147話 みちるとクリスマスデート
そして迎えた12月24日当日のお昼。
僕……上松勇太は、幼なじみの大桑みちると一緒に、川崎にあるショッピングモールへとやってきていた。
「ここでいいの?」
「うん。あったかいし、近いし。でしょ?」
僕んちからJRで、乗り換え無しで10分くらいで着く。
ショッピングモール内は暖房が効いていてとてもあったかい……けど。
「渋谷とかそういうとこじゃなくていいの? イルミネーションみるとかさ」
「いーの。夜は芽衣さんとそこにいくんでしょ?」
「まあ……」
今日の昼はみちる、夜は芽衣さんというデートスケジュール。
アリッサと由梨恵は明日だ。
……ちなみに、こうちゃんはみちると芽衣さんの間の、時間が余っていたら少しだけ。
理由?
『締め切りをたくさん抱えてるからさ! っかー! 人気者はつれーわーw』だそうです。
じゃあなんで【えぺ】(※シューティングゲーム)やってたんでしょうね……
「勇太……その、んっ!」
僕らは川崎駅改札を出る。
みちるが手を差し出してきた。
顔を赤くしながら、そっぽ向いてる。みちるは照れ屋だから、口で言わないんだよね。
照れ屋なとこが可愛いって、僕は思う。
「はい」
僕はみちると手をつなぐ。彼女はふにゃり、と柔らかく微笑んだ。
僕らは並んで歩き出す。
時期が時期だからか、昼間だっていうのに、結構人が居た。
歩きにくい……。
「夢みたい」
「ん? どういうこと?」
真横を歩いてるみちるが、ふにゃふにゃって笑いながら言う。
「勇太とクリスマスイブに、一緒にデートできるのが」
「ああ……そうだね」
去年まででは考えられないなぁ。
「まさか僕らが付き合うとはね」
「まさか勇太が女の子複数人と付き合うとはね」
「う……すみません」
「ほんとよ、まったくもうっ」
でもセリフほどみちるは怒ってる感じは無かった。
「ま……複数人いるってのは、最初は戸惑ったけど……慣れたらなんか当たり前になってきたわね」
微笑むみちるを見て僕は安堵の息をつく。
「なに?」
「いや、たくさんの女の子と付き合うことに、みちる前はすっごく反対してたでしょ? でも今は認めてくれてうれしいなって」
「……別に、今も認めてませんけどね!」
「え、ええー!?」
そんな……。
「だって……当たり前になってきたって……」
「慣れただけで、アタシ許したわけじゃないもん」
「で、でも……芽衣さんの加入も許してくれたし」
「多数決されたら負けてたでしょ。アタシは、今でも反対だから。一人に複数人の女の子って、どこのラノベよ」
いやまったくおっしゃるとおりで……。
「怒ってる?」
「まあね」
「……嫌いになった?」
するとみちるは耳まで真っ赤にすると……。
「……ばか。嫌いになるわけないでしょ。それくらいで、勇太のこと」
「みちる……」
みちるはフンッ、とそっぽを向いて言う。
「アタシ、勇太の駄目なとことか、情けないとことか、優柔不断なとことか。全部好きだから」
「みちる……」
僕の弱いところも含めて好きってこと……だよね。
「ありがとう……!」
僕は思わずみちるを抱きしめる。
ぼっ、とみちるが顔を真っ赤にした。
「ば、ば、ばか! 往来でなんてはずかしいことしてるのよ!」
「あ、いや……ごめん……」
僕が彼女を離そうとすると、みちるが自分からハグしてきた。
「あ、あれ? みちる?」
「……離れろなんて、言ってないでしょ。ほんと、ばかなんだから。……勇太のばーか」
ばかっていうわりに、その声音は優しかった。
結構目立っていた。周りからめっちゃ見られてるし。
でも……今日は恋人達の日ってことで、すごい生暖かい目を向けられた後、みんな僕らを、はやしたてるでもなくスルーしてくれた。
「み、みちる……そろそろ立ち止まってたら邪魔になるから。いこっか」
「うん……そうね。へへっ♡」




