157話 上松家でのやりとり
僕はこうちゃんと一緒に、実家の上松家にきている。
そこには妹の詩子のカレシ、聡太君もいた。
リビングにて。
「あら、ゆーちゃんおかえり~♡」
「母さん、ただいま」
いつもニコニコ顔の母さんが、僕らのもとへやってくる。
「あらこうちゃんも、こんにちは」
『こ、コニチワ……』
こうちゃんが借りてきた猫のようになる。
僕の後ろに隠れて、ぷるぷる震えていた。
「みさやま先生、なんで震えてんの? あんた人見知りキャラじゃないでしょ?」
聡太君ずばっというなぁ。
『息子よ、知らないのか。この姑さん、クソ恐いんだぞ?』
こうちゃんがまたロシア語で聡太君と会話している。
いいなぁ、僕ももっとしゃべれるようになりたい。
「恐い?」
『般若なんだぞ、このお方。ゆーもこの家に嫁ぐんだったら、覚えておくのだ。この上松家の真のボスが誰かを……』
と、そこへ。
「うおーー! ゆーたぁ……! お帰り~!」
「父さん」
眼鏡をかけたこの人が、僕の父さん。上松 庄司。
今、SRっていうラノベレーベルの編集長をやっている。
『最近上松パパの出番なかったね。ギャルでも窓際でもVTuberでも』
「うひょぉおー! みさやまこうちゃん先生じゃあないですかぁー!」
父さんはいわゆるオタクなので、こういう業界の有名人は好きなのである。
こうちゃんが、ぴゃっ、と僕の後ろに隠れた。
『こうちゃんこういう厄介オタク苦手……』
「先生も上松家に嫁ぐんだから、相手の父親厄介オタクとか言っちゃだめじゃね?」
『こら息子! そんなストレートに言うな!』
父さんが「わはは」と笑って言う。
「厄介オタク上等! ぼくは誇り高きクソオタクだからね! って、うぉおお! ワインの兄貴の中の人まできてるじゃーん! うっひょひょ~~~~~~~~~~~~~! サインぷりーず!」
ああもう、父さん……
そんな風にやってると……。
「あなた♡」
母さんが微笑んだ状態で……。
「腹と股間ガード!」
父さんが内股になって、なおかつ自分のみぞおちを手でガードする。
「わはっはあ! どうだ母さん! これでぼくを倒すことは……」
「黙れ」
ぼぐぅう!
母さんの腹パンが……父さんのみぞおちに炸裂する!
「ま、まさか……ガードの上から……攻撃する……なんて……」
どさ……!
倒れ伏す父さん。
ガードの上から強烈な一撃を加えた母さんが……にっこりと笑う。
「せっかくゆーちゃんもきたことだし、5人で仲良くお茶しましょ~♡」
「「あ、はい……」」
僕、こうちゃん、詩子、聡太君、そして母さんの五人ってことか……。
父さん……家長なのに……
「雪さん相変わらず庄司さんのこと好きなんすね」
『ふぁ!? おま……息子。この惨劇を見てナニを馬鹿なことを!』
こうちゃん驚いてるけど。
あ、聡太君ちゃんとわかってるんだ。
これ、母さんなりの愛情表現……ていうか。
愛情があるからこんなふうに、遠慮無く父さんにツッコミを入れるんだってことに。
「いや、どうでもよかったら、訂正ツッコミなんてしなくないです?」
「そうそう、そのとおりだよ。ね、母さん?」
すると母さんはニコニコしながら、耳を赤くして、キッチンに戻っていった。
『息子すげえな。恐い物知らずかよ』
「え、なんでそうなるの?」
『恐れ知らずの男だなぁ』
すると詩子が笑うと、「お母さん手伝ってくるねー」とキッチンへと向かう。
「あ、俺も手伝うよ」
聡太君がそういうが、詩子が微笑みながら首を振る。
「いいよ、ここはあたしの家なんだし。お客さんはくつろいでて」
「そっか。あんがとな」
一方でこうちゃんは笑うと、
『じゃあこうちゃんはソファでティアキンしてるから、かみにーさま、お茶の用意ができたら呼んでね』といってリビングのソファに座って寝そべる。
こうちゃん……。
『え、ヒロインとしての格が詩子とこうちゃんとで違いすぎる? HAHA! 少なくとも神作家時空では、こうちゃんメインヒロインなんですけど!』




