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【電子書籍化】転生したらラノベヒロインの妹だったので推しの顔を見にライバル校へ行きます。  作者: 雪菊
1章

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32.入院しています



めちゃくちゃ身体痛い。

ヤバい。

あと八神先輩がめちゃくちゃ怖かった。



「君、怖がりのくせに変なところ思い切りがいいの本当にやめて」



手を握ってくれていたらしく、目が覚めて真っ先に見えたのが八神先輩の顔だった。

安心したように息を吐いたあとすぐの、スン…と表情の抜け落ちた顔はマジで怖いので出来る限りもう見たくなさ過ぎて無言で頷いた。必死に頷いた。


ある程度は怪我治してもらってるんだけど、流石に浄化が難しくってそっち優先にしないとヤバそうとかでそうしてもらった。ようやく魔法が使えるようになった。


日上先輩に「終夜にキレられるから練習は退院後にしておけよ」と諭された。流石に身体が痛いのでそこまでやるつもりはない。でも、ちょっとだけお説教を思い出したので静かに頷いた。


そういえば、超絶忙しいはずなのにお父さんが来て「一花が謝りたいと言っているがどうしたい?」と聞いてきたので、嫌でござる嫌でござる会いたくないでござる怖いよぉと駄々をこねておいた。

少なくとも今会ったら怖すぎて死んじゃう。


三月くんは「もうあんな屑のことは気にしなくていいんだよ」と優しい声で言った。目が怖かった。私の可愛い弟どこいった?三月くんだけは癒しでいて欲しい。


目が覚めて数日はとても穏やかに過ごしました。

数日は。




今の私はダッシュでひたすら病院内を逃げ回っている。

なんで!?暗器飛んでくるんだが!?



花霞(はながすみ)!」



色とりどりの花が相手の周囲へ舞い、時間を稼いでくれる。なんなら魔力防壁にもなるのでこの隙にさらに逃げる。

お父さんに持たされた緊急用の笛鳴らしたから絶対もうすぐ助けが来るはずなので!

まだ本調子ではないので走るのがキツいんだけど!?


非常階段まで来て、ドアノブに手をかけた瞬間、上から何かが降ってきて、息を呑んだ瞬間だった。金属音がしてそれは私に当たることなく地に落ちる。



「よく逃げ切った。偉いぞ、二菜」



優しくそう告げる声は間違えようもないお父さんの声だ。

そして、叩きつけられたような音と、何かが割れたような音がした。



「うんうん。偉いぞ!従兄弟として好ましい。俺の嫁さんとかなる気ない?」


「口を閉じたらどうだい?そもそもの原因の一端が何寝言を言ってるんだか……寝言は寝てから言うべきだ」



お父さんの背の向こう側で壱流くんが世迷言を言いながら誰か知らない女の人の顔を窓ガラスに突っ込んでいて、八神先輩が知らない男性の顔を思い切り床にめり込ませていた。おそらく鼻の骨折れてる。


お父さんの部下の人は「あちら、暇そうだったからスカウトした小鳥遊壱流と、絶対に対抗戦含む諸々許さない&中佐の娘さんの危機が許せないマンの八神先輩の弟さんです」という紹介をしてくれたがちょっと意味わからないし、私も対抗戦の件許さないウーマンの立ち位置の方がいいんだけど。



「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでアンタがワタシのジャマすんのよ!!!その娘を殺すのは本家の命令よ!」


「だって、それ面白くなさそうなんだもん。俺は我慢して、超我慢してアイツらの相手してたのに、お前らそれを当然だと思ってるんだもんなぁ……もうちょっと、人を見る目養った方がいいぜ?」



穏やかに言い聞かせるようにそう言う。あ。割れてない方の窓にもう一回頭ぶつけた。

壱流くんヤバいがすぎないか?お父さん助けて。



「何故下賤な血を発現させた女を庇うのですか、誠二様!!目を覚ましてください!そんなゴミ……げふっ」


「下賤な血、ねぇ?ふふ……自己紹介かな」



容赦なく刀の鞘で殴る八神先輩。

魔王降臨、という言葉が頭を過った。目のハイライトが消えているところを見るとガチギレである。

私よりおこなのでむしろ私の方がサーッと怒りが引いていくのを感じる。代わりに恐怖マシマシである。


その後も交互に懲りずに話す彼ら曰く、一花ちゃんは尊い小鳥遊の次期当主で私は他家の血を多く表す下賤なゴミ虫なので退治するのは当然。生きているだけで罪深い。だから正当なる小鳥遊の正義の血を以て悪しき私を殺さねばならなかったらしい。


ついでに、壱流くんによって顔面ガラス塗れにされてしまった女の人はお父さんのことが好きだったけど、お父さんはうちのお母さんと恋愛結婚してしまい、しかも女の私がお父さんと一番顔立ちが似ているのに小鳥遊の魔法の素養がなかったのが殺しても殺したりないくらい憎かったらしい。一花ちゃんはおばさん(父の姉)に似てるから良いんだそうだ。

なんか勝手に血塗れになりながら話してくれるんだけど絵面が超ホラー。私はお父さんの服を掴みながらプルプル震えています。


話が大体終わった頃に彼らは昏倒させられた。



「ついでに調書書いときました。これで小鳥遊にメスを入れられますか?」


「八神中尉、直轄施設以外での軽率な言動は慎むように」


「はっ、申し訳ございません小鳥遊中佐」



お父さんの部下の人とかも来てくれたみたいで、ヤバいのみんな連れて帰ってくれた。

ところで調書こんなとこで書いていいもんなの?ねぇ、八神兄、良いの?


先程の体験が怖すぎたので先輩たちの前だけどお父さんにくっついてギャン泣きした私は絶対悪くない。


泣き終わった私を病室に戻したお父さんが話しかける。



「一花のことだが」



なんでいきなり?と思ったが若干関係あった。今回の一連の都合を説明された後、めちゃくちゃなやらかしに頭を抱える。



「この際だから、寺か神殿に入れて贖罪をした後に一定の期間をもって還俗するか、我が家と一切の縁を切って小鳥遊本家に養子に入るかを選択させた。一花は後者を選んだ。あの子は今後、本家の人間になる。

……せめて、強い権力にはそれを扱うものの権利だけでなく、義務というものがあるということを理解してくれているといいが」



悲しげにいうお父さんを見ていると、益々一花ちゃん許せねぇ度が上がっていく。なんだか少し、息が詰まるような感覚には見ないふりをした。体の不調を気にしている場合でもないし。



「そして二菜。おまえも四家の一つ、花守への養子の話を進めている」


「私も!?花守?えっ?」


「……母さんの実家、森さんではなく本当は花守の本家筋なんだ」


「まさかの!?」



えっでもおじさん森って苗字で論文書いてたじゃん……。

そんなことを言うと、「目立つから、らしい」という本人がこともなげに言ったであろう言葉を聞かされた。



「お前に出現した魔眼は花守のものだ。だからこそ小鳥遊はここに来ても執拗にお前を害そうとした。……親としては悔しい話だが、花守にとっては数十年ぶりに現れた魔眼保持者だ。おそらく私たちよりも安全にお前を守れるだろう」



選ばせてやれなくてすまない、と私を撫でるお父さんの表情は急に年老いたように見えて、とても悲しくなった。


ところで、うち小鳥遊としては分家なんだから花守頼ってもよかったのでは?えっ……お母さん全部捨てて嫁いできたから私の覚醒(仮)がなければ頼っちゃダメな契約になってた?

……もうやだぁ。

1章 完。


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― 新着の感想 ―
[一言] ふむ、あっさり一花が本家に行ったね。これはむしろ拍子抜けというか? これまでの話でもしかして一花って仁菜にコンプレックスを持っているんじゃないかと思っていたけど、全然そんなことない?つまり、…
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