192話 みちるとアリッサ
《みちる視点》
……勇太が覚醒し、作品を仕上げた、一方その頃。
みちるは勇太の家にて、彼の帰りを待っていた。
「はぁ……勇太……どこ行ってるのよ……」
こうとでかけったきり、彼は帰ってこないのだ。
こうに、彼がどこへ行ったのか聞いても、知らないと言う。
芽依もなんだかこそこそと隠れて何かしてる。
勇太の所在を聞いても、こうと同じ返答を得た。
なんだか、じぶんだけ仲間はずれにされてる気がして、ちょっとへこんだ。
「……みちるさん」
「アリッサ……」
アリッサ・洗馬が、仕事を終えて帰ってきてたらしい。
リビングで落ち込んでいるみちるの隣に、アリッサが座る。
……知らず、みちるは彼女の肩に、頭を乗っける。
アリッサもまた、みちるを拒まなかった。
もはや、二人の間にはわだかまりが完全になくなっている。
信頼し合う友達となっていた。
アリッサは最初、みちるを嫌っていた。
愛する男を、手ひどく振った女なのだ。嫌って当然である。
けれど、一緒に暮らしていくうちに、二人の間にあった隔たりは無くなった。
こうして、普通に、友達として接してる。
アリッサはただ、みちるの頭をなでてくれる。
そして……彼女は歌を歌っていた。
聞いたことのない歌だ。
恋愛の歌。
不器用な女の子が、頑張って、最後には……結ばれるという歌詞。
そこにみちるは自分と重ねて、静かに……涙を流す。
そして、アリッサが歌い終わる。
「どうでした?」
「ん……最高」
「良かった……。あなたとユータさんを、イメージして作ったんです」
「そ……光栄だわ」
お世辞でもなんでもなく、みちるは嬉しくて、そういった。
アリッサもそれが皮肉でもなんでもないとわかっているので、静かに笑っている。
「勇太……どこに居るか知ってる?」
「さぁ……ただ、準備をしてるのだと思いますよ。あなたへの、プロポーズの」
……彼は自分に、プロポーズするといっていた。
そうか、その準備か……。
「そっか……あいつ、あたしのために、頑張ってくれてるのね」
「ええ」
「勇太に聞いたの?」
「まさか。でも……わかるんです。あなたには、わからないのです?」
それは、今までみたいに、馬鹿にして来る感じではなかった。
わかるよね? というニュアンスだった。
わかっていなかったみちるは、少し気まずそうにしながらも……でも、アリッサの言葉を聞いて、確信を得た。
勇太が自分のために、動いてるのだと。
「きっと、素敵なプロポーズを用意してますよ。だから……ソンナ不安そうな顔をしちゃだめです」
「そう……ね。ふふ……そうね」
アリッサに励まされて、みちるは心が軽くなった。
信じて、待とう。
勇太が、自分の前にやってくるのを……。
【★大切なお知らせ】
好評につき、連載版をスタートしました!
『【連載版】おばさん聖女、隣国で継母となる〜偽の聖女と追放された、私の方が本物だと今更気づいて土下座されても遅い。可愛い義理の息子と、イケメン皇帝から溺愛されてるので〜』
広告下↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://book1.adouzi.eu.org/n2184ix/




