98話 こうちゃんの、変化
僕はこうちゃんと、秋葉原にデートに来ていた。
三郎さんと別れたあと、同人ショップを巡ったり、ゲーセンにいったりした。
その後、僕らは、ヨドバシまで来た。
「欲しいゲームでもあるの?」
「こんと、ろーらー、欲しい」
ヨドバシのゲームコーナーへとやってきた僕たち。
ソフトだけでなく、ハードも売っている。
『まさかPSが5まで出るとはねー。こうちゃんが子供の頃はPSPが出たときでもそりゃあもう驚いたもんだよぉ』
ロシア語で何かをつぶやく、こうちゃん。
「コントローラーってなんの?」
「すいっち」
ニンテンドースイッチのコーナーへと足を運ぶ。
「これだっ」
スイッチについてるコントローラーじゃなくて、PSみたいなコントローラーだった。
「連射機能、ついてる」
「ふーん。でもこうちゃんってゲーム機いっぱいもってるじゃん。コントローラーも持ってるんでしょ?」
こくり、とこうちゃんがうなずく。
「これ……アリッサ、姐さんの」
「アリッサの?」
こくこく、とこうちゃんがうなずく。
『今こうちゃんどうぶつの森、姐さんとやってるの。連射ボタンついていたほうが、収穫とか楽でさ』
ロシア語で全部は聞き取れなかったけど、わかることがある。
「そっか。アリッサのために、コントローラー、買ってあげるんだ」
「うんっ。だって……友達、ですから……なっ!」
こうちゃんが笑顔で言う。
アリッサ……喜ぶだろうなぁ。
彼女、友達いないって言ってたけどさ。
ほらみてよ、ちゃんと……こうちゃんっていう、友達ができてるよ。
「そっか。お金、出すよ?」
「もーまんたい!」
「でも、お金無いんでしょ?」
ふふん、とこうちゃんが笑う。
「くれじっとかーどー」
大山のぶ代さんみたいな感じで、こうちゃんが言う。
『これさえあえば何でも買える魔法のカードです! ご利用は計画的に!』
「そっか。自分で買うんだね」
「うん!」
友達に買ってあげるものは、自分で買いたいんだね。
うんうん、偉いなぁ。
『ちらちら……こうちゃんが褒めて欲しそうにこちらを見ている。ちらっ、ちらっ』
期待のまなざしを向けるこうちゃん。
「はいはい、すごいすごい」
「えへー♡」
こうちゃんは手を振りながら、レジへと向かう。
僕は一人、彼女の帰りを待つ。
「少しずつ、変わってきてるんだなぁ」
こうちゃんは、アリッサと関わるようになって、友達のために何かをしようとしてる。
アリッサも、孤立していたけど、こうちゃんって友達ができて、毎日楽しそうだ。
今、僕がやっている共同生活、その成果が少しずつでも……でてきている。
みんなが幸せで、笑って暮らせているのは……うれしいなぁ。
「かみにーさまぁ~……」
情けない声が、レジのほうからあがる。
半泣きの彼女が手招きをしている。
「ど、どうしたのこうちゃん?」
僕はレジの前まで移動。
お姉さんが、困ったように言う。
「すみません、こちらのお客様のクレカ、上限まで行ってるみたいでして」
「クレカ上限までいくまで、何買ったの……?」
こうちゃんが堂々と言う。
「ソシャゲ! ガチャ!」
「ああ、うん……君はそう言う子だったね……」
『クレジット決済ってどうにもお金を使ってる感が薄いと思うんですよ。だから気軽にお買い物しちゃう。そんで支払い明細を見て青ざめてしまう……そんなこと、ありません、皆さんも?』
僕は財布を取り出す。
「すみません、これ、僕が買いますので」
僕は現金で、コントローラーの分の支払いを済ませる。
レジから離れて、僕はこうちゃんに品物を渡す。
「はいこれ」
「うう……めんぼくない……」
しゅん、とこうちゃんが頭を下げる。
「いや、いいよ。こうちゃん、頑張ったもんね」
普段自分のお金を、ゲームかソシャゲかガチャにしかつかわない、こうちゃんが。
誰かのためにお金を使おうとしたんだもん。
「偉いことだよね、立派なことだよ」
「かみにーさまーぁ!」
こうちゃんが僕の体に抱きついてくる。
ぼくはこうちゃんの銀髪をなでる。
『……なんで、そんなに、あなたは優しいの?』
ぼそり、とこうちゃんがロシア語で何かをつぶやく。
『……かみにーさま、好き。優しくて、甘やかしてくれるから、大好き』
「ん? こうちゃん、何か言った?」
かぁ……とこうちゃんが顔を赤くすると、ぶんぶんぶん! と首を振る。
「ぴ、PS5! PS5! 欲しい!」
こうちゃんがPSコーナーを指さす。
「えー、それは駄目だよぉ」
『なんでや!? なんでディアベルはんが死なないとあかんのや!?』
こうちゃんがロシア語で何かをつぶやいている。
これは、さっきと違って、ネタなのはわかる。
けど……。
「ねえ、こうちゃん。さっきぼそって、何言ったの?」
「~~~~~~~!」
こうちゃんがスタスタ、と先を歩いて行く。
「こうちゃん? おーい」
『ああもうっ、どうしてラブコメ主人公のお耳は、都合良く難聴と地獄耳とが、同居するかなっ!』
こうちゃんが立ち止まって、ぷくーって頬を膨らませる。
「わたし、だって……女の子、だよ!」
「? うん、知ってるけど」
だからなんだろう?
『……こうちゃんだって、ヒロインだもん。たまには、でれるもん』
「こうちゃん……」
『でもロシア語ででれるとそれはそれで別の出版社に怒られそうだから、自重してるだけだもんっ!』
ロシア語で何かをつぶやくこうちゃん。
僕は三郎さんやアリッサみたいにロシア語
が上手じゃないので、何を言ってるのか、わからない。
でも……わかることはある。
「ごめんね。怒らせちゃって」
こうちゃんは僕を見ると、笑顔で首を振る。
よかった、許してくれるみたい。
『じゃあPS5買って♡ 中古でも可♡』
「そろそろ帰ろっか」
『ほらぁ! また難聴になってるぅ! かー! ラブコメ主人公ってこーゆーとこやーねもうっ! ヒロインの気持ちを考えてよねー! まったくもうっ』
またこうちゃんがプリプリと怒る。
でも……僕の手を握っていた。
「帰ろっか」
「うんっ!」
こうして、僕らの秋葉原デートは、終わったのだった。
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