【SS】雑女神様のギフトは「きらきら」でした。追放された転生聖女、田舎で洗濯屋スローライフを始めます。
「おめでと~! あなた、転生聖女よ!」
ついさっきまで社畜だった私の前で、
やたらとキラキラした女神様が手を叩く。
「転生? じゃあ、何かギフトとか?」
「もっちろん! あなたに”きらきら”を授けるわ!」
「……きらきら?」
「ええ、『きらきらりん!』って言えば使えるから。
じゃ、行ってらっしゃ~い!」
身体が再び光に包まれる。
「ちょっ! 効果とか制約とかは?」
「たぶん使えばわかるから~。がんばって~」
女神様、雑過ぎません!?
目を開けると、そこは豪華な玉座の間。
「これが異世界……?」
思わずきょろきょろ。
「おお、聖女よ。よく来てくれた」
いかにもな王様が満足げに頷いた。
「して、女神から授かったギフトを早速見せてみよ!」
目の前には、聖剣も鎧も甘いマスクも、ぜんぶ光輝く勇者。
「聖女殿! 頼む!」
私は深呼吸した。
(恥ずかしいんですけど……)
「……き、きらきらりん!」
沈黙――
「……何も変わらんぞ」
「そ、そんな……。じゃあ、そこのイケメン騎士様!」
「この身、聖女のために!」
どきっ!
「きらきらりん!」
――やっぱり変わらない。
「役に立たぬ聖女はいらぬ!」
王のその一言で、私は城を追放された。
やがて、着の身着のまま辿り着いた田舎。
村人たちは温かく迎えてくれた。
お風呂も入ってないし、聖衣も汚れてる。
試しに”きらきら”を私にかけると――一瞬でキラッキラに。
ついでに、お肌までツヤツヤ。
もしかして。
勇者も騎士も、元からキラキラだったから?
村人の勧めで私は洗濯屋を始めることに。
こうして転生聖女のきらきらスローライフが始まったのです。
――そして一年。
聖女の洗濯屋はすっかり村の名物に。
こういうスローライフもいいかもと思ってたけど――
根は社畜の私。
やっぱり手を広げたい。
この村は王都から馬車で三日。
手を広げても近隣の村が限界。
そうだ! 村までの旅で見かけたあれに――
「きらきらりん!」
飛竜の瞳がキラキラに。
テイムした飛竜で洗濯屋は大繁盛!
王都に進出し、社交界向けの美顔も大好評!
そんなある日。
「聖女のいない勇者など敵ではない!」
王都で悪逆の限りを尽くす魔王に、
勇者も騎士も王様も涙目。
「私の店は壊させない!」
「ふはは! 役立たずの聖女ではないか!」
(やるしかない!)
「きらきらりん!」
全てが光で包まれ――
「なにぃ! 世界が輝く、だと?」
魔王の瞳もキラキラに。
こうして世界は平和に。
王様の土下座を新しい看板にした聖女の洗濯屋は――
今日も大繁盛です!
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