
〇月〇日
王妃の誕生パーティで、リカルド男爵令嬢を母が発見、捕獲。
が、俺が逃がしてしまった。
昔のことってなんだ。
マアサ……か。
マがつく女を思い浮かべるが、マリサ伯爵未亡人しか思い出せない。
彼女とは年が違い過ぎるな。
エドワルドは、今日も頑張っていた。
着飾ったナタリア姫から意識をそらそうと、きつく拳を握りしめていたせいで、近くに陣取っていた今年一年目の騎士どもが、かなり怯えていた。
リセアネ姫とだけダンスをし、それをナタリア王女が淋しそうに眺めていたのも知らない。教えてやろうかとも思ったが、余計に苦悩しそうなのでやめておいた。
持つべきものは友 ←エドワルドへ
〇月〇日
懸命に俺に落ちまいと頑張るマアサが、日々可愛く思えてくる。『来る者拒まず、去る者追わず』が信条だったのに、すっかり宗旨替え。
俺も、とうとうエドの仲間入りか。
――――嫌だな。
ナタリア姫はあのパーティ以来、きちんと睡眠を取れていないのか、顔色が悪い。そろそろ限界かもしれない。幼馴染として、流石に見ていられなくなってきた。……何とかせねば。
〇月〇日
マアサの俺に対する警戒心をなくすことと、ナタリア姫を元気づけること。
一石二鳥を狙ったが、危うく死ぬところだった。
エドワルドはキレるのが早過ぎる。
だめ、すぐ、抜刀。
鞘ごととはいえ、あのスピードで頭をかち割られたら、とんでもない流血沙汰になる。剣の訓練をサボらず頑張ってた自分を褒めてあげたい。
初めてのお忍びは、まあまあ上手くいった。
もともとナタリア姫に危険が及ぶとは、思っていなかった。
町娘の恰好をした彼女は、まさにクイーン・オブ・庶民。
王族の顔を直接知っているのは、ごく僅かな人間だし、ドレスとティアラ抜きのナタリア姫は、パッと見、本人に見えないのだ。
せいぜいソックリさん。
……この日記、クロード殿下に見つかったら、一緒に俺も燃やされるな。
隠し場所、変えておこう。
マアサを口説こうとするたびに、エドワルドが余計な口を挟むのでイラっとしたが、声を立てて笑うマアサの普段より幼い表情が見られたので、よしとする。
エドは無意識に過剰な色気を振りまいて、ナタリア姫をドン引きさせていた。
凄味のある美形が、指ペロって。
昼間にやっちゃだめだろ。
戻ってきた後注意すると、そんなことはしていない、と言い張っていた。
4年振りの逢瀬に、どんだけ夢見心地だったんだ。
俺も、引いた。
気になることといえば。
レストランの入り口ですれ違った、いい男風の兄さんが、ナタリア姫をじっと見ていたことか。店内ではフードの方が目立つと思って脱がせたのは、失敗だったかもしれない。しばらく行った後、振り返ると、誰もつけてきている気配はなかった。……気にし過ぎなのか。
どうにも嫌な予感がするが、エドは頼りにならない。
いつの間にか買ったらしい繻子のリボンを、ナタリア姫にとうとう渡せず、落ち込んでいた。いきなり消え物ではないプレゼントを渡そうとするなんて、無謀としか思えない。
俺は、次の日マアサにだけ、有名店のマカロンをプレゼントしておいた。
赤いのと茶色いのは、君の髪と瞳を想って買ったんだよ、と囁いてみた。
が、返ってきたのは「ご苦労様」という一言だけ。
本当に、手ごわい。
早く、マアサの言ってる俺たちのなれ初めを思い出したい。
滝にでも、打たれてみるか……。




