71話 お祭りへ行こう
夕飯を食べ終えると、妹の詩子が、部活を終えて帰ってきた。
「たっだいまー!」
妹は真っ黒に日焼けしている。
バスケ部の合宿から帰ってきたら肌の色が小麦色になっていたのだ。
「ありゃりゃ? 由梨恵ちゃんたちだっ」
「やっほー! 詩子ちゃん、ひさしぶり~」
詩子は由梨恵にだきついて、きゃっきゃ、と楽しそうにしている。
ほんと、由梨恵って誰とでも仲良くできるよなぁ。
「あれ、おにーちゃんハーレムが全員集合してるじゃん」
「その言い方やめて」
ぐりぐり、と詩子が由梨恵の胸に頬ずりする。
由梨恵の大きな胸がぐにょりぐにょりと潰れてる。え、えろい……。
「こ、こら詩子っ。やめなさいっ」
「えー、いーじゃんべつにぃ、ねー?」
「うん。いいよー。詩子ちゃんかわいいし~♡ おいでおいで~」
由梨恵は末っ子らしく、妹が欲しかったんだってさ。
『ぐぬぬ……妹的ポジションはこうちゃんだったのに……これがNTRってやつか……!』
こうちゃんが嫉妬のまなざしを向けていた。
たぶん由梨恵にかまってほしいのだろう。
「おかえり詩子。お夕飯のおそば、今ゆでますからね~」
母さんが台所から顔を覗かせて言う。
「あ、だいじょーぶ! 今から友達とお祭り行くから!」
「「「お祭り?」」」
詩子にみんなからの注目が集まる。
「近所の神社でお祭りやっててさー。部活の友達といっしょに出店まわろーってことになったの!」
そうか、今は8月下旬。
夏祭りの時期だったね。
「お友達を待たさないよう、早くいってらっしゃいな」
母さんがエプロンから財布を取り出し、詩子にお金を渡す。
出店を回ると言うことで、お小遣いをわたしたのだろう。
「やったー! おかあさんありがとー! だいすき!」
詩子は母さんに抱きつくと、リビングを出て行く。
「お祭りかぁ~……ね! 勇太くん! お祭り行きたーい!」
由梨恵が手を上げて主張する。
ま、まじか? 友達とお祭りなんて……たのしそう!
「あらいいじゃない~♡ みんなでいってきなさいな」
母さんが笑顔で言う。
「うん! いこうよ、みんな!」
アリッサとみちる、そしてこうちゃんを僕は誘う。
みんなで行った方が絶対楽しいもんね。
「しょ、しょうがないわ……」
「……いきます! ぜひともご一緒させてくださいまし!」
みちるの言葉を遮るようにアリッサが前に出て主張する。
僕の手を握って、目をキラキラさせていた。
とてもお祭りに行きたがっているようだ。
「ちょ、ちょっと! アタシもいくわよ!」
「…………」
「なにその露骨に嫌そうな顔は!?」
みちるはアリッサにくってかかる。
「……いえ、邪魔だなと思いまして」
「勇太はみんなで行こうっていってるんだからいいでしょべつについてっても! ね!」
「ま、まあまあ二人とも落ち着いて……」
僕はみちるとアリッサの間に入って仲裁する。
「勇太は、この女が付いてくることに賛成なの?」
ずいっ、とみちるが僕の右側から、
「……ユータさん。この五月蝿い女がいては、お祭りを楽しめないと思います」
ずいずいっ、とアリッサが僕の左から……。
僕を挟み込むように、近づいてくる。
さ、左右でもの凄い大きな胸が……! 圧迫感……というか柔らかさがやばい!
『お、お、おっぱいサンドイッチだぁー! かみにーさまが巨乳に挟まれてるぅ!』
こうちゃんがロシア語で激しく興奮している。
こういうとき絶対に何かふざけてるの知ってるんだからね僕。
「いいなぁ勇太……巨乳美少女に挟まれて取り合いされてるなんて……ぐぬぬ、うらやましいぞぉ!」
父さんがなんか変なこと言ってるしっ……!
「あらあら♡ あなた、大事なゆうちゃんの大事なお友達に……手を出そうっていうんじゃないでしょうね?」
母さんがニコニコしながら言う。
だがどことなく冷気を放っている……!
「も、もちろんだとも……! 冗談だってば冗談……あはは!」
「そう……ならあなたのベッドの下にある女子高生もののエロ本は捨てていいですよね♡」
「いやぁああああああ! やめてぇええええええ!」
……そんな父さん達のやりとりを横目に、ぼくは言う。
「えっと……ふたりとも仲良くね。5人で行こうよ」
「「……まあ、そういうなら」」
よかったふたりともケンカしなくって……。
『こうちゃんお外苦手なので、おうちで待機してちゃだめー?』
こうちゃんが横になった状態でロシア語で何かを言う。
たぶん外に行きたくないのかな?
「こうちゃんお祭りだってお祭りー! 楽しみだねー! 何食べる? 何する? きゃーお姉ちゃんおごっちゃうよー!」
一方で由梨恵はハイテンションでこうちゃんを抱きしめながら言う。
どうやら妹(的な存在)とお祭りに行くことを喜んで居るみたいだ。
『おう……逃げ場なっしんぐ。この無自覚陽キャめ……!』
こうして僕たちはお祭りにいくことになったのだった。
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