105話 両親にご挨拶を
僕こと上松 勇太は、彼女の一人、駒ヶ根 由梨恵から悩みを打ち明けられた。
彼女は両親から婚約話を持ちかけられた。
声優を辞めてその人の元に嫁げと命令されたらしい。
彼女はまだ声優の仕事をしたいし、それに僕と一緒に居たいという。
彼女を助けるべく、僕は筋書きを練って、行動を開始した。
と言っても、さほど難しいことをするわけじゃない。
僕は両親に、挨拶に行く。それだけだ。
隣にある、大きなお屋敷へとやってきた。
「でっかいね」
「うん……お父さん、大きな製薬会社の、社長だから……」
由梨恵は、本名 白馬由梨恵という。
白馬王子先生の妹さん。
駒ヶ根は芸名らしい。
彼女たち兄妹は、白馬製薬という、日本で一番大きな製薬会社の社長の子供なんだって。
「…………」
由梨恵が沈んだ表情になる。
父親の命令は絶対だって思ってるからかな。
「大丈夫、僕がついてるよ」
ぎゅっ、と由梨恵の手を握る。
彼女の手は緊張で冷たくなっていた。
ぎゅっ、て強く握る。大丈夫任せてと、伝わってくれるように。
彼女は小さくこくんとうなずいて、握り返してくれた。
僕は彼女に信頼されてると知って、うれしかった。
「いこうか」
僕らは由梨恵とともに、彼女の屋敷へと向かう。
時刻は22時。
人の家を訪れるには遅すぎる。
けれど、先延ばしにしていては駄目だ。
解決するなら、今ここで。
それに、僕の【筋書き】によると、このシーンはさほど時間がかからずに終わる。
彼女から聞き出した情報と、事実から、僕は相手……つまり由梨恵の両親についてのリサーチは終えている。
お屋敷の入り口までやってきて、インターホンを鳴らす。
『はい』
外国人っぽいしゃべり方のひとが、インターホンの向こうから聞こえる。
多分ボディガードのひとかな。
僕らを追いかけてきた。
「夜分にすみません。白馬社長に会わせて欲しいのですが」
『……今忙しいので、帰ってもらえますか』
忙しいのは、由梨恵が行方知らずだからだろう。
彼らは由梨恵の位置を捕捉出来ていない。
僕らを探しに来た護衛の人は倒したしね。
「娘さんをお届けに参りました」
後ろに控えていた由梨恵の背中を、ぽん……とたたく。
『なっ!? お、お嬢様!?』
インターホンの向こうでドタバタと足音がする。
出てきたのは、やっぱり、ホテルで会った外人さんだ。
「お父さんに会わせて頂けますか?」




