143話 みんなでカレー
僕、上松勇太に、新しいカノジョができた。編集の芽衣さんだ。
芽衣さんがうちに引っ越すことになった。贄川さん兄弟が引っ越しを手伝ってくれたおかげで、スムーズに終了。
最後はみんなで、幼なじみのみちるの作ってくれたご飯を、食べることにした。
「おいし~~~~~~~~~!」
僕んちのリビングにて。
芽衣さんが笑顔で、みちるの作ったカレーを頬張っている。
「ほんっとおいしい! みちるちゃん天才!」
芽衣さん大絶賛。僕もうれしくなっちゃうな。みちるのカレーおいしいもんね。
正面に座ってる、ツインテ美少女が、僕の幼なじみで恋人の大桑みちる。
「ど、どーも」
「ほんとみちるちゃん良いお嫁さんになるわ~」
「ふ、ふへへ……そうかしらぁ」
みちるは頬を赤らめてそっぽ向く。
カノジョが増えることに結構反対してたけど、うまくやってけそう。
「いやぁ、マジでうまい、ねえ兄ちゃん!」
ターミネーター弟、三郎さんが笑顔で、同じくターミネーター兄に問いかける。
兄の次郎太と三郎さんは、見た目が本当にそっくりだ。
けど三郎さんはなんかいっつも口を開いてて、次郎太さんはじっと寡黙なムーブをする。
だから雰囲気でわかるんだよね。
「とてもおいしいでございやす。チョコレートを少し使っておられますかい?」
「! わかるのあんた?」
「ええ。見事なお味です。長年の努力を感じさせまさぁ」
「わ、わかるじゃないのぉあんたぁ~!」
贄川兄とみちるは、料理繋がりで仲良くなっているみたい。
一方で……。
『ふふふ、ツイッターのフォロワー数ぅ~♡ 爆増~♡』
「こうちゃん、食べながらSNSするのやめて」
こうちゃんはタブレットPCを膝の上に乗っけて、カレーを食べている。
このだらしない顔をしているとき、いつもSNSやってる。
「こうちゃん」
『息子がVTuberとして活躍することで、ままのフォロワー数は伸びに伸びていくんだぜ。いいぞ息子! ドンドン事故れ!』
「はいぼっしゅー」
僕はこうちゃんからタブレットを回収する。
「あーん、かえして~」
「ご飯中によそ見禁止。作った人に失礼でしょ」
「しぬ~」
「死にません」
「SNSがないと死ぬ~」
「死にません」
ぶんぶん、とこうちゃんが首を強く振って言う。
『こうちゃんSNSがなくなったら死にます。良いねが餌だから。え、承認欲求モンスター? HAHA★ だからなんだ! すべての創作者は、イイネのために創作してるって言っても、過言ではない……!』
こうちゃんがロシア語でつぶやいてる。
多分意味は無い。
『VTuber毎日更新できてるのも、pv数とか感想とか、あとポイントとかもらえるからだもんね』
「こうちゃんほら、ご飯食べて。あとでお腹すいてポテチーって言っても、買ってあげないからね」
えー、とこうちゃんが嫌そうな顔になり、しぶしぶとカレーを食べる。
芽衣さんはそんな僕らの様子を見て、楽しそうに笑う。
「にぎやかでいいわね。ゆーくん♡」
芽衣さん、この雰囲気に、疎外感を覚えるんじゃないかって、ちょっと思ってたんだ。
でもなじんでるし、うん、大丈夫そう。良かった。




