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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第3章

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99話 みちる、買い物帰り



 9月のある日、僕とこうちゃんは秋葉原でデートしてきた。


 その日の帰り道。

 夕方。


『世間ではクリスマスですがいかがおすごしでしょうか。こうちゃんはお家に引きこもってお仕事してるでしょう』


 こうちゃんがロシア語でよくわからないことを言う。


 あんまり意味は無いと思う。


『こうちゃんクリスマスって苦手なんですよね。外で歩くと周りカップルばっかで肩身が狭いし、かといって一人で家で作業なりSNSしてると、なんだ独り身なんだって思われるのが嫌でね~。ね、そう思いません?』


「こうちゃん、どこ見て何言ってるの?」


 とそんな風に歩いていたそのときだ。


「みちる姉さん……だ」


 正面を小柄な影が歩いていた。


「みちるー!」


「勇太……とおチビ」


 僕と目が合うと、みちるはうれしそうに笑う。


 だがこうちゃんを見た途端、なんだか嫌そうな顔をした。


「おデートかしら?」


 ぴきぴき、と額に血管を浮かばせながら、みちるが笑顔で尋ねてくる。


「うんっ、そうだよ。ねー、こうちゃん」

「へぇ~~~~~~~~~~~~~~~」


『ひぅ……! こわっ! かみにーさま鈍感すぎぃ! そこにジェイソンも真っ青なモンスターがいますよぉ! 気づいて気づいて!』


 こうちゃんがブルブル震えてる。なんでだろ?


「そりゃあ仲がよろしいことですね!」


「うん! 僕らは仲良しだよ、ねーこうちゃん?」


『確かに仲良しだけど、うんとうなずいたらタマとられそうだからうなずかないでおくね!』


 こうちゃんがさっ、と僕の後ろに隠れた。


 シャイだからかな。


「ふんだっ! まあいいわ。確か仕事の帰りだったんでしょ?」


「うん。こうちゃんと組んで新しい仕事」


 僕とみちるは歩き出す。


 僕らは全員で同じ家に住んでいるんだ。


 みちるはどうやら買い物の帰りらしい。


 両手に荷物をいっぱいにして持っている。


 僕は重いだろうと思って、片方もってあげる。


 う……結構重いな。


 そう思っていたら、みちるが袋の持ち手を、片側だけ持ってくれた。


「ありがと、勇太」

「こちらこそ、みちる」


 僕らは二人で、一つの大きな買い物袋を持っている。


『すげえ……新婚カップルみたい……さすがヒロイン……はっ! こうちゃんもヒロインですよね!? ねえ!?』


 こうちゃんがロシア語で何かを主張してくる。


 多分あんまり意味は無い。


『おいおいロシア語理解できないからってスルーしてると、大変な目にあうぜえ。たまにロシア語でボソッとでれるかもしれへんやん? なぁ?』


「おチビ。うるさい」


「のぉ~……」


 しゅん、とこうちゃんがうなだれる。


「でも新しい仕事なんて……大丈夫なの?」


「かみにーさま、大丈夫なの?」


「あんたに言ってるのよ、おチビに」


 ふぁ……? とこうちゃんが首をかしげる。

「ただでさえいつも締め切りギリギリなのに、3本もやるって大丈夫なの?」


『ふははは! 問題なしおくんですお! 大丈夫大丈夫締め切りなんてふふふふーんだ』


 多分任せろ的なこと言ってるんだろうけど、なぜだろう、全然安心できない……。


「仕事数減らした方が良いんじゃない? 心配よ、あんたも……おチビのことも」


 みちるが体を心配してくれる。

 うれしいなぁ……。


「僕は大丈夫」

「そんなにお金欲しいの?」


「違うよ。仕事増やすのはみちるに読んで欲しいからさ」


 僕は昔から、みちるのために小説を書いていた。


 一番のファンなのだ。


「みちるにたくさん、色んなお話を読んでもらいたいんだ」


「……ばか。それで倒れちゃったら、元も子もないでしょ」


 ぷいっ、とみちるがそっぽを向く。


 耳の先が真っ赤に染まっていた。


「大丈夫。体は意外と丈夫なんで。それに今は、お嫁さんが体調管理してくれるから、毎日健康だよ、なんて」


「ばっ……! ばかぁ~……♡ もう、だ、誰がお嫁さんよ……まったく……まったくもぉ~……♡」


 みちるが照れたようにふにゃふにゃと笑う。

「笑った姿もかわいいなぁ」

「ば、ば、ばかぁ! もうっ! 外でそんなへ、変なこと言わないでよねっ!」


「じゃあ家の中ならいいの?」


「そ、それはぁ~……………………うん」


 ふふっ、やっぱりみちるは可愛いなぁ。


「…………」


 こうちゃんがみちるをじーっと見ている。


「な、なによ?」

『これがメス顔か。ヒロインはこういう表情しなきゃいかんのか……こうちゃんもちゃんとヒロインアピールしとかんと、読者の人がヒロインって認識してもらえなくなるからな』


 こうちゃんがふんっ、とそっぽを向く。


「ば、ばかーもうへんなこといわないでよねー」


「……おチビ、それは、誰のまねかしら~?」


「ひぃ……! こわぁい!」


 だっ! とこうちゃんが逃げていく。


「勇太、これお願い。まてごらぁ!」


 みちるから買い物袋を受け取る。

 彼女はこうちゃんを追いかけていき、後ろからキャッチ。


『ひぃ! おかんべん! かんにんしてくださーい!』


 もちもち、とこうちゃんのほっぺを餅のようにこねくり回す。


「うらやましいのよ二人でデートいってもぉ!」


『私情入ってません!?』


 ぎゅーっとほっぺを伸ばすみちる。


「まあまあそれくらいに」

「ふんっ……!」


 みちるがこうちゃんを解放する。


『今時暴力ヒロインは流行らないよ! 今はロシア語でボソッとでれるヒロインが望まれてる……つまりこうちゃんが時代に望まれてるヒロインなんですよ!』


「ほらこうちゃん行くよ」


「あーん、かみにーさまー。扱いざつぅ……」


 僕らは笑って家路につく。


 みちるもあきれていたけど、でも、微笑んでいたのだった。



【★お知らせ】


新作の短編、書きました!



「追放された黒執事は元ゴブリン令嬢と気ままに旅する〜我々を家から追い出したくせに、今更何の用ですか?」


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よろしければ是非!


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★新連載です★



↓タイトル押すと作品サイトに飛びます↓



『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[一言] >今はロシア語でボソッとでれるヒロインが望まれてる……つまりこうちゃんが時代に望まれてるヒロインなんですよ! いやあなたそれやったら睨まれるから自重するっていいましたやん…… つまりこうちゃ…
[一言] え~?みちるは嫁という名の愛の奴隷だと思うですとロシア語で宣う、こうちゃんが居た!
[一言] 内容のことでは無いのですが、短編のリンク切れてますよね
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