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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
番外編

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111/236

111話 白馬の初恋、出会い

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挿絵(By みてみん)



 白馬王子。

 日本のトップ製薬会社、白馬製薬の御曹司として生を受ける。


 容姿端麗、成績優秀。


 家柄を鼻にかけることなく、誰にでも分け隔て無く接する。


 頭も良くて金も持っていて背も高い。


 白馬は幼少期よりモテた。

 それは当然と言えた。


 何もかもを持ち合わせている、まさに完璧超人。

 

 モテないわけがない。


 ……しかし白馬は誰とも付き合ったことがなかった。


 なぜなら……。


   ★


 それは今から10年ほど前、白馬は慶応(京櫻)大学の入学式に参加しようとしていた。


 真っ白なスーツに甘いマスクのイケメン。


 ただ歩いているだけで、女子達が自分を振り返る。


 目が合うと顔を赤くし、きゃーきゃーと黄色い声をあげる。


 女子達に手を振ってかえしてあげる。

 

「おや?」


 横断歩道にさしかかると、そこは、向こう側に渡れずに困っている老婆がいた。


 どうやら足が悪いらしい。

 歩行者用の信号がすぐにパッと変わってしまうため、渡れずにいるようだ。


 誰もが老婆を無視して、先に進んでいくなか……。


「やぁレディ。何かお困りかな?」


 白馬はまっすぐに老婆の元へ行き、声をかける。


「向こうに渡りたいだがねぇ……」

「オーケー。それでは、私と一緒に向こうに渡ろう」


「いいのかい?」

「もちろん! さっ、お手を拝借」


 老婆と手をつないで、白馬は横断歩道を渡る。


 決して急がせず、しかしペース配分を考え、老婆に負担をかけさせないようにして渡り終えた。


「ありがとうねぇ。なんとお礼を言えばいいか……」

「なに、気にしなくて良い。困っている女性をほっとけない質なのだよ」


 ふっ、とかっこいいポーズを取る白馬。

 老婆はうれしそうに笑って、頭を下げる。


 白馬にとって人助けは呼吸をするのと同義だ。


 人より多くを持って生まれた彼は、困っている人を助ける義務がある、と思っている。


 ノブレスオブリージュ。恵まれているからこそ、誰かに恵みをもたらすものであれ。それが、父・五竜からの教えであり、それを常に実行してきた。


「では、さらばだ!」


 白馬は老婆と別れて、大学へと向かおうとした……そのときだ。


「きゃああ! ひったくりよー!」


 先ほどの老婆が持っていたハンドバッグを、スクーターに乗った男が、持ち去ろうとしていたのだ。


「待て!」


 白馬は当然追いかける。


 だが相手はスクーター。しかも大型。違法改造してるのか、かなりの速度が出ている。


「くっ……! なんて速い!」

 

 とても成人男性の足では追いつけないような速さだ。


 スクーターに乗っていた男が、老婆が大事そうに抱えていたバッグを、理不尽に奪おうとしている。


「ゆるせん……!」


 必死になって追いかける白馬。

 だが距離はどんどんと離されていく。


 がっ……!


「ぐわっ!」


 石に蹴躓いてしまい、白馬は地面に倒れてしまう。


「くそ……!」


 そのすきにスクーターは更に速度を上げてさっていこうとする。


 だが諦めず、立ち上がって追いかけようとした……そのときだ。


「そこで待ってて!」


「え……?」


 白馬の横を、凄まじいスピードで、誰かが通り過ぎていった。


 髪の長いスーツ姿の女性だった。


 長い髪の毛をたなびかせ、背筋をピンと伸ばし、マラソン選手のような見事なフォームで走って行く。


 ……その姿に、思わず見とれてしまう白馬。

 黒髪の美女は違法改造したスクーターにあっさりと追いつくと……。


「おばあさんの大事なバッグ、何かってに奪おうとしてんのよ!!」


 なんと、跳び蹴りを食らわせたではないか。

 弾丸のごときスピードでつっこみ、そして相手のヘルメットごと蹴飛ばす。


 男はスクーターから、まるでボールのように吹っ飛ぶと、地面にぐしゃりと倒れた。


 跳び蹴りを食らわせた女性は、すたっ、と華麗に着地を決める。


「…………」


 あまりに早く、一瞬の出来事だった。

 だが彼の目は一部始終をしっかりとらえていた。


「そこのイケメンのお兄さん?」

「あ、ああ……なにかね?」


 女性は近づいてきて、バッグを渡してきた。


「これ、おばあさんに返してきて」


「……君は?」


「あたしはほら、この不届き者を警察に連れてくからさ」


 蹴飛ばされた男は、虫の息だが、しかし生きていた。


 ぐいっ、と彼女が立ち上がらせると、その場をあとにしようとする。


「君! ありがとう!」


 白馬は彼女に声をかける。


「君のおかげで助かった。レディのかわりに、礼を言おう」


 すると美女は笑って首を振る。


「何言ってるの。あなたが必死になっておいかけたおかげじゃないの」


「しかし私は追いつかなかった……」


「それでも、よ。あなたの全力疾走が、目にとまった。だから、私は異常に気づけたの。だからあなたの手柄」


 ね……と女性は微笑む。

 その笑顔を見て、白馬の心臓は、これまでにないくらい高まった。


「そういうことだから、じゃ」


 女性は倒れ臥す成人男性を、まるで米俵のように軽々と持ち上げる。


 そしてえっさほいさ、と小走りに去って行った。


「…………」


 もっと、話したかった。

 だがあっという間に彼女は見えなくなってしまう。


「また、会いたいな……おや?」


 彼女が走り去ったあと、地面にハンカチが落ちていた。


 ハンカチには刺繍が施されていた。


【N・ICHIKA】


「いちか……くんか」


 それが白馬の初恋の相手、ワンこと、一花との出会いだった。

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★新連載です★



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『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 白馬先生25歳じゃなかったっけか?(22話) Web版だからか整合性取れてないところが多くてちょっと気になる。
[一言] ワンさんでわかってたけど、いざ一花と分かると切ない… 白馬先生ぃぃぃぃぃぃ!。゜(゜´Д`゜)゜。
[気になる点] あーそういやそうだったなぁ、恋の◯◯◯ルが、あんな状態でよくまぁ手を出さなかったなぁとは思うが、出したら出したで半殺しで済んだかどうだかですよねー
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