134話 編集に告られた
僕……上松勇太は高校2年生。
クリスマス前の冬、僕は担当編集の、芽依さんに告られたのだった!
「どど、どうしよう……」
告られてから翌日。
芽依さんは家に帰っていった。僕もまた、みんなと暮らしてる家へと向かう……。
「……好き、かぁ」
芽依さんに告られた。返事は……ちょっと待って欲しいって言った。
いや、僕好きだよ、芽依さんのこと。大人の女性で、僕をいつも支えてくれる、優しい人で。
きれいだし、いいなぁ……って思うとき、結構あったし。
「でも僕もう……四人と付き合ってるし……」
幼なじみのみちる、声優の由梨恵、歌手のアリッサ、そして絵師のこうちゃん。
ここに加えて、さらにもう一人なんて……みんなが許してくれるかな?
ううーん……
由梨恵は、【全員と付き合っちゃえば良いよ!】って言ってくれたけど、前に同居するときに。
それはみちるたちを、よく知ってるからであって、いきなり知らない大人の女性がメンバーに加わりますーって言われても、正直困惑するだろうし……。
まいったなぁ。
「あ、勇太君! やっほーい!」
家に向かって帰っていると、ちょうど車が家の前に泊まっていた。
黒髪の美少女、駒ヶ根由梨恵が笑顔で近づいてくる。
まだ気持ちの整理がついていない、そんな状況で彼女と会った。それに昨日は家に帰らなかったこともあって、若干の気まずさがあった。
「どうしたの?」
「あ、いや……」
「あー! 隠し事してるねっ。わかっちゃうんだよ、私には!」
秒でバレた!
そんなに顔に出やすいかな……。
「教えて? なにかに悩んでるんだったら」
「う、うん……まあ、とりあえず家の中入ろうよ。寒いし」
「うん!」
由梨恵がナチュラルに僕の腕をぎゅっとつかんで、えへへと笑う。
ボディタッチが激しいんだよね、由梨恵って。そこがいいっていうか……。
僕らは部屋の中に入る。
こうちゃんは引きこもってるだろうけど、それ以外のメンツは外出中らしい。
僕は詩子からもらった、喫茶店のコーヒー豆を使って、コーヒーを淹れる。
由梨恵と二人でソファに座って、告られたことを伝えた。
「いいじゃん!」
「ええー……秒で肯定……いいの?」
「もちろん! たくさんのほうが賑やかで楽しいし!」
他に女の子がメンバー入りしても、しかもその人が知り合いじゃなくても、由梨恵はOKらしい。
奔放すぎない……?
いや、そこが由梨恵の良いとこなんだよな。
「でも……」
「肝心なのは勇太君の思いだよ。どうしたいの? 好きって言われて、どう思った?」
「そりゃ……」
芽依さんに好きって言われて、うれしかった。
どうしたいかって言われたら、そんなの、付き合いたい。みちるみたいに。
「でも……ちょっと五人は、体面が……」
「そんなの気にする必要ないよ! 勇太君もう五人を養えるくらい経済力あるじゃん!」
「そ、そう……なの?」
「そうだよ! それに、私たちもそれぞれ働いてるし!」
経済的にはまあ許されても、社会が……。
「社会なんて、愛の前には無意味だよ! 愛し合ってるなら、結ばれないと!」
由梨恵のイケイケゴーゴーなオーラに……僕は……。
「そ、そうだよね!」
またも、流されてしまう。
何か前も、同居するとき、この下りあったな!
「ありがとう! 僕、由梨恵の言うとおりにする!」
「うん! それがいいよ!」
と、そのときだ。
「ただいまー」
「あ! みちるん! おかえり!」
買い物から帰ってきたみちるが、さむさむ……と肩をふるわせながら入ってくる。
善は急げだ!
「みちる!」
「あ、勇太。あんた昨日……」
「そんなことより!」
がしっ、と僕がみちるの肩をつかむ。
みちるはなぜか顔を絡めて、ん……と唇を突き出してきた。
「昨日、芽依さんに告られたんだ!」
「……………………は?」
「で、OKしようと思う!」
「ちょ……!?」
「五人まとめて幸せにします!」
「ちょっとまてやぁああああああああああああああああああああ!」
みちるが頭痛をこらえるような表情で、そう叫ぶのだった。




