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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第3章

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88話 後片付けと新たな一歩



「「「ごちそーさまでした!」」」


 新居に越してきた僕たち。


 お昼ご飯のおそばを食べ終えたところだ。

「はー! ちょーおいしかったー……さすがみちるんっ♡ お料理上手!」


 由梨恵ゆりえがみちるの腕に抱きついて、笑顔で言う。


「そりゃどーも、おそまつさま」


「うん、すごい美味しかった。やっぱりみちるは料理上手だね」


「そ、そう……えへへっ♡ 勇太に言われるとうれしいなっ」


「みちるんリアクション差別だよぅ!」


 ぎゅーっ、とさらに強く、由梨恵がみちるの腕にくっつく。


「暑いわよ。ほら、空いた食器片付けるから手伝って」

「あいあいさー!」


 由梨恵とみちるは、お皿を持って、台所へと戻っていく。


『さてこうちゃんは食後のガチャを引くか』


 いつの間にか取り出したタブレットPCを手に、こうちゃんがソファに寝そべって操作する。


「…………」

「アリッサ? どうしたの?」


 人気歌手のアリッサ・洗馬せばが、実に悔しそうに歯がみしていた。


「おそば嫌いだった?」

「……そうじゃないんです。ただ……悔しくて」


「悔しい?」

「……あの人、わたしと年も変わらないはずなのに、こんな美味しいもの作れるなんて……やっぱり、才能の差でしょうか……?」


 アリッサが勘違いしてるようなので、僕がフォローを入れる。


「違うよ。みちるは努力してたよ」

「……え?」


「というか、せざるをえないっていうか」


 僕はみちるの簡単な経歴を告げる。


 お母さんが早くに死んだこと。

 お父さんが家に寄りつかないこと。


「だから、料理は自分でしなくちゃいけないことだったんだ。才能なんかじゃないよ」


「……勇太さん」


「アリッサだって、その歌唱力は、天賦のものじゃないでしょ? 才能だけでプロやってる人なんて、どこにもいないよ。ね、こうちゃん?」


 僕はこうちゃんに話題を振る。


『うひょー! SSRキタコレ! このイラスト! えちえちの水着! ひゃー! たまりませんなぁ!』


 こうちゃんがロシア語で何かをつぶやいている。


「ほら、こうちゃんも言ってるよ。【わたしも努力したから神絵師やってるって】」


『なぬー! このえちえち衣装のフィギュアも出るんだってー! 予約するしかない、このびっぐうえーぶにー!』


「ほらこうちゃんも言ってるよ、【アリッサもがんばれば料理上手になれるよ】って」


「……そう、ですね」


 アリッサが小さくつぶやく。


「……上手い人はみんな、努力している。なんで忘れてたのでしょう、そんな……当たり前のこと」


「天才って言葉は、努力を語るよりも、お手軽だからね」


 何でも才能があるから、と理由付けで済ますのは、僕はあんまり好きじゃない。


 誰だって、血のにじむ努力や、昔から努力を積み重ねてきたからこそ、今強い力を発揮できているんだ。


 こうちゃんだって……こうちゃんだって…………………………


『がーちゃ! がーちゃ! あともう100連! こいこい……! かー! だめかー! くっそもう100連! もう100連! かー!』


 ……多分、こうちゃんも、あるだろう。

 その……すごい、積み重ねとか、努力とか……苦労とか……うん。


「アリッサ。上達したいなら、努力するべきだよ」


「……でも、努力の仕方、わかりません」


「すぐ近くに、良い先生がいるじゃないか?」


 台所では、由梨恵とみちるが、並んでお皿を洗っている。


 アリッサは、露骨に嫌そうに顔をしかめる。


「嫌ってたら前に進めないよ? 大丈夫、みちる、そんなに君のこと嫌ってないから」


「……なんでわかるんですか?」


「わかるよ。幼馴染みだもん」


 アリッサは迷っているみたい。

 みちるに何か教えを請うことを。


 でも、僕にはわかった。

 彼女は前に進もうとしているって……。


「さ、おいでアリッサ。一緒にいこう?」


 僕は彼女に手を伸ばす。

 アリッサはその手を掴んで、立ち上がる。


「みちるー」


 僕らは台所へとやってきた。


「なに? 勇太…………とあんたも?」


 僕はみちるに言う。


「実はアリッサが料理教えて欲しいんだって」

「ふーん……」


 みちるは洗い物を止めて、アリッサを見上げる。


 みちるの方が背が小さいので、どうしても見上げる形になる。


「で?」


「アリッサ。ほら」


 僕は彼女の背中を押す。

 アリッサは前に出ると、素直に頭を下げた。


「……お願いします。料理、教えてください」


「え……?」


 みちるが、目を丸くしていた。

 アリッサが素直に願い出るとは、思ってなかったのかもしれない。


「……料理、美味しかった、です。わたしも、ユータさんに、こんな美味しい料理……食べさせてあげたいのです」


「そ、そう……」


 みちるは自分の頬をぽりぽりとかく。

 僕は知っていた。あれは、みちるの照れてるときの癖だ。


「みちる。どうかな?」

「うーん……。でもなぁ」


「意地張らないの」

「………………わかったよ」


 はぁ、とみちるがため息をつく。


「いいわ、教えてあげる」

「……いいのですか?」


 アリッサが意外そうに目を丸くしていた。

 多分断られるとでも思ってたのだろうな。


「か、勘違いしないでよね。食事当番、1人で5人分作るの、疲れるから。アタシが楽するために、あんたを鍛えてやるだけなんだからねっ」


 ……はは。

 本当に、みちるは、素直じゃないなぁ。


「みちるんありがとー! だいすき!」


 由梨恵が笑顔で、みちるに抱きつく。


「ば、ばかぁ! なんであんたが抱きつくのよっ!」


「だって2人が仲よくしてて、私うれしーんだもーん!」


「僕もうれしいよ」


 僕らが笑うと、みちるが顔を赤くしながら「も、もう……」とどこかまんざらでもない様子で言う。


 アリッサは一歩引いたところで、微笑んでいた。


 うん、こうやって、少しずつ仲良くなれていけば良いな……。


『あー!』


 ロシア語で、こうちゃんの悲鳴が聞こえた。


「ど、どうしたのこうちゃん?」


 冷凍庫を前に……こうちゃんが、絶望の表情を浮かべている。


『食後のアイスが……ない!』

「「「「…………」」」」


『やっぱこの時期デザートってアイスだよねー?』


 ロシア語で何かをつぶやいているけど……たぶん、うん、意味はないんだと思う。


「こうちゃんがアイスないから、みんなでコンビニいこうだってさ」


「「「さんせー!」」」


 僕たちは外出の用意をする。


 こうちゃんはきょとん、と首をかしげる。


「ほら、こうちゃん。外いこ?」

『うぇー……暑いから外行きたくなーい』


「ほら、アイスクリーム買ってあげるから」

『なぬっ? もー、仕方ないな……こうちゃん……外に出ちゃうか!』


 こうして、僕らは5人で、近所のコンビニに、アイスを買いに行ったのだが……。


「に、人気声優の駒ヶ根こまがね 由梨恵ゆりえ!? 人気歌手のアリッサ・洗馬!? なんだこの組み合わせは!?」


「「「しまった、変装わすれてた!」」」


『こうちゃん顔出ししてないのでモーマンタイ。かみにーさま、われアイスの実しょもー』


 ……その後慌てて家に帰って、そのコンビニには近寄らないようにしたのだった。

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★新連載です★



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『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[一言] 勇太ぁ……こうちゃんを使いやがったな! と思ったら、微妙に理解してるのうける笑 どゆこと? こうちゃんのために勉強したん?
[良い点]  面白かった。 [気になる点]  そう言えば芽依のあの告白はどうなったのでしょうか? [一言]  かみにーさん、分からない事をいい事に、コウちゃんを使ったな……
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