161話 神でした
クリスマス、実家に帰って戻ってきた。
「……ユータさん」
「アリッサ! 熱はどう?」
リビングにパジャマ姿のアリッサが現れる。
僕が立ち上がって彼女のそばまでやってくる。
血色も……うん、良くなってる!
「……おかげさまで、完全復活です♡」
「よかったぁ~……」
ただの風邪だって聞いてはいたけど、心配だったもん。
元気になってくれて良かった。
「……ユータさんのおかげです♡」
「って、アリッサ。どういうこと? 勇太のおかげって」
みちるが水入りコップを持ってきて、アリッサに手渡す。
水分補給しろってことかな。面倒見いいなぁ。
「……ユータさんがデジマス、連続更新してくださったので」
「え!? うそぉお!」
みちるが慌ててスマホを取り出して、なろうのページを確認してる。
「ほんとだ! しかも一章分、10万文字も!? あれ、今日の分の更新ってもうしてなかった?」
「そうだね」
と、そのときである。
「ゆーくん、たっだいまー!」
「芽衣さん! おかえり」
担当編集で、年上カノジョの佐久平 芽衣さんがやってきた。
「もー! ゆーくん! デジマス新章読んだわよー! もー、なんて素晴らしいお話書いてくれるのよう!」
編集の芽衣さんも満足いただけるクオリティになってたようだ。
良かったぁ。
「しっかしゆーくん、いつの間にあんな書きためしてたの? 一章分なんて」
「え? 書きためなんてしてないですよ」
「「「え……?」」」
あれ、みんなどうしたんだろう?
すると仰向けに寝ていたこうちゃんが、僕を見て言う。
『あー、かみにーさまがひさびさに、なろう主人公しとるどー』
ロシア語でなんかいってるけど、多分意味は無い。
『みんな覚えてる? この神、神作家なんやで?』
僕は芽衣さんたちに言う。
「別に書きためなんてしてないよ?」
「え、え? じゃ、じゃああんた、今朝の更新書いた後に、一章分書いたの!? 一日で!?」
「ううん」
「どういうこと!?」
どういうことって……。
「アリッサが風邪引いたのが判明して、実家に行くことになったじゃん。起きたアリッサがひましないように、書いたの。実家行ってる間に」
「「「は……?」」」
あれぇ、これでも理解できないのかな……?
「ゆ、勇太って……たしか、実家行ってたのって、1時間くらいだったよね?」
「そうだね」
「1時間で一章分10万文字書いたの!?」
「ううん」
「どういうことなんだってばよ!!!!!!」
みちるが頭を抱えてしまう。
ええー……っと。
「だから、僕んちから、実家に行くまでの道すがらだよ」
「「「…………」」」
あれぇ?
なんで絶句してるんだろう……?
『説明しよう。かみにーさまは、自分が尋常じゃない執筆力・執筆スピードを持ってるのに、それを普通だと思ってる、いわゆる無自覚最強系主人公(ラブコメ主人公)なのだ!』
「え、え、で、でも実家からうちって10分もかからない距離にあるわよね……?」
え……?
「うん、10分もあれば、ウェブ小説なら、10万文字くらい書けるよね? 書籍一冊分くらい」
「「「かけないよ……!!!!!!! どうやってかいたのそもそも!」」」
「スマホでちょちょいと」
左手にスマホ持って、メモ帳を立ち上げて、片手でフリック入力しただけなんだけど……。
『かみにーさま、まさか前までのエピソード中、ずっと左手でスマホいじって執筆してたの? どんな叙述トリックだよ! 誰も気づかねえよ!』
「いやぁ、フリック入力って予測変換使えるから、キーボードよりも早く打てるねえ」
『ひとりだけファンタジーなんだよなぁ、存在が』
あれれ?
みんな絶句してる……。どうしたんだろう。
『みんなついてきてる? これがかみにーさまよ? この作品のタイトルにも入ってるやろ? 神って。神ならこれくらいできて当然ぞ?』




