152話 待ちなふたり
クリスマスイヴ、勇太はみちる、こう、そして芽衣の三人と順々にデートした。
今は、芽衣と渋谷でデートしている。
一方そのころ、勇太の家では、こうとみちるがリビングでのんびりしていた。
『重いよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「うぉ! びっくりした……なによ、おちび……」
みさやまこうはコタツにスポット入り、亀のように、顔を出してる。
『重いよー、Vtuber本編重すぎるんだよぉう』
はぁ~……とこうはため息をつく。
ロシア語なので、みちるは理解ができない。
『あんなに重くするつもりはなかったんだよぅ。気づいたらああなってたんだよぅ……読者さまの望まない展開なのは、わかってるです。ごめんなさい』
「なんなのさっきからあんた……」
くるん、とこうがみちるを見やる。
「かみにーさま、他の女とデートしてますな」
「そうね」
「いいの? この状況?」
「まあ……いいんじゃない。勇太が望んでるんだったら」
みちるは実に普段通りだった。
みかんをむいて、パクパクと食べている。
「ぬぅ、冷静」
「まぁね。怒ってもしょうがないでしょ」
「なにゆえ?」
「勇太がこの状況を是としてる以上、この状況が変わることないしね」
このハーレム状況を作り上げてるのは、勇太が望んでいるからだ。
彼が中心となってまとめている。
「アタシがどうこういっても、かわんないし。それに、アタシも最近は、まあいいかなって思ってるわ。楽しいしね、みんなといるの」
「なるほ」
にゅ、とこうが手をさし伸ばしてくる。
「なに?」
「みかんぷりーず」
「はいはい」
むいたみかんをこうに手渡す。
もむもむ、とこうはみかんを食べる。
そこへ、ぴこんっ、とラインが入る。
みちるがスマホを取って、へえとつぶやく。
「どった?」
「詩子と会ったんだって」
「ほぅ。息子も一緒?」
「息子? ああ、塩尻君ね」
勇太の妹の詩子は、幼馴染の少年と付き合ってる。
みちるは前に会ったことがあるので、そこまで驚きはない。
『Vtuber時空はあんな大変なことになってるけど、はたして神作家時空に上手くジョイントできるのかねぇ』
「あんた時折変なこと唐突に言うわよね」
『イタコですからね、こうちゃん』
「ロシア語だと理解されてないからって、なんかテキトーなこと言ってるんじゃないの?」
『いたこーちゃん』
にゅ、とこうがまた手を伸ばす。
蜜柑をむいて手に乗っける。
「みちるねーさん、まじねーさん」
「なにそれ?」
「ハーレムまとめる姐さん的な?」
「はいはい」
ちょっと前は、勇太がほかの女とデートしてるのが、すごく嫌だった。
今も嫌なことには変わりないのだが、人とはなれるものなのか、そこまで気持ちが荒ぶることはない。
『Vtuberも幸せにするんで、なにとぞよろしくお願いします』
「だから、どこの誰に向けてしゃべってんのよあんた……」
『いたこーちゃんでした』




