149話 こうちゃんデート回
僕、上松勇太は、イラストレーターのこうちゃんと、クリスマスデートをすることになったのだけど……。
「みさやま先生?」
「なんぞ?」
僕らがいるのは、こうちゃんの部屋だ。
ベッドの上に寝そべって漫画本を開いてる。
「これは?」
「デート?」
なぜ疑問形なんだろうか……。
「え、デート? ここ、こうちゃんのお部屋だよね?」
「おうちデートって、やつ」
なるほど……。
外に出るのがデートってわけじゃない。
「けどせっかくおめかししたんだから外いかない?」
「こうちゃん、おつかれもーど」
そっか。
今日まで仕事で疲れてるもんね。
「わかった。じゃあおうちデートにしようか」
『ふ、計画通り。かみにーさま優しいからこういったら絶対におうちデート受け入れてくれると思ったぜ。ほんとは外が寒いから出たくないだけさ』
そのときだった。
「みーさーやーまーせんせー?」
ぎぎい、と扉が開くと……。
「「ひぃ! お、鬼!」」
「誰が鬼ですか誰が」
芽依さんだった。
顔にパックしてるようだ。
「何やってるんですか二人とも。いい若いもんが家の中、せっかくのクリスマスだっていうのに」
「いやでも、こうちゃんがおうちデートしたいって」
「そんなのどーせ外が寒いから出たくないってだけよきっと」
『ちぃ!』
今こうちゃん舌打ちしなかった……?
え、そうなの?
「みさやま先生、家にいたいならいいですよ。その代わり仕事してもらおうかな♡」
「ゆ、ゆく! お外! ゆくー!」
こうちゃんが慌てて立ち上がると、僕の手を取って部屋から出てく。
寒かったの嫌だっただけかい……まったく。
扉を開けると、北風がふいた。
こうちゃんがぶるぶると震える。
僕はマフラーをとって、こうちゃんの首にかけてあげた。
「なん?」
「寒そうだったから」
「むぅ……」
こうちゃんがピン、と何か気づいたような表情になる。
僕にマフラーの片方を渡してきた。
「え、なに?」
「シェア」
「ああ……」
なんとなく言いたいことはわかった。
つまり、1本のマフラーをシェアしようと。
な、なんか恥ずかしい。
「みさやまこうのマフラーが、巻けないというのかね?」
「そんな酒飲めないのかねみたいなノリで……まあいいけど」
僕はこうちゃんと一緒に、マフラーを巻く。
そして一緒に歩きだす。
「ぬふん」
「どうしたの?」
あったかいね、みたいな感じのこと言うんだろうか。
『みさやまこうも、がんばればヒロインできるんやで?』
こうちゃんが明後日の方向に向かって、ロシア語で何かつぶやいていた。
何を言ったのかわからないけど、まあ、いつも通り意味はないんだろう。
ちょっとドキドキしてたけど、なんかいつものこうちゃん過ぎて、どきどきが一瞬で治ったなぁ。
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