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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第5章

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166話 無自覚キューピット


 年明け、青山のカフェテラスにて。僕は、同業者にしてライバル作家、白馬先生に会いに来ていた。

 そこで僕は、先生の婚約者である……御代田みよた 織姫おりひめさんと出会ったのだった。


「改めて……はじめまして! カミマツくん! あたしは御代田みよた 織姫おりひめ! よろしくー!」


 にかっ、と織姫さんは快活に笑うと、僕に手を伸ばしてきた。

 がしっ、と向こうから掴んで、ぶんぶんと振る。


 ぐいっ、とそのまま腕を引き寄せててくる。う、び、美人だ……。 

 シミ一つ無いつややかな白い肌、大きくて勝ち気そうな瞳。顔が近づくとふわりと、大人の女性の匂いがした……。芽依さんタイプの美女だ。


「へえ……六五〇億の男がどんな子かとおもったけど、君……かわいいじゃん♡ タイプだなぁ~」

「はわわ……か、かわ……」


 そんな可愛いだなんて……タイプだなんて……。そんなそんな。

 僕が照れていると、白馬先生が「我がライバルをからかうのはよしたまえ」とたしなめる。


 ぱっ、と織姫さんが顔を離した。

 あ、や、やっぱりからかわれてたんだ。うん、わかってたよ。


「というか、この子どっかで見たことある……あ! さっき一緒にいた坊やじゃん!」

「あ、はい。一緒にいた坊やです」


 織姫さんが、轢かれそうになってる子供を、さっき助けた。その現場に僕も居合わせてたのである。


「おや、我がライバルは姫くんと既に知り合っていたのかい?」

「姫……くん?」

「我がフィアンセのことだよ」


 な、なるほど……織姫さんのことか。

 しかし、姫に王子かぁ……。お似合いのカップルだなぁ。っと、訊かれてたんだった。


「はい。さっき御代田さん……」

「織姫でいいよ、カミマツくん♡」

「あ、はい……織姫さんが子供を助けてて」


 え、と白馬先生が目を丸くした。


「そんな大変なことがあったのかい……だから遅れたんだね。姫。それならそうと、私に言ってくれればいいのに」


 織姫さんはどうやら、待ち合わせに遅れた理由を話してなかったらしい。

 すると彼女がにかっと笑う。


「ごめんね。でも、王子を待たせた事実には変わりないし。それに、アタシがそんなことした、って知ったらあんた、過剰に心配するでしょ?」


 そりゃそうだ、白馬先生はすんごい優しいひとなんだから。

 怪我してないだろうか、とか思うに決まってる。


 なるほど、織姫さんは、白馬先生を心配させたくなかったから、そういう危ないことがあったことを、言わなかったんだなぁ。

 ……なんとなく、僕は織姫さんと白馬先生が似てるな、と思った。相手を思いやって、気を遣うところ。


「しかし……」

「あーもう! やめやめ! この話なし! そういうのはカミマツ君がいないとこで。彼忙しいのに時間割いてきてくれたんでしょ? 他人(よそ)のカップルの痴話げんかに巻き込まない!」

「ち、痴話げんかってわけじゃ……」

「なに? 坊や置いてけぼりくらってるわよ?」

「……いや、そうだね。すまない、我がライバルよ」


 僕は首を振る。知らず、笑顔になっていた。


「大丈夫です。それに……良かったですね。先生! 素敵な女性が、見つかって!」


 先生は本当にいいひとだ。紳士的だし、優しいし。でもそれが長所でもあるけど、短所でもあった。遠慮しがちっていうか。一歩引いてしまうというか。


 でも、織姫さんはそんな先生の腕を引っ張ってくれる。先生を理解して、先生をいさめてくれる。対等に、付き合ってる感じがした。

 

「すごくお似合いだと思います! 結婚おめでとうござます!」

「…………ありがとう、我がライバルよ」


 ふふ、と先生が微笑む。


「ほら、さっさと要件」

「あ、そうだね。カミマツ君、君を呼んだ理由は二つある。一つは、近いうちに我らの結婚式が行われる.是非参加してほしい」


 そんなの、答えは一択だった。


「もちろんです! 喜んで、参加します!」


 先生のお祝いの場、是非参加したい。二人ともイケメンだし、スタイルもいいから、絶対に衣装が似合うだろうし。それに……僕は、先生の失恋話を以前に聞いたことがある。

 ラジオで、語っていた。大学の時に片思いしてたって。


 そんな辛い時期があったことを知ってるから、なおさら、幸せになった先生を、お祝いしたかった。


「ありがとう。そして、二つ目は……君への感謝を伝えたかったのさ」

「感謝? なんのですか?」

「私と姫を、引き合わせてくれたことへの、感謝だよ」


 え……?

 先生と織姫さんを、引き合わせた……?

 どういうことだろう。


「え、僕何かしましたっけ……?」


 そもそも婚約者ができたことも、結婚することも、織姫さんのことも、つい先ほど知ったばっかりなんだけど……。

 引き合わせるもなにも無いと思うけど。


「ほら、カミマツ君。暮れに、ラジオに出演したでしょ?」

「あ。はい。由梨恵と三人でラジオしましたね」

「それ……あたし、偶然聞いてさ」


 織姫さんもあのラジオを聞いた……? つまり、先生の失恋ばなしを聞いたってことか。


「あのラジオ聞いてね、アタシ、王子の状況を聞いたんだ。辛い過去があったんだて。それ聞いたら……彼のこと、ほっとけなくなってね」

「そして同窓会で我らは再会。そこから交際を重ね、今に至る……。つまりだね、我がライバルよ。君がラジオに呼んでくれたおかげで、私たちは結ばれたのさ」


 な、なんだって……! 二人を、僕は無自覚に結びつけていたのか……!

 知らなかった……。


「ありがとう、カミマツ君。あのとき、私に、過去を話すきっかけをくれて」

「あ、いや……」


 深々と、先生が頭を下げる。僕はマジで、そんな大層なことしたって思って無くて、軽い感じで誘っただけだった。

 だからそんな風に、大きな恩義を感じて欲しくなかった。


「僕なにもしてないので。あの番組も、由梨恵の番組だし。僕はただ呼んだだけで……」

「でも、君がいなかったら、君が聞いてくれてなかったら……私は一生、弱い自分をさらけだすことなく、【王子さま】を演じ続けねばならなかった」


 王子様を……演じる、か。


「弱い自分も受け止めてくれる、そんな人と巡り会うことができたのは、あのとき、あの場所に、君が呼んでくれたからだ。カミマツ君……心から、君に感謝するよ。ありがとう……」

「先生……」


 そんな、僕はただ何も考えずに先生を呼んだだけだ。

 幸せになれたのは、先生が今まで頑張ってきたからだ。僕は何もしてないに等しいのに……。


 それでもこの人は、きちんとお礼をしてくれる。

 そういう人なんだ、この先生は。ほんと……かっこいい人だなぁって思う。


「あたしからも、ありがとう、カミマツ君。君は恋のキューピットだよ!」


 織姫さんが笑ってそう言った。二人が幸せになるきっかけを作れたこと、僕は……誇りに思っていいのかも知れない。


「ご結婚、おめでとうございます!」


 僕がそう言うと、二人とも、本当に幸せそうに笑っていた。

 それが何より、うれしかった。


【★あとがき】

なろう連載中の、

有名VTuberの兄、書籍版がいよいよ発売されます!


11/15にGA文庫から発売!


紙も電子も予約始まってます!



よろしくお願いします!


https://www.sbcr.jp/product/4815619374/


挿絵(By みてみん)

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★新連載です★



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『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[一言] 白馬先生の好きになる女の人皆スーパーウーマンっすね…弱いところ見せても許してくれる姉御肌が好きなんやろうなぁ
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