133話 告られる神作家
ぼ、僕……上松勇太。
17歳。ただの陰キャ高校生……だ。
けれど今日、ラノベの担当編集、佐久平 芽依さんから、告られた。
好きって……好きって、え、えええええええええええええええええ!?
「ごめんね、先生。驚かせちゃって……」
芽依さんはもじもじしながら、ぺこりと頭を下げてくる。
「あ、いや……別に謝らなくっても……」
え、で、でも……え、そんな……。
いつの間に、芽依さんが僕のこと好きになってたんだろ……?
また僕何かやっちゃいましたか?
「先生……あんまりにも意外って顔ね」
「いや、そ、それは……そうでしょ。僕何もしてないのに」
きょとんとした芽依さんは、やがて苦笑しながら言う。
「神はいちいち、人を救ったって感じすらしないのかな」
「救った……?」
「うん。編集を続けるかどうかで、迷ってるときに、先生の言葉があたしを導いてくれたから」
芽依さんは長野にかえらず、東京に残ると選択した。
そこに、僕が関わったという。
「前から……先生のこと、いいなって思ってたんだ。でもほら……今付き合うと、いかにも金とか名声めあて、みたいに思われちゃうかなって」
「そ、そんな……誰がそんなこと思うんですか?」
「周りとか、なにより……先生から、かな」
芽依さんそんなこと気にしてたんだ……。
でも、そんなのおかしい。
「芽依さんはそんな人じゃないって僕知ってますよ。優しいし、仕事できるし、いつだって僕を励ましてくれる……芽依さん?」
彼女は顔を両手で押さえて、ベッドの上でゴロゴロしていた。
え、なにこれ……?
「だめっ! だめよせんせい! そんな……そんなこと言われちゃ、まともに顔見れない!」
「え、な、なんで……?」
「照れてるからに決まってるでしょっ! ああもうどうしよう! まともに仕事できなくなっちゃうわー!」
芽依さんはしばし布団の上でもだえている。
たしかに、惚れた相手と仕事って難しいかも……。
「告白は……取り消します?」
「……ううん、それはしない」
芽依さんは身体を起こして、僕をまっすぐに見て言う。
「先生……ううん。上松勇太君」
「あ、はい……」
芽依さんは頬を赤らめながらも、真剣なまなざしを僕に向けて言う。
「あなたが、好きよ。あたしと……付き合って欲しいな」




