150話 帰宅、次は芽依さんとデート
クリスマスイヴ、僕はカノジョたちと順々にデートしてる。
みちる、こうちゃんとデートして、家にいったん帰ってきた。
『高校生WEB作家のモテ生活、コミックス第2巻、好評発売中!』
こうちゃんが家に帰るなり、リビングのこたつに入って、ロシア語でそう叫んだ。
多分意味はない。
「勇太おかえり」
「うん、ただいま」
ニットにスカート+タイツといういでたちのみちるが、僕らに近づいてきた。
両手にはまぐカップが握られており、暖かそうな湯気が出ている。
「はいこれ、あったかいコーヒー。と、ココア」
「ありがと!」
みちるは気が利くなぁ。
こうちゃんはココアを手に取って、こくこくと飲む。
ほぅ……と安どの息をついていう。
『コミックス2巻、発売にウェブ更新できなくてすまないんやで』
たぶんおいしい的なこと……は言ってないだろうな。
また意味の分からないこと言ってそう。
「おちびとのデート、どこいってたの?」
「秋葉原。ひたすら買い物してた」
僕が持っていた紙袋を置く。
同人ショップをめぐっていたのだ。
「あんたね……クリスマスイヴになにエロ本あさってんのよ?」
『え、エロちゃうわ! 薄い本だわ!』
しゃー、とこうちゃんが威嚇する。
子猫みたいで可愛い。
「湿っぽい雰囲気ゼロだったでしょ?」
「まあ、妹と買い物行ってる感じだったね」
デートらしいことしてないや。
「妹っていえば、あんたの妹は? デート?」
「まさか。ウィンターカップ」
「なにそれ?」
「高校バスケの試合。まあ、インターハイの冬版だってさ」
こんな寒い時期にやらなくてもいいのにね。
こうちゃんがこたつでぬくぬくしながら言う。
『詩子と兄貴の行く末はここではネタバレしないで? 作中だとここVtuberの二か月先の世界やけどな』
「こうちゃんほら、部屋着に着替えないと。せっかくきれいな服着てるのに」
『はたして息子は詩子と付き合ってしまうのか。お泊り会で超時空要塞セクロスしてしまうのか。ま、こうちゃんは知ってるけどな!』
こうちゃんがこたつから出ようとしない。
多分外が寒いからだろう。
「着替えなさい」
「のー」
「ほら、出てきなさい」
「やー」
ずるずるとこうちゃんがこたつの中に入ってしまった。
僕とみちるはうなずいて、協力してこたつを持ち上げる。
「ぬわああああ! 殺す気かー!?」
おおげさな……。
「ほらおちび、でてきなさい」
みちるが足で、こうちゃんを転がす。
そして猫のように持ち上げる。
「着替え手伝ってあげるわ」
「百合展開?」
「このまま窓の外に放り出そうかしら……」
さて、こうちゃんを家まで送り届けたので、僕はまた出かける。
「じゃ、いくね」
「芽依さんとは外で待ち合わせなんだっけ?」
「うん。渋谷でデート」
芽依さんは今、美容院にいってるらしい。
髪の毛を整えてるんだとか。
が、ガチのやつだ……。
「気合入ってわね、どこかのおちびと違って」
『こうちゃんも気合入ってたよ?』
僕は二人に、出発のあいさつをする。
「じゃ、いってきます」
「うん、いってらっしゃい」
『避妊しないと某ギャルの人みたいになるよ? 気を付けてね』
僕は手を振って家を後にするのだった。




