196話 彼女の世界
僕らはイマーシブフォートってところへとやってきた。
屋内型のアミューズメント施設だ。
ゲートをくぐると室内のはずなのだが……。
「わ! なにこれ……街の中にいるみたい!」
そこに広がっていたのは、石畳の道路。
左右には建物があって、まるで、どこかの街の中にいるような錯覚を起こす。
「ここ、ほんとに建物なかなの? なんか……普通に外みたいな」
天上には空の画がかかれているので、みちるの言うとおり、建物の中であることを忘れさせる。
「それになんか……この町並み、どっかで見たことあるような……」
「みちる、鋭いね」
みちるなら真っ先に気づくと思っていたよ。
へへ、うれしいな。やっぱり、本当に好きなんだなって……作品のこと。
「まあ歩いて行けばすぐわかると思うよ」
「そう?」
僕たちは並んで歩いてる。
きょろきょろとみちるは周囲を見渡している。
「!? あ、あれって……」
みちるの視線の先には、一人の男性キャストが立っていた。
白い制服に、細身の剣(模造刀だろう)を携えた、青髪の剣士……。
「れ、レイさんじゃない!? デジマスの!」
「うん、そうだね」
デジマス。
僕がみちるのために書いた物語に出てくる、キャラクターだ。
天空無限闘技場編で、主人公のリョウをかばって死ぬ、大人気キャラ。
「な、なんでデジマスのキャラが……? コスプレイヤーさんってやつ?」
「ううん、違うよ。ここのキャストさん」
「キャスト……?」
レイさん(スタッフ)の周りには……。
桃髪の女剣士、モモちゃん。
そして……主人公のリョウ。
「ま、まさか……」
「デジマスのキャラがいて、デジマスの町並みまで再現してる……こ、ここってもしかして!」
「そう。デジマスの世界観を、建物の全体、キャスト全員で、再現してくれてる……アミューズメント施設なんだ」
この施設は、デジマスの世界観を完全に再現をうたいもんくにしてる。
お客さんは、まるでデジマスの世界に入ったような錯覚を起こす……っていうのが、うりなんだってさ。
「す、すごいじゃない……勇太! あんたの作品……こんなすごいアミューズメント施設、作ってもらえるまでになってたなんてっ。わかっちゃいたけど、本当に……勇太ってすごいね!」
僕はうれしかった。でも申し訳なかった。
僕一人の力でここまできたわけじゃないから。
「芽依さんや、アニメスタッフの人たちや、たくさんの関係者の人たちのおかげだよ。それに……」
「それに?」
「みちる、君のおかげだよ」
「あ、あたし……?」
「うん。君のために書いた物語だもん、デジマスって」
「あ……」
みちるがいなかったら、この世界は存在しなかったのだ。
僕の言葉を受けて、みちるがじわ……と涙を流す。
「なんか……ごめん。ちょっと感極まった……」
「そっか」
僕はみちるにハンカチを渡す。
彼女は目元をぬぐって、僕に言う。
「ありがとう、勇太。そう言ってくれて、すごくうれしいよ!」
みちるが喜んでくれたことで、僕はもうとても満足だったね。
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