新着情報があります
" マスター
速報!!日曜日12時からFM長久手にが〜るずちゃんたちがゲスト出演するそうです! "
朝晩の空気が肌寒く感じるようになってきた10月の夜。
日課になっていた応援サイトの掲示板には管理人のマスターさんからの新着情報が書き込まれていた。
実はこの情報。俺の方でも入手しており、入力をしている間に更新されたものだった。
タッチの差でマスターさんに負けてしまったと言う訳だ。
サイト開設から1ヶ月以上経ち、掲示板を通じて仲良くなった人もちらほら。
まずは管理人のマスターさん。
リアルでは喫茶店のマスターをしているらしく、ハンネもそこからきているらしい。未だ独身らしいが、付き合っている彼女はいるとのこと。
続いてはハルクくん。
地元の高校に通う17歳で俺たち同様、夏祭りでが〜るずのライブを見て『ずきゅん♡』とハートを射抜かれたらしい。ちなみに俺と同じで年齢=彼女いない歴らしい。
瀬戸市在住の高校生まりりんちゃん。
本人曰く15歳のJKらしいが言動はおっさんぽく、みんなから『ネカマだろ〜』と疑われている。
最後にプライベートは謎のnanaさん。
性別年齢不詳だが、かわいい子が大好きらしく、サイトにアップされているマスターさんの撮った写真を『保存させてください!』とお願いしていた。(俺も便乗させてもらった)
このメンバーにK´zこと俺を含めた5人がよく掲示板を利用している。
" K´z
出遅れた〜!俺もちょうど入力している最中でした。長久手ワオンでの公開放送っすよね。参戦予定っす! "
" マスター
K´zくん。詳細情報ありがとう〜。公開放送!残念ながら仕事でいけそうにないです "
ふふふ。マスターさんもここまでは知らなかったらしい。まあ、俺も偶然知ることができたんだけどね。
実は1時間前くらいまで公開放送の行われる長久手ワオンに舞華たちと行っていたのだ! なんでも「クラブ活動」で使うために透けにくく動きやすいインナーが欲しいから買い物に車で連れてってと頼まれたのだ。
他の2人ならいざ知らず『舞華はスポブラだから問題ないだろ?』と言ったらセクハラだ! モラハラだ! と責められた挙句、慰謝料をいただきますとレストラン街にある『にゃんこカフェ』でパフェを奢らされた。
「ん〜、おいしっ! 2人も遠慮せずにパフェ頼めばよかったのに」
左手で落ちそうになっている頬を押さえている舞華が、飲み物を注文した響と奏ちゃんに声をかけた。
「ホント、舞華はよく食べるよね〜」
「それだけ食べても脂肪が付かないから羨ましいわ」
半ば呆れながら返す響と奏ちゃんだが、俺から言わせてもらえば、舞華の方がうらやむくらいのナイスバディだぞ? まあ、それを言うとセクハラだと言われるんだろうけど。
「舞華の場合は必要なとこにも脂肪が付かないからな」
舞華もスレンダーには変わりないが、ナイスバディと言う言葉は当てはまらない。
「ふふふ。ホントにお兄ちゃんは学習しないよね?」
「いでででで! おいっ! カカトで指先踏むな!」
今日は正面に座っている舞華が小さな身体をテーブルの下に沈めてグリグリと踏み付けているのだ。
「私はまだ成長期なのっ! 見ててよ、お兄ちゃんの手から溢れるくらいになってやるから!」
別に巨乳好きという訳じゃないし、なんでいもうとの胸揉まなきゃならんのだ?
「いや〜、さすがにいまからじゃ難しいんじゃないかな? でも舞華、キレイなピンク色だから———」
「あっ、あ〜! ちょっとお店の中でなんてこと言うの!」
響の暴露に慌てた舞華が、両手で口をふさぐ。そうか、舞華は量より質という訳だな。
「お兄ちゃん? 何を想像してるのかな?」
「いや、代謝が悪くなったらお腹の方が出るんだなって思っただけだぞ?」
きっと胸には栄養がいかない体質なんだろう。
「和志さんは大きい方がお好きですか?」
今日は俺の隣に座っている奏ちゃんが、胸を強調するように身体の向きを変えてきた。
「いや、別にそういうわけじゃないぞ?」
タートルネックのノースリーブサマーセーターを着た奏ちゃんは、谷間が見えるようなことはないが、ピッタリとしたニットなので身体のラインが強調されて、一言でいうとエロい。
「このトップス、和志さんとお出かけするために買ったんです。着る機会ができて良かった」
ピッタリと身体を寄せてくるもんだから、左腕の肘あたりに柔らかいものが当たって頭がクラクラしそうになる。
「ちょっと奏ちゃん? くっつき過ぎ! やっぱり私がお兄ちゃんの隣に座るよ」
実は入店時に席順で舞華と奏ちゃんが俺の隣に座ると主張しあっていた。
平行線を辿っていた話し合いは、響の「前は舞華が隣だったから」という意見で決着が着いた。
「あら? さっきまで和志さんにイタズラしてたのは誰かしら? 舞華ちゃんが隣だと和志さんも気が休まらないわよ?」
いや、まあそうなんだけどさ? 奏ちゃんも別の意味で気が休まらないんだけどな。
「あっはははは。カズ兄、モテモテだねぇ。もう私らも高校生だからちょっとはうれしいでしょ?」
「ぐぅっ、よくそんな昔のこと覚えてるな」
舞華と奏ちゃんのこの類のやり取りはいまに始まったことじゃなく、それこそ3人が小学生の頃からで、高校生だった俺が「小学生にモテてもうれしくない」と言ったことがある。響はそんな昔のことを覚えていたのだ。
「そりゃあ、ね。あの時言われたことがきっかけで私たちはキレイになってやる! って思ったんだもん。カズ兄、ちゃんと責任取ってよね?」
ズイっと前のめりになった響は、首元がゆったりとしたキャミソールの上にカーディガンを羽織っているので、谷間がチラリと見えてしまっている。
「な、なんだよ責任って。俺の言葉がきっかけでキレイになったなら結果オーライじゃないか」
「えぇ〜。もうちょっと踏み込もうよ。それともカズ兄。今度は未成年はダメって言わないよね?」
「ぐっ」
響めっ! 先読みしやがって!
「あははっ、ほんっとにカズ兄ってわかりやすいねぇ。でも、そこがいいとこだったりするんだけどね、っと。ねぇ、そろそろでない? 私、夕飯の買い物もしなきゃいけないんだよね」
「ん? ああ。そうだな」
響は4人兄弟の一番上。両親は共働きだから家の手伝いもしっかりしている。見た目はギャルなのに家事全般をソツなくこなす女子力高めの女の子だ。
「あっ、ちょっと待ってよお兄ちゃん」
こうして本来の買い物をすべく専門店街を回っていると1階のイベントスペースで3人が立ち止まった。
「改めて見ると広いね」
「だねぇ、どれだけの人が見てくれるんだろうねぇ?」
「いっぱい練習しましょう」
ヒソヒソと3人で話してるもんだから、蚊帳の外の俺は周りをキョロキョロと見ていると、イベントスケジュールがモニターに映し出されていた。何気なく見てみるとそこに『FM長久手 開局10周年! まるっと一日公開放送』という文字がデカデカと映し出され、その中のゲスト欄に小さく『SYO-BU が〜るず(仮)』の名前を見つけた。
「うおっ!」
思わず叫んでしまったが、幸いなことに舞華たちは話し込んでる最中で、俺はバレないようにスマホでスケジュールを撮影したのだった。
翌日、サイトの掲示板にはイベントへの様々な反応があり、ハルクくんとまりりんちゃんからは『参戦しま〜す』との書き込みがあった。
これはもしやオフ会の流れか?
降って湧いた可能性に期待と不安が交錯しだした。




