表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/236

101話 夜の公園、一花さんのアドバイス

あけましておめでとうございます。


本年もよろしくお願いします。



 僕の彼女、駒ヶ根(こまがね) 由梨恵。

 彼女はお家の事情で、無理矢理お見合いされそうになった。


 お兄さんである白馬先生から連絡が来て、彼女を救出に向かう。


 贄川にえかわさんのお姉さんの手助けもあって、僕らはあの場から逃げ出すことに成功したのだった……。


「…………」


 贄川にえかわさんが運転するリムジンの中には、重苦しい空気が漂っている。


 僕の隣に由梨恵ゆりえが座っている。


 うつむいたまま、沈鬱な表情を浮かべていた。


「…………」


 いつも天真爛漫な彼女が、ここまで辛そうにしているのは初めてだ。


 何があったのか……それは、白馬先生からいろいろ聞いている。


 でも、彼女の心の中では、どう思ってるんだろう。


 僕は由梨恵ゆりえの恋人なのに、知らないことがままある。


 たとえば、彼女の出自とか。


 こういうときに、話しかけてあげられたら……。


 ああくそ、陰キャな小説家の僕には、女の子を慰めるなんて、コミュ力の高い事はできない……。


 と、そのときだ。


「二人とも、ついたわよ」

「ついた……って、え? ここ……どこです?」


 車が泊まっていたのは、どこか公園の駐車場のようだった。


「お台場の公園よ。ここなら追っ手は来ないわ。さ、降りて」


 贄川にえかわさんにうながされ、僕らは車から降りる。


 彼女は僕らの前に来て、頭を下げる。


「挨拶が遅れてごめんね。アタシは贄川にえかわ 一花。白馬君の友達よ」


「そうだったんですね。助けてくださって、ありがとうございます!」


 護衛の人に捕まりそうになったところを、一花さんに助けてもらったのだ。


 僕が頭を下げても……由梨恵ゆりえは辛そうな表情のままだ。


 そうだよね、すぐには切り替えられないよね……。


「あの、その……どうして公園に?」


「白馬君の無事を確認するのと、ふたりを安全な場所に送り届けたこと、の報告」


 一花さんは僕らを見てうなずく。


「ちょっと席外すから、ふたりはベンチに座って待ってて」


 一花さんが懐からスマホを取り出す。


「ああ、それと、ちゃんと二人で話し合うこと。三十分くらいしたら戻ってくるから」


 それじゃ、といって一花さんが離れていく。

 話し合うことって、言われても……。


 由梨恵ゆりえは黙ったままだし、何を話したら良いのかわからないし……。


 一花さんが離れていく。


 ど、どうしよう……と、とりあえず僕は彼女を追いかける。


「ま、待ってください!」


 一花さんはちょっと離れた自販機の前にいた。


 追いかけてきた僕を見て、ふぅ……と溜息をつく。


「駄目でしょ、カミマツ先生」


 つん、と一花さんが僕の額をつつく。


「あうん」

「女の子を一人、夜の公園に放置しちゃ」


 由梨恵ゆりえのことを言ってるんだろう。


「え、と……すみません。でも……一花さんだって女の子だし……」


 きょとん、と一花さんが目を丸くする。


「あはは! ありがと、そうね。アタシも女の子ね。うん、ありがと。あと半年くらい、言ってくれるのが早かったら、君に惚れてたかもね」


 ってことは、誰か他に、一花さんには思い人がいるってことかな。


「で、どうしたの?」


「えっと……僕らに話し合いさせたいっていってましたけど。車の中でもできたんじゃ? てゆーか、由梨恵ゆりえがしゃべりたがらない気がするんですけど……」


 ずっと黙ってたし、言いたくないんだろうと思う。


「んー、そうかしら。彼女、あなたに悩みを聞いて欲しそうだったわよ」


「え、そ、そうですかね……?」


「うん。でも車の中だと、ほら、アタシがいたでしょ? 話しにくいかなって。だからここに来たの。敵の気配もないしね」


 気配って……冒険者かなにかですか?

 でもかっこいい……。


「ここ夜景も綺麗だし、二人きりで話すにはちょうどいいかなって」


「……ほんとに、話してくれますかね」


「ええ。あなたから声をかけてくれれば、ね。多分待ってるわ、あなたが心のドアを開けて、悩みを共有してくれるのを」


 正直、さっきまでの重苦しい雰囲気のなかで、話しかけるのは至難の業に思えた。


 聞いても、帰ってこないかも知れないって。

 でも……。


 一花さんの強い言葉が、僕の背中を押してくれる。


 がこんっ、と一花さんが自販機から飲み物を取り出す。


「はいこれコーヒー。これもって戻ってあげなさい」


 一花さんが僕に缶コーヒーを2本渡す。


「あのその……すみません。助けてもらった上に、気まで遣わせてしまって」


 一花さんは僕を見て苦笑する。


「なるほど……白馬君も、厄介な子をライバルに据えてるわね。性格もよくて腕もいいか。神ってのはあながち間違いじゃないのかも」


「え?」


「ううん、何でもないわ。白馬君をよろしくね」


 じゃ、といって一花さんが離れていく。


 ……僕は決めた。

 由梨恵ゆりえがなんてリアクションを返そうと、彼女の悩みを聞いてあげるんだ。


 受け止めて、あげるんだ。


「よしっ」


 僕はきびすを返して、由梨恵ゆりえのいるほうへと戻る。


「あ、光彦くん。うん、そう。ちょっと出先。ああ、たいしたことないの。ごめんね」


 後ろから一花さんの声がする。

 ちらっと振り返ると、楽しそうに会話していた。


 頬を染めてしゃべってる姿を見て、彼氏さんかなって思った。


 そう、彼氏。

 僕は彼氏なんだ。由梨恵ゆりえの。だから、受け止めないと。


 あの子がどんな物を抱えていようと、僕は。

由梨恵ゆりえ、お待たせ」


 彼女はベンチに座っていた。

 けどうなだれているままの彼女。


 僕はその頬に、冷たい缶コーヒーを当てる。


「ひゃっ!」

由梨恵ゆりえ。ほら、コーヒー」

「あ、ありがと……勇太君……」


 由梨恵ゆりえが申し訳なさそうに肩をすぼめている。


 僕は隣に座って、肩を抱いた。


「あっ……!」

「とりあえず、さ。コーヒー……飲もっか」


 由梨恵ゆりえの大きな目が、まん丸に見開かれる。


 けど、ふっ、と目元を緩めるとうなずく。


 僕らは夜景を見ながら、コーヒーを飲むことにしたのだった。



【★お知らせ】


新作の短編、書きました!



「オタクはキモいから無理」と恋人に浮気され振られた夜、オタクに優しいギャルと付き合うことになった〜実は優良物件だったと今更気づいても遅い、清楚系美人となった趣味の合う元ギャルとラブラブなので」


【URL】


https://book1.adouzi.eu.org/n3138hk/


よろしければ是非!


広告下にも↓リンク貼ってあります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★新連載です★



↓タイトル押すと作品サイトに飛びます↓



『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
[一言] ワンクッション置かないと話し合う覚悟を決められないのは残念過ぎる… 幸せにするって言葉が勢いで言った薄っぺらい言葉に見えるよ
[一言] 窓際編集の方も同時進行で読んでると面白い
[一言] ちょっと頭の中を整理しよう。ちょっと間隔が空いて、他の原作者の書いた、この小説にちょっと似た小説とか、いろいろ情報が混ざって混乱した^^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ