142話 到着と荷物整理
僕に新しい恋人ができた。編集の芽衣さんだ。
芽衣さんとは僕んちで一緒に住むことになった。
彼女の家の引っ越し作業を、贄川次郎太さんに手伝ってもらった。
そして荷物を積んで、次郎太さん、三郎さん、僕、芽衣さん、そしてこうちゃんは一同、僕の家へ。
芽衣さんの運転する軽自動車から降りる僕。
「ついた! ここがゆーくんとあたしの愛の巣ね♡ なーんてね♡」
芽衣さんが蠱惑的な笑みを浮かべて、僕の腕にがっしりと抱きついてくるっ。
今は12月、ダウンジャケット着てて、胸の感触はほとんど無い。
でも……芽衣さんこの寒いのに、タイトなミニのスカートをはいてる。
生足で、僕の足に絡みついてきて……え、えろい……。そそ、それに愛の巣だなんて……。
一方で、こうちゃんが軽から降りてくる。
こうちゃんは……ぬいぐるみみたいなパジャマを着ていた。
「あらかわいらしいパジャマ」
「こうちゃん冬場はいつも、この着る毛布なんです」
「可愛いけど、それじゃ男の子をドキドキさせられないわよ?」
なぬ! とこうちゃんがびっくりした表情で、芽衣さんを見やる。
『ば、馬鹿な! こうちゃんのこのプリチーな姿に、かみにーさまメロメロちゃうんかい!? なあ!』
こうちゃんが切羽詰まった表情で、僕に詰め寄ってくる。
背が小さいし、この着る毛布、猫のデザインをあしらってて可愛いし、妹みたいでかわいいんだよね。
『ああやばい! これこうちゃんのことマスコットキャラだと思われてる! くそっ! VTuberだと、お色気ままキャラなのにっ!』
こうちゃんがロシア語で何か言ってるけど、まあ意味ないだろう。
『かみにーさま、最近こうちゃんの扱いざつくない? ねえ? こうちゃんヒロインよ? 一向にラブがコメらないんだけど、ラブコメ主人公の仕事ちゃんとしないとだめっしょ?』
ちょうどそのタイミングで、次郎太さんの運転するトラックが到着した。
「おつー!」
助手席に座っていた三郎さんも降りてくる。
ターミネーターがふたりそろって立ってると、威圧感はんぱない。
「じゃ、ちゃちゃっと下ろしちゃおうぜ★ 兄ちゃん」
「ええ。三郎、力おかりしやすぜ」
「なっはっは! この使えない方のターミネーターにお任せあれ!」
自覚あるんだ……。
「よろしくお願いします!」「よろしくふたりとも!」
僕と芽衣さんさんが頭を下げる。
こうちゃんは……。
『おー、さむさむ。こたつでぬくりますかな~』
とそそくさと部屋の中に入っていった。
ほんと、なんで着いてきたんだろうか彼女は……?
「じゃ、やりますか」
「「「おー!」」」
と言っても、荷下ろしは贄川兄弟が、凄い早さでやってくれた。
三郎さん、自分を使えないなんて言うけど、すごい運ぶの早かった。
あと大きな荷物も一人で軽々と運んでて、ああ、その筋肉は伊達じゃないんだなって思った。
もちろん次郎太さんもテキパキと動いて、下ろした荷物を適切な場所に設置していく。
あっという間に、荷下ろし&荷ほどきが完了。
「ありがとうございました! お昼ご飯食べてってください。みちるが作ってくれてるので」
「わーい! 美少女の手作り料理FU~♪」
「ご相伴にあがりやす」
ということで、贄川兄弟もお昼を食べていくことになった。
リビングへ行くと、こうちゃんが仰向けにねながら、こたつに入っていた。
周辺にはポテチの食いかけ、飲みかけのコーラ、くいかけポッキー、そしてタブレット端末。
ぼけーっとしながらスマホをいじっていた彼女と僕とがふと、目が合う。
『かみにーさま、もうおわったの?』
多分終わったのか聞いてきたのだろう。
「うん、終わったよ。ほらこうちゃん、散らかしちゃだめでしょ。みちるに怒られちゃうよ」
僕は散らばってるものを拾って集める。
その間こうちゃんはにやりと笑う。
『真のモテ女ともなれば、男の方から勝手にあれこれ面倒を見てくれる。っかー! こうちゃんの女子力ぱないわぁ~。どんな男もメロメロにしてしまう、魔性の女であって、自分のことながら恐ろしいわー!』
こうちゃんはほんと、手のかかる妹みたいで、ほっとけないんだよなぁ。




