162話 神のみぞ知る
クリスマス、ぼくたちの家には、カノジョ全員が集合してる。
「ありっちゃんが元気になって、よかったー!」
こたつにみんなで入ってる状態。
声優の由梨枝が、歌手のアリッサに抱き着く。
アリッサは風邪をひいて寝込んでいたのだ。
でも今ではすっかり元気になっていた。ああ、本当に治ってよかったぁ。
「……ありがとう。それと、すみませんでした。デート、延期になってしまって」
本来今日はアリッサ、そして由梨枝とクリスマスデートする予定だったんだ。
「いいの! ありっちゃんが寝込んでるなかデートなんてできないもん!」
「……由梨枝さん……うう」
「泣かないで! よしよし!」
由梨枝は一緒にいるだけでその人を元気にさせるから、すごいよなぁ。
「どうしたの、勇太君?」
「いや由梨枝の声って、人を元気にさせるからすごいなって」
「いやいやー! 何言ってるの勇太君! 勇太君の小説のほうがすごいよ!」
え、な、なんで僕の小説の話になるんだろう……?
「だって今日更新された章、読んだらとぉっても元気になったもん! なんか肩こりとか、なおったし!」
「……わたしもです。ゆーたさんの小説を読んだら、風邪がぴたりとやみました」
いや、いやいやいやいや……。
「偶然でしょ」
『はいかみにーさまの神ムーヴはいりまーす』
こうちゃんがみかんをもぎもぎ食べながらロシア語でつぶやく。
そんなこうちゃんのみかんを、芽衣さんが剥きながら言う。
「いやでも、ゆーくんの今回のお話、とっても面白かったわ! あたしも元気になったし、多分ゆーくんの話にはそういう効果があるのよ! 今回の話は特に!」
「芽衣さんまで……そんなオカルトでしょ。お話で人を元気にさせるなんて」
「あら、あながちオカルトじゃあないわよ。感動したお話を読んだら、すっきりしない?」
まあたしかに、感動する話を見て、大泣きした後、気持ちがすっきりはするけども。
「病は気からともいうし。面白いお話を読んで、はつらつとした気分にさせれば、免疫力もアップして、体調が改善する!」
「はあ……」
いやいや、そんなまさか。
「小説書いただけで、風邪を治しちゃうとか、それってもう神じゃんかー、ねーみんな?」
「「「いや、あなたは作家の神だから」」」
「えー……」
まあなにはともあれ、アリッサが元気になってよかったって、思ったのだった。
☆
後日。
『次のニュースです。12月25日を境に、全世界にインフルエンザにり患していた患者が、一斉に治るという奇跡が起きたことが判明しました』
ニュースで、そんなことが報じられていた。
は、はは……さすがに偶然、だよね?
こうちゃんは画面を見ながら、したり顔でつぶやく。
『かみにーさまの小説が全世界のインフルを治した。それが真実かどうかは、神のみぞ知る! どやぁ! ってことで、第4章、完! 5章へ続く!』




