122話 新人賞
僕と白馬先生は、父さんの作ったラノベレーベル、SR文庫の編集部へとやってきた。
「やー! 二人とも寒い中ご足労ありがとうございます!」
会議室で待ってると、僕の担当編集、佐久平芽衣さんがやってくる。
コロコロ……と台車みたいなもんを持ってきた。段ボールが結構積まれてる。
「なんですかこれ?」
「新人賞の原稿ですよ」
「「新人賞?」」
芽衣さんから僕らは説明を受ける。
「我がレーベルもカミマツ先生たちをはじめとした、作家先生たちの尽力により少しずつ知名度が上がってきてます。そこで! 新人賞を開いたんです!」
新人賞……かあ。僕、ウェブからの拾い上げだから、やったことないんだよね。
白馬先生はこないだ、投稿作品が新人賞に選ばれたって言ってたね。
「で、そうしたらめっちゃ集まってきて! 想定よりも多い数がきてもうてんてこまいなんですよ」
「どれくらい来たのかね?」
「5000作!」
それって多いのかな……。
僕その辺よくわからないんだよね。
芽衣さんが僕に説明してくれる。。
「ウェブ小説という、小説を発信する場が増えてきた昨今、新人賞への投稿作品って少なくなってきてるんですよ」
「あー……そっか。なろう以外にもたくさんありますもんね、投稿サイト」
「そう。だから昨今じゃ、新人賞へ参加する人が減ってきてる。そんな中で5000! やっぱりカミマツパワーですよ。知名度ありありですからね!」
うーん、僕何もしてないんだけどなぁ。
でも、父さん、そして芽衣さんのレーベルの、知名度アップに少しでも協力できてるんだったら、それでいっか。
「それで私たちを呼んだ理由は?」
「そうでした、白馬先生。それにカミマツ先生にも、選考委員として手伝ってもらいたいんです」
「原稿読むってことかい? 別にかまわないよ」
僕も賛成だった。
他の人の作品ってほとんど読んだことないし!
「ほんとだったら下読みさん雇ってやるんですけど、予想外に作品たくさんきちゃって、猫の手も借りたいんですよ」
「わかりました!」
僕は芽衣さんの持ってきた段ボールを、会議室のテーブルの上にのっける。
僕も白馬先生も原稿の束を手にする。うわあ……これが新人賞……。
「これが選評シートになります。読んで、五段階でいいので点数と、あとできればアドバイスをお願いします」
「わかったよミス芽衣。ところでまさか今日で全部読み終えなくてもいいよね?」
「もちろんですよ! 5000作品もあるわけですし! 時間があるときで……って、カミマツ先生?」
あれ? どうしたんだろう。
「あ、あの……カミマツ先生? その……原稿の束は?」
「え、読み終わった原稿ですけど?」
「「なっ……!?」」
僕は会話しながらばーっと目を通して、選評に書き込んで、そんでそれをはじによけていく。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ち給え我がライバルよ! きちんと読んでいるのかね?」
「え、あ、はい。もちろん」
「いやそれにしても……もう十数秒で1作品よんでるじゃないか」
「え? 自分で書くんじゃなくて他人の作品読むくらいなら、1分もあれば一冊読めますよね?」
愕然とする白馬先生。
いやぁ、それにしても他人の作品読むのって楽しいなぁ!
あ、でも5000作あるんだっけ。1作ずつじゃ時間かかるなぁ。
今日中に終わらせないといけないみたいだし……よおし。
「せ、先生? なんで目の前に原稿の束、6つ置くの?」
「え、視界に6つ分くらいなら入りますよね?」
「6つ同時に読めるわけないでしょ!?」
「読めますよぉ。ねえ?」
ぶるぶる、と白馬先生が首を振る。あれ?
「あ、そっか。普通は3冊くらいなんですね」
「「いやいやいや!」」
「でものんびりしてたら今日中に読み終われないですし」
「「今日中じゃないってさっき言ったでしょう!?」」
あれぇ、そうなんだっけ?
まあでもこの6作同時進行、1作品分のペースなら、いけそうだね!
「せ、先生……書くのも異常なのに、読むのまで反則なんて……」
「え、反則って……読むプロの編集さんなら、ぼくより早く読めますよね?」
「読めないよ! もうっ!」
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