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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第5章

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180話 みちるの、思い


《みちるSide》


 神作家、上松あげまつ勇太の家にて。

 大桑おおくわみちるは、屋上で一人、考え事をしていた。


 勇太が購入したこの家には、なんと、屋上までついているのだ。

 眼下には都内の夜景が広がっている。


 駅前にはたくさんの人たちがいて、うごめいている。

 それを見つめているとふと、カップルが駅に向かって歩いているのを見た。


「あれって……勇太の妹……」


 勇太の妹と、そのカレシが、楽しそうに手をつないで歩いていた。

 ……ほんとうに、二人は幸せそうだ。


 それを見てみちるは、羨ましいという気持ち反面、自分には、まぶしくて見てられなかった。


 振り返ると……。


「って、勇太」

「あ、みちる。ごめんね」


「い、居たなら話しかけてきなさいよ……」

「なんか考え事してるみたいだったから」


 ……ああ、駄目だ。

 みちるは胸をぎゅっと押さえる。


 普段とぼけているが、彼にはこういう優しい心がある。

 みちるの大好きな勇太。……けれど、今は彼の優しさが、痛かった。


「なによ。アタシ、一人にしてって言ったじゃない」


 つい、ぶっきらぼうに答えてしまう。

 でも勇太は笑って隣にやってくる。


「でも、気になってさ。どうしたのかなって」

「…………」


 ああ、だめだ。

 好きだ、という気持ちがあふれてくる。みちるはそれを、抑えよう、抑えようとしてるのに……。


「ね、言ってよ」

「……あんた」


 ……言ってしまう。

 言って、嫌われてしまおう。そうすれば、諦めもつく。


「あんた! 何考えてるの!? アタシと結婚? バカ言わないで! 忘れちゃったの!?」

「忘れた……? なにを……?」


 ぎりっ、とみちるが歯がみしたあと、言う。


「『あんたが神作家なわけないでしょ』、って、アタシがあんたを手ひどく振ったことをよ!!!!!!!!!」


 ……そう。

 みちるの心の中には、ずっと、勇太への罪悪感があった。


 今年の夏、勇太は勇気を出して、みちるに告白してきた。

 でも、みちるは振ってしまった。ただ振っただけでない。


 酷い言葉で勇太を傷つけてしまったのだ。

 ……その事実は、決して消えない。


「あんたをあんなふうに傷つけた女と、結婚? あり得ないでしょ!? アタシは……あんたに酷い思いをさせちゃったんだ。そんな女と……結婚なんて……。そんな女が……幸せに、なっちゃいけないんだよ……!」


 みちるは、勇太の幸せを考えていた。

 自分では、勇太を傷つけた自分では……彼を幸せに出来ない。


 由梨恵やアリッサ、こうや、芽依。

 自分以外全員、勇太に優しくしていた。


 ……自分だけだ。

 勇太を傷つけた、女は。


「勇太を愛する資格なんて……アタシにはないよ……あんただって、忘れてないでしょ?」


 みちるはそう言って、勇太の顔を見る。

 彼は……。


「え?」


 …………明らかに、困惑していた。


「え?」


 勇太の顔に、困惑するみちる。


「え、なにその顔……」

「え、みちるが何言ってるんだろうって……」


「いやだから、あんたが神作家じゃないって振ったじゃんアタシ」

「ああ、あ、うん。あったね」


「あったよね!? それだよそれ!」

「どれ?」


 勇太は本気で困惑してる……。

 ま、まさか……。


「あんた、アタシが傷つけたこと、忘れたの……?」


 イヤあり得ない。

 あんだけ勇太は泣いていたのだ。忘れるわけがないだろう。


「んー……確かにみちるに振られたことあったけどさ」


 でも、と勇太が言う。


「みちるに酷く傷つけられたことなんて、一度も、なかったよ」


 ……どうやら、振ったことを忘れていた、っていうわけではないみたいだ。


「……どういうこと? 振ったじゃん」

「うん、振られた。でもさ、それってそれだけだよ。振られた。でも、別に傷つけられた、ってわけじゃないよ」


 だが……。

 勇太は、振られてないていた。


「それはほら、振られてショックだったってだけだから」

「傷付いてるじゃん!」


「うん、まあ。でもさ……」


 勇太はニコッと笑う。


「別にそれで、みちるのこと、嫌いになったわけじゃないし」

「…………勇太」


 どうやらこの男は、振られたことに多少ショックだったが、しかし、幼馴染みに理不尽に傷つけられた。

 攻撃された……とは、思っていないようだ。


 それに……嫌いになったわけでも、ないという。


「……うそだよ」


 みちるは、勇太を信じられなかった。

 彼は優しいから。


 優しい嘘をついて、みちるが傷付かないようにしてると思った。


「嘘じゃないよ。振られたけど、嫌いになったわけじゃないし。傷つけられてもない」

「うそっ!」


「ほんとだよ。じゃあ……どうして僕は今、ここにいるの?」

「っ! そ、それは……」


「本気で君を嫌いと思ってるなら、今、ここに、こうして一緒にいないでしょ?」


 ……勇太の言葉を聞いて、みちるは、ひとつの確信を得る。

 彼は、本気だ。


 本気で、自分のことを、嫌っていない。

 あのとき、傷つけたことを……傷つけられたと思っていないし、恨んでもない。

 本当に、気にしてない様子。


「…………」


 みちるは安堵のあまり、その場にしゃがみ込んでしまう。

 勇太に嫌われてない。


 その事実が、彼女にここまでの安堵をもたらした。

 そして同時にみちるは気づく。


(アタシは……勇太のこと、こんなに、好きなんだ……)


 失いかけて、みちるは再確認したのだ。

 前にもおなじことがあったのに。

 ほんと……学習しない女だ、とみちるは一人自嘲するのだった。

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★新連載です★



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『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 第1話のみちるとは違うウザさがある いい加減、勇太に嫌われてるって妄想挟むのやめなよ アリッサと一緒にみちるを助けた話ですんでるじゃん
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