151話 待ち合わせで、妹の彼氏とばったり
僕、上松勇太には5人のカノジョがいる。
そのうちの2人、みちるとこうちゃんとは、クリスマスデートした。
そして今日は、3人目。
僕の担当編集、佐久平 芽依さんと一緒に、渋谷でデートするのだ。
「うう~……さむさむ……」
12月24日。クリスマスイヴ。
ということで、渋谷ハチ公前は、とんでもない人だかりができていた。
なんかもう……!
みんな、キラッキラしてる!
顔とか、服装とか!
「しあわせそうだなー」
そりゃそうか。
クリスマスだもんね。
みんなクリスマスのデートを楽しむわけだ。
ふぅ……。
「「あ」」
そのとき、見知った人と、顔を合わせた。
「聡太君?」
「どうもっす」
ハチ公前に居たのは、塩尻聡太君。
僕の妹、詩子の幼なじみ。
そして……。
「聡太君もデート? 詩子と?」
そう……。
なんとびっくり。
この塩尻聡太君ってひとは、詩子の彼氏くんでもあるのだ!
なんか秋ぐらいに付き合ったらしい。
「そっす。これからデートっす」
「はぁ~……なるほど。だから……そんな格好なんだね」
聡太君はマスクに帽子をかぶっていた。
彼はとても人気者だから、姿を隠してるのだ。
「いや、単に寒いだけっすけど」
ま、間違えたっ!
は、はずかしい……。
「へー、渋谷でデートなんて、おしゃれだね~聡太君」
「いやあんたもっすよね……? クリスマスデートに渋谷っすか」
「ううん。僕は川崎、おうち、そして渋谷デート」
「お、おう……」
五人と付き合ってることも、聡太君は知ってるのだ。
若干引かれてしまった。
あれれ? なんでだろ。
「俺はやっぱり一人で手一杯っすわ」
「そっかー。まあ人それぞれだもんねー」
「なんすかその、俺がマイノリティみたいなノリ……」
「そっかそっか。恋愛の形は人それぞれだからねー」
「だから……はぁ……ま、いいや。勇太さんはこれから誰とデート?」
「芽依さん」
と言っても伝わらないか。
「ラノベの担当作家さん」
「お、おお……? な、なんか……勇太さんって、4人と付き合ってたんじゃ、なかったっけ?」
「あ、五人に増えたんだー」
あれ、言ってなかったけ?
「お、おう……また一人増えたんすか……」
「うん!」
「し、仕事相手の人と付き合うのって、だ、大丈夫なんすか?」
「全然大丈夫」
別に芽衣さんと付き合ってるからって、仕事に支障でたことないし。
てゆーか、芽衣さん仕事とプライベート分けるタイプだし。
「そーなんすか……俺は……無理っすわ。仕事相手との結婚は」
「あ、だから詩子なんだ?」
「い、いやいや! 詩子と結婚してないっすから!」
「え、でもいずれするんでしょー?」
そ、それは……と照れてる聡太君。
と、そのときである。
「そーちゃん」
つんつん、と聡太君の背中を、詩子がつついていた。
ぷくー、とお餅みたいにほっぺたを膨らませてる。
「結婚、しないの?」
「あ、いや……す、する……」
「しないの? ハッキリ言って」
「します」
「よろしい」
うふふ、詩子は、好きな子の前だと、あんな風にデレるのかぁ。
そっかー。
「って!? ええ!? お兄ちゃん!」
おっと詩子が、さっきと違う顔を見せてきた。
やはり恋人専用の顔であったか。メスの顔ってやつかな?
「やぁ」
「な、なんで……?」
「これから芽衣さんとデート」
「芽衣さん!? お兄ちゃん、芽衣さんとも付き合ってたの!?」
あれ?
言ってなかったっけ……?
芽衣さんと上松家の人たち(父さんや詩子)は、面識あるから知ってるし……。
もしかしてまだ打ち明けてないのかな、芽衣さん。
あとできいとこー。
「え、ええ……お、お兄ちゃんまたハーレム増やしたの?」
「うん。駄目?」
「だ、駄目じゃ無いけど……」
うーん、引かれてしまった。
そんなに変かなー?
「まあ愛の形は人それぞれだからね」
「「あんたが自分で言うんかい」」
聡太君と詩子に、ツッコまれてしまった。
息ぴったりだね、ふふふ、義兄さんと呼ばれる日も近いかな、なーんて思ったりした。




