121話 白馬先生、恋人発覚
学校を終えた僕は、父さんに呼ばれて、編集部へとやってきていた。
父さんが社長を務める出版社、【STAR RISE文庫】。通称、SR文庫。
ついこないだ、元々いた出版社から独立したばかり。
なのだけど……いつの間にか、でっかいビルの中に本拠地を構えている。
中津川が社長だったTAKANAWAは潰れて、その跡地に、SRが入ったんだって。
なんでも、開田グループってでっかいところが、出資者となってくれた、とかなんとか。
「ん? あれって……」
出版社の入り口の前に、見覚えのある車が停車していた。
そこからできたのは、白スーツの美青年。
「あ、白馬先生だ! はくばせんせー……え?」
先生と一緒に出てきたのは、柔和な笑みを浮かべる一人の女性だ。
「だ、誰だろう……? 知らない女の人だ……?」
先生は一言二言話した後、その人と別れる。
女の人は車に戻っていった。
「おや、我がライバルよ、どうしたのだねっ!」
「せ、先生……」
白馬王子先生。僕と同じレーベルで執筆している、ラノベ作家だ。
甘いマスクに白スーツ、そして胸には赤いバラ。
それらが本当に似合うイケメンは、この世に白馬先生ただ一人だろう。
「あ、あの……さっきの人は?」
「ん? ああ……内緒だよ」
ぱちん、とウィンクする先生。
僕らは並んで出版社の中に入る……。
「実は今、懇意にさせて貰っている女性なのさ」
「へー……。え!? つ、付き合ってる人ってことですか!?」
「その通りだ我がライバルよ」
そ、そんな……先生付き合ってるなんて……。
「い、いつの間に……?」
「こないだ少しね。高校の頃の同級生なのだ」
「そ、そうなんですね……良かった!」
「良かった?」
僕はうなずいて言う。
「先生ほら……前に僕に、失恋話、教えてくれたじゃないですか。だから僕……ずっと辛くって」
「ああ、そういうことか……ありがとう。心配してくれて。でももう大丈夫。今は……幸せだよ、私は」
僕らは並んでエレベーターに乗る。
「彼女との交際は始まったばかりで、向こうは一般人なんだ。だから、黙っていてもらえるとうれしい」
「も、もちろんです! ほんと良かった……先生が幸せそうで、ホントよかったです!」
「ふふっ。ありがとう」
そっかぁ、今度お祝いもってかないとっ。
どんなのがいいかな。
そんな風に僕らは編集部へと到着。
打ち合わせへと向かうのだった。




