120話 冬の日の少女たち
目を覚ました僕たちはリビングへと移動。
しょぼしょぼする目をこすりながら椅子に着く。
テーブルの上には、見事な朝食が用意されていた。
ホットサンドに温かいコーヒー。それにスープ。朝から豪華な食事だ。
「ごめんね、みちる。全部任せちゃって」
「あー、いいのいいの。気にしないで」
テキパキと朝ご飯の用意を終え、エプロンを外すみちる。
「好きでやってることだし。それに、アタシ勇太が、アタシの作ったご飯食べてもらえるのがいっちばん好きだから♡」
「そか……ありがと」
「へへっ♡ っとぉ……そろそろおちびを起こしてくるわ」
みちるはパタパタと階段をあがって寝室へと向かう。
『こーらおちび! いつまで寝てるのっ! 二度寝禁止!』
『やーん、布団をはぐなんてー、えっちすけっちわんたっちー』
上でドタバタが繰り広げられているようだ。
こうちゃん朝弱いからなぁ。特に冬は、起きるのが大変そう。毎日のようにみちるにたたき起こされている。
「わーん遅刻遅刻ぅ!」
こっちもドタバタしながら、お風呂場から出てきたのは由梨恵だ。
「わー! おいしそー! でも時間なーい!」
由梨恵はホットサンドをぱくっと一口で食べる。
「ごちそうさま! ってみちるんに伝えておいて!」
「うん。イベントがんばって」
「おうさー! いってきまーす!」
由梨恵は慌てて出て行った。
さもありなん。
デジマスの2期がいよいよ放映されたのである。
デジマス。デジタルマスターズ。僕の手がけたライトノベルのことだ。
第一期、映画と大人気に終わったデジマスは、この冬から第二期がスタートしている。
収録自体は随分前に終わってるらしいけど、イベントがてんこ盛りなんだってさ。
「さてと」
僕は立ち上がってみちるの用意してくれたご飯を持って、アリッサの部屋へと向かう。
「アリッサ。ごはんだよ」
「…………」
中から返事がない。多分まだ仕事中なんだろう。
アリッサもまた忙しい。二作目、僕心こと、【僕の心臓を君に捧げよう】のアニメ制作が進んでいる。
オープニング、そしてエンディングの作詞作曲を、彼女が買って出たのだ。
ここ最近ずっと部屋にこもって作業している。あんまり根を詰めないで欲しいけど……。
僕の作品のために、全身全霊をかけて作曲に取り組んでいる。そんな彼女にがんばるなとは言えなかった。
「あれ、勇太。由梨恵は?」
みちるとこうちゃんが二階から降りてきた。
「収録だって、出て行った」
「そ。大変ね。アリッサも仕事がんばってるし」
「年末だからねえ」
ぼくらはリビングへと向かう。
三人で朝食を取っている。
「おちびは忙しくないの? 年末だけど」
『ふ……せっしゃはいつだって忙しいぜ。人気イラストレーターだからな。っかー! 忙しいわー!』
ロシア語で何かを言ってるこうちゃん。例によって多分ろくでもないことだろう。
忙しいアピールしてみるみたいだけど……。
「昨日もまた遅くまで、ゲームしてたよね?」
『えぺはゲームじゃないの。仕事なの』
ふっ……と得意顔のこうちゃん。
「あんたサボってばっかいると、そのうち廃業しちゃうわよ?」
みちるからのまっとうな指摘に、こうちゃんはにやりと笑う。
『問題ない。こうちゃんはかみにーさまのヒモになるから。夫が稼いで、妻が家にいる。ニホンの古き良き夫婦関係よ』
ロシア語絶好調のこうちゃんだった。
まあ多分、またしょうもないことを言ってたのだろう。
そんな感じで、僕らは日々を過ごしていた。
同棲スタート時にはゴタゴタあったけど、今では五人でいるのが当たり前になっている。
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