109話 帰り道
一件落着してから、数時間後。
僕と由梨恵は帰路についていた。
みちるたちは、先に帰っていた。
あのあと色々あったから……。
「お疲れのようね、勇太君」
僕が乗っているのは、一花さんの運転するリムジンだ。
一花さんにもたくさん迷惑かけてしまった……。
「ごめんなさい」
「ううん、良いのよ。まったく……白馬君も意地悪だわ。教えてくれれば良いのに……まったく……」
一花さんと白馬先生は古い友人らしい。
で、今回の件、真意は知らされてなかったそうだ。
「ほんとすみません……」
由梨恵がペコッと頭を下げると、一花サンは微笑んで首を振る。
「気にしないで。でも、なんとかなってよかったわね」
「はい!」
「色々あったけどね……」
あのあとのことを、少し話そう。
僕は由梨恵と結婚したい旨を、母親に伝えた。
『まあ……神作家の嫁なら……ビジネスチャンスにもなりそうだし……』
母親は困惑している様子だったけど、最終的に許してくれた。
『いいでしょう。その覚悟に免じて……ただし、ちゃんと由梨恵を愛すること、良いわね?』
ぎろっ、とお母さんがにらんできた。
『はい! 由梨恵も愛します、一生』
『ん?』
お母さんが首をかしげる。
『ん? んん? えっと……あなた、今なんて? も?』
『はい!』
『もってなによ』
『みんな僕の嫁です!』
僕はみちる達を指さす。
お母さんはぽかーん……としていた。
お義父さん……五竜さんも、これにはさすがに目を丸くしていた。
『はぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
お義母さん、驚愕。
その後どういうことなのと事情説明された。
『僕、みんな好きなんです! 由梨恵さんも、幸せにします!』
『いや訳分からない!? え、あなたちょっと自分の書いているハーレム作品に、頭毒されちゃってるんじゃないの!?』
『わー、アタシと同じリアクション……』
みちるが共感したようにうなずいている。
お義母さんはキッ、とみちるをにらみつける。
『あなたたち!? いいの!? 他の女がいても!?』
こうちゃん、アリッサ、そして……みちる。
みんなうなずく。
絶句するお義母さん……。
『今、こういうのが……流行ってるの……? 今時の、子って……恋愛って……』
『いや、うちが特殊だと思いますぜ、親分』
こうちゃんがロシア語でそうつぶやいていた。
話は戻って。
「ま、まあ……そういうリアクションになるわよね、普通……」
一花さんがなぜか知らないけど、汗をかきながら言う。
「大変だとは思うけど……ほんとに、好きなんでしょう? みんな?」
一花さんが僕に問うてくる。
そう、好きなのだ。それは変わらない。
「はい」
「そっか……大変な道だけど、応援するわ。何か困ったこととかあったら、遠慮無く言ってね」
「ありがとうございます!」
そんなこんなあって、ぼく達は由梨恵と一緒に、自宅へと戻ってきた。
「ただいまー」
「勇太……!」
みちるが、僕を出迎えてくる。
こうちゃんとアリッサも、心配そうだ。
「だ、大丈夫だった……?」
「うん……いちおう」
お義母さんの説得は、かなり時間がかかった。
他のみんなには先に帰ってもらっていたのだ。
「勇太君が熱心に語りかけた結果、お母さんも納得してくれたよ」
「ほ、本当に……?」
凄い不満そうではあったけど、最終的には五竜さんも説得してくれた。
五竜さん曰く、『世間的に正しいとは言えないが、それが君にとっての最良ならば、私は否定しないよ』とのことだった。
『それに、あの金髪のお嬢さんが、彼と結ばれてくれた方が、我々にもメリットがあるし』と、アリッサを見て、五竜さんがそう言っていた。
アリッサと僕が結ばれた事による、メリットってなんだろう……?
わからないけど、でも、まあなんとかなった!
「結構力押しね……」
『話がちょっと長引いたから無理矢理終わらせたわけじゃないよ? そーてー通りの着地点だよ? 勘違いしないでよねみんな』
こうちゃんが相変わらず、ロシア語で何かをボソッとつぶやいていた。
「……まあ、でも無事で何よりです。ユータさんも、それに、ユリエさんも」
「ありっちゃん……」
アリッサに、由梨恵が抱きつく。
「ごめんね、みんな。心配かけて」
「ふん。ま、あんたが笑顔になって良かったわ」
みちるが由梨恵の頭をなでる。
『こうちゃんも頑張りましたぞ! 具体的に何したかって言われると、何したかわからねえけど、がんばったぞ!』
「こうちゃんもありがとね」
頭撫でて欲しそうだったので、僕はこうちゃんのあたまをなでる。
『みなさん、神作家の書籍版、購入してくださいましたでしょうか。こうちゃんのダイナマイトぼでーっぷりに、驚いたっしょ?』
「こうちゃん何言ってるか分からないからって、適当なこと言ってない?」
「ワタシニホンゴワカリマサセーン」
バリバリ日本語じゃん……。
「でも、まあ、うん。良かった」
みんな笑っている。
そうだよ、これで良いじゃないか。
笑っていられる、それが重要だ。
「あ、そうだ。勇太、由梨恵」
みちるとアリッサ、そして、こうちゃんが。
僕らに、言う。
「「「おかえりなさい!」」」
僕らは、笑って返す。
「「ただいま!」」
【★読者の皆さまへ お願いがあります】
これにて、神作家3章、終了となります。
次回から番外編、挟みます。
白馬先生の昔の話とか、その辺りの小話になる予定です。
そして、お願いがあります。
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すごく頑張りました。
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