179話 アリッサの変化
年明け、僕の家にて。
結婚どうするかを皆で話し合っていた。
みちると僕が結婚し、あとは皆、養子でいいという。
じゃあ子供はどうするか? ってことに対しても、みんなは僕の側にいられればいいとのこと。
そこへ、最近外に出ずっぱりのアリッサが帰ってきたのだった……。
「ってことなのよ」
僕んちのリビングにて。
皆でこたつを囲んでいる。
アリッサはみちるから、これまでの経緯を聞かされていた。
なるほど……と僕の隣に座るアリッサが、うなずく。
「あんたも前に、勇太の赤ちゃん欲しいとか言ってたでしょ?」
みちるのスタンスは、あくまで今の関係は不健全だから解消した方が良い、というもの。
アリッサはと言うと……。
「……そうですね。昔は。でも……」
「でも?」
アリッサが僕を、そして皆を見て微笑む。
「……わたしは、皆さんの意見に賛同しますよ」
「ちょ!? アリッサ!? それって自分が養子でいいってこと?」
「ええ」
……驚いた。
アリッサは結構、僕を一人占めしたい、というスタンスだったはず。
でも、そんな彼女が、皆と意見を合わせてきた(みちる除く)。
「アリッサさんは、なにか心境の変化でもあったのかしら?」
芽依さんの問いかけに、アリッサは微笑む。
「……ええ。今この空気が、とても心地よいので」
……空気?
どういうことだろう……。
アリッサは目を閉じて、昔を思い返すように言う。
「……わたし、ずっとひとりぼっちでした」
「あ、そう言えばそうだったね」
ずっとひとりで、お世話は贄川さん(次郎太さん)がやってたって言っていた。
「……さみしさを紛らわすために、ずっと仕事に打ち込んでいました。そんなわたしの孤独をいやしてくれたのは、ユータさんのデジマス……だけだったのです。昔は」
「アリッサ……」
「でも今は、皆さんがいます。こうして疲れて、家に帰ってきても、家が明るく、温かい。この空気を味わってしまったら……もう、元の孤独には耐えられません」
アリッサは僕らと一緒に、賑やかにしてるほうがいい、ということなのだろう。
「こ、子供は……? いいの?」
「……ええ。子供がいなくても、わたしは幸せを、皆との繋がりを、感じられてるので……♡」
きゅっ、アリッサが僕の手を握ってくる。
彼女が甘えてきてる。僕もまた、その手を握り返した。
にぎにぎ、としてるとアリッサが嬉しそうに笑う。
……そっか。
アリッサはずっと、孤独を感じていたんだ。
でもその孤独は僕らとで会って、解消したらしい。
「ユータさんをつなぎ止めるためだけに、子供を作るのは、生まれてくる子供が可哀想です」
「そ、そう……でも、アタシが勇太と結婚して子供作っても、いいの?」
「はい♡ いっぱいかわいがりますよ♡ ……だって、愛する人たちの、愛の結晶ですもの♡」
「アリッサ……」
昔はあんなにいがみ合っていたのに、今ではすっかり、二人は仲良くしてる。
色々あったもんな。
「な、なによ愛する人って……もう……」
みちるが照れていた。
まんざらでもないんだろう。みちるの中にあった、アリッサへの敵愾心も、最近じゃそんなに見られないもんね。
みちるもまた、アリッサを家族だと認めているし。
「じゃ! これでケッテーでだね!」
由梨恵がまとめるように、声を張り上げる。
「勇太君はみちるんと結婚! で、私たちは養子! OK?」
「「「OKOK!」」」
こうして僕らの方針は決まったのだった。
「じゃ、すぐ結婚式場探さないとだね!」
「「は……?」」
な、何言ってるんだろう由梨恵……?
「だって18から結婚できるでしょ? 今一月だから、4月以降に結婚できるわけだ! そこから式場決めてたら、遅いよ!」
そ、そういうものなの……?
え、ってか、あ、そうか……18で結婚できる。
僕らは今年で高校三年生、結婚できる年齢なわけで……。
『およ? みちるの姉御、どこへいくゆの?』
みちるが立ち上がって、ふらふらとリビングから出て行く。
「ちょっと一人で、考えごとしたいから……」
……ふむ。
考え事? なんだろう……。




