169話 帰宅後ラブコメ
外での打ち合わせを終えたぼくたちは、自宅へと戻ってきた。
『ふぁー! お外寒かったぁ~! こうちゃんの定位置にもどりまーす!』
こうちゃんはリビングへ直行しようとする。
芽依さんがその首根っこを、がっしりとつかむ。
「みさやませーんせ? 僕心とデジマスのイラスト、終わった?」
そう言えば……。
こうちゃん、年末年始、働いてるとこ……見たことがない……!
「仕事さぼってたの……?」
『ちゃ、ちゃうねん! 年の瀬がんばったから! 年末年始くらいやすんでもええやん!』
こうちゃんがロシア語で反論してるっぽい。
「イラスト、クリスマス前! 納品! した!」
芽依さんはにっこり笑顔のまま言う。
「残念だけどゆーくんもう1冊書き終えてるのよね。てゆーか、デジマスと僕心も書き上げてるし」
『なんだとぉ! もう書き上げてるのか!? おのれ化け物か!』
「出版社的には人気作だから、いっぱいだしたいのよね。ということで、みさやませんせ♡ 描いて」
『いやでもこうちゃん疲れて……』
「描け」
『あああん! かみにーさまー! たすけてー! もとはといえばあんたの執筆速度が神のせいなんだぞぉ!』
「えーいっぱい仕事が来てうれしい? わーほんとですか! じゃあ仕事しないとですねー♡」
『のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
こうちゃんが2階へと連行されていった……。
なんだか気の毒なことをしてしまった。
「もうちょっと執筆速度、下げた方がいいかな。こうちゃんのために……」
「あのおちびより、全国で続きを待ってる、読者のために書きなさいよ」
みちるがあきれたようにつぶやく。
「でもさみちる、こうちゃん働かせすぎてるから、申し訳ないかなって。過労で倒れてでもしたら……」
「それはない。あのおちび、誰かが目を離すとすぐにサボるし。働かせすぎるくらいのほうがいいのよ」
そういうもんだろうか……。
「あー、それとみさやませーんせ♡ ゆーくんVTuberものの新作はじめるから、先生に是非イラスト描いて欲しいな~♡」
『鬼か貴様ぁ……!』
「え、ぜひやりたい? ありがと~♡ あ、スケジュール管理は私に任せてね~♡」
『ちくしょお! この編集、イラストレーターが同居してるメリットを最大限あくようしよってぇ!』
まあこうちゃん、芽依さんがくるまでは、いつ仕事してるのってレベルでさぼりまくってたし……。
みちるが言うとおり、今がちょうどいいのかも。
「う~寒いよゆーたくん! 早くこたつにはいろうよ!」
由梨恵がさむさむ、と手をこすり合わせていう。
僕たちはリビングへ行く。
「はー! あったかぁ~」
「そうだねえ~」
「えへへっ、えいやっ♡」
隣に座った由梨恵が、僕の手をつかむ。
「これでもっと温かいでしょ~?」
「うん……そうだねえ」
「だよねー! ゆーたくん大好き!」
由梨恵の手は外から帰ってきたって言うのに、あったかかった。
柔らかくて、すべすべしてて、ずっとさわっていたいくらいだ。
「はい勇太、由梨恵。コーヒー」
「わ……! ありがとみちるん! 大好き~!」
「あんたの好きは安売りしすぎなのよ……」
「えへへ♡ そうかなぁ?」
「別にほめたわけじゃあないっての」
二人は本当に仲よさそうだ。
と、そこへ……。
「……ただいまかえりました」
「アリッサ! お帰り! おつかれでしょ? おこたはいりなよ!」
アリッサ・洗馬。超人気歌手で、僕の恋人。
年末年始にかけて、歌番組に出ずっぱりなのだ。
「……ありがとうございますっ」
アリッサは僕の隣にすとんと座る。
そして、腕にぎゅーっとつかまる。
「……はぁ♡ 疲れがふっとびました♡」
「そっか。良かった!」
「……はいっ♡」
彼女たちが側に居ると、とても安らぐ。
やっぱり……誰かひとりなんて選ぶの、無理だよなぁ……。
『誰かひとりを選んだ、ぶいにいこと、有名VTuberの兄! 書籍2巻が発売決定! 3月17日発売! よやくうけつけちゅー!』
こうちゃんの絶叫が2階から聞こえてきた。
ロシア語だったので、たぶん意味は無かったんだろう。
【★お知らせ】
有名VTuberの兄、書籍2巻発売決定しました!
来年の3/17発売ですー
予約受付してます!
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