158話 揺らぐ気持ち
母さんが作ったクリスマスケーキを、こうちゃんと一緒に取りに来てる。
家には聡太君と詩子がいた。
「ゆーちゃーん、こーちゃーん、ケーキ切ったわよ~」
母さんがキッチンへとやってくる。
詩子は母さんを手伝っていた。
「コーヒー入りましたよ、雪さん」
「あら~♡ ありがと~聡太君~♡ ごめんねやらせちゃって」
「いえいえ。コーヒー入れるのすきなんで、俺」
聡太君ちは喫茶店やってるのだ。
彼はコーヒー入れるのちょーとくいなのである。
僕は人数分のカップとお皿を用意した。
そして……。
『ぬぐ! 今回はビルド要素もあって、無限に時間が吸い取られるな。ティアキン。やるなニンテンドー』
こうちゃんはずっとソファに座って、スイッチでゲームやっていた……。
いつものことだけど、というか、もう慣れた。
「こうちゃんほら、ケーキきったから。向こうで食べようね」
『かみにーさま、こっちもってきて~。たべさせて~。あーんって』
んあ、とこうちゃんが口を大きく開く。
僕はロシア語のわかる聡太君を見た。
彼は苦笑しながらうなずいた。
まあ多分、僕が思ったとおりなんだろう。
食わせろっていうのだろう。
「駄目です。ほら立って」
『令和になったのに、いっこうにAIメイドさんができませんね。現実はなにやってるの? こうちゃん介護AI早く開発して早く』
こうちゃんを猫のように抱き上げて、そのままキッチンへと移動する。
詩子と聡太君はふたり協力してコーヒーを注いでる。
「詩子持っててくれ」
「おっけーそーちゃん」
ふたりは……なんというか、夫婦感? みたいなものがでている。
連携? わかってるかんっていうのかな。
う、ううん……すごい……。
一方で……。
『かみにーさま、こーちゃんケーキにはミルク。ぎゅーぬーがいいー』
「こうちゃん、なんて?」
『ぎゅーぬー』
相変わらず何言ってるのか、わからない……!
……時折、思うことがある。
こうちゃんって……僕のカノジョ、なんだろうかって。
「みさやま先生、牛乳飲みたいそうです」
「あ、そうなんだ。じゃあ僕が……」
「あ、俺が持ってきます。温めた牛乳がいいそうなんで」
「そ、そっか……」
聡太君……すごい。
ロシア語もわかるし、ヒロインの気持ちも理解するし……。
あ、あれ……?
僕よりなんか、こうちゃんのカレシにふさわしくない……?
『わーい、ケーキに温かいぎゅーぬー、うめー。おん? どうしたのかみにーさま?』
こうちゃんが僕をじっと見つめて、こてんと首をかしげる。
「いや……なんでもないよ……」
僕はこうちゃんのカレシでイインだろうか……。
「そーちゃん自分の分のコーヒー入れ忘れてる」
「あ、やべ」
「とおもったから作っときました」
「おー、あざーす」
「ういーっす」
な、なんかあっちは……ちゃんとカレシカノジョしてるし!
僕らは……。
『いかんほこらチャレンジ楽しすぎて本筋がまったくすすまーん。こりゃ原稿がすすまないわー』
……僕らは、なんかこう、付き合ってる感って……ない?
てゆーか、付き合ってる……っていえるのか、これ?




