183話 父と話す
みちるにプロポーズすることになった。
でも僕プロポーズなんてしたことないし……。
「こんな時だれに頼れば良いんだろうか……?」
『こうちゃんに頼ってもいいんですぜ?』
僕んちのリビングにて。
お膝の上に、こうちゃな乗ってる。ロシア語で何かを言ってるが多分意味は無い。
「僕の周りだと……聡太君とか?」
『一番頼っちゃあかんあいてや。やつは天然ボケキャラや』
こうちゃんが腕でバッテンを作っていた。
多分よろしくない、ってことだろうなぁ。
「芽依さんとか?」
『あかんでしょ……ヒロインズのひとりだよ? 他のヒロインにプロポーズするとか、酷なこといいなさんな』
またしてもバッテン。
「うーん……」
『かみまつパパは?』
ん……?
「今なんて?」
「ゆー、ぱぴー」
「あー……なるほど」
父さんもそういえば、母さんにプロポーズしたって聞いたことある。
そうだなよね。
まず頼るべきは親。
父さんに聞くべきだろう。
「ありがとう、こうちゃん」
『なんの。フォースの導きがあらんことを……』
こうちゃんはこたつの中に引っ込んでいった。
なんだかんだで、良い子なんだよね、こうちゃんって。
僕は立ち上がって、こうちゃんに言う。
「僕ちょっと実家に顔出してくるけど、こうちゃんはどうする?」
『しごとするー』
多分外が寒いので、家の中で引きこもっていたいのだろう。
『ちょ、拙者仕事するってこと、全然信じてもらえてない件について』
僕はこうちゃんのアドバイスをもとに、父さんに話を聞きに行くことにした。
僕んちと実家はほんと、目と鼻の先にある。
寒い中、僕が実家へと帰る。
「ただいまー」
「お、勇太じゃないか。おかえり」
珍しく、父さんが家にいた。
「仕事は?」
「今日はお休みさ」
「ふぅん」
からぶりになるかも、って思っていたんだけど、そうならなくてよかった。
「母さんは?」
「産婦人科」
「産婦人科……? え、なんで?」
すると父さんが目を丸くする。
「え、だから……母さん妊娠してるから」
「……………………………………え?」
え、えええ!?
「に、妊娠!? 母さんが!?」
「うん。あれ? こないだ説明してなかったっけ?」
「そ、そうだっけ……?」
お、覚えてない……いやいや。
こんな重要なこと、忘れるわけないじゃん!
『ほほう、かみまつぱっぱ、やるやん』
「こうちゃん!」
家にいるって行ってたのに、どうやらついてきたようだ。
『ヒロインが一人くらいいないと、話し回らないもんな。おっさんと男子高校生の会話なんて華がないもんね~』
よくわからないけど、仕事したくないみたいなので、ついてきたようだ。
「みさやま先生、こんばんは」
『カミマツ父はSR文庫ってラノベレーベルの社長兼編集長だから、イラストレーターのこうちゃんに敬意を払っているのだと思われる』
しゅた、っとこうちゃんが手を上げる。
「まあ寒むかったろう。こたつに入りなさい二人とも」
「う、うん……」
け、けどまさか……母さんが妊娠していたなんて……。
僕は困惑しながら、こたつに入る。
こうちゃんは僕の膝の上に乗っかる。
『ちっとは、ヒロインらしいむーぶしとかないと、面白マスコットキャラって定着したら嫌だもんね』
むふー、とこうちゃんが鼻息を着く。
「に、妊娠って……いつ?」
『いつ種を蒔いたのですか? とギリギリのセクハラ発言してみたり?』
父さんが頭をかきながら、照れくさそうに言う。
「母さんとホラ、ぼく夏祭りに行ったでしょ?」
『書籍版2巻参照な』
「そのときに……ね」
そ、そうだったんだ……。
でもそうなると、結構妊娠してから時間経ってる……?
8月から……今は1月。
妊娠五ヶ月……。
「そんな兆候見せてない……っていうか、お腹そんなに大きくないような」
「妊娠五ヶ月だからね。外見の変化はそんなに大きくないよ」
「そ、そっか……僕もこんなだけびっくりしてるんだから、詩子もびっくりしてるんじゃない?」
「え? 詩子はとっくに知ってるよ?」
「そうだったの!?」
え、じゃ、じゃあ……僕だけ知らなかったってこと!?
「そんな……どうして……?」
『かみにーさま別居してるやん、夏から』
「え? なに?」
「夏、家出た」
「あ、ああそっか……そういや、そうだったね……」
詩子は最近まで実家暮らしだったもんね。
だから知ってたわけか……。
『詩子もぶいにいヒロインとして活躍してる、有名VTuberの兄、書籍版2巻が3月発売。また、同一世界線の窓際編集ノベル版も、GAノベルから3月発売。みんな、買ってクレメンス』
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