16.生徒会の枠が埋まりました
結局、藍川姉は藍川父よりめちゃくちゃ怒られて、藍川父がひたすら頑張ってなんとかしたらしい。主に謝罪回りとか金銭面。藍川父は婿養子らしく、「俺は息子連れて離婚を考えているが」と嫁に宣告するという事案となっているらしい。
藍川くんは「親父は今のうちの収入源だからお袋がすげー焦ってたし、姉貴はそれがどういうことかわからんまま喚いていたのでいい気味だと思った」と感想を述べている。
そして肝心の藍川くんは八神先輩に肩を叩かれて生徒会入りすることになった。
どうも、数字に強いからか目をつけられていたっぽい。あと、彼は問題有りの家とはいえ名家の出身で、お父さんは頑張ればお金を工面できる点からもある程度察することができるが軍の中でも地位は高めだ。ちなみにお金は個人で貯めているお金から出しただけっぽいです。藍川くん曰く「親父は貯金ができるタイプ」なんだとか。
声をかけられた藍川くんの私や遥先輩と違うところは、「よっしゃー!!内申点ゲットォ!!」とガッツポーズをしていたところである。八神先輩はニコニコしていた。内申点的には私も非常に嬉しいのよくわかる。でも、先輩方の嫉妬とか恨みを買う方が高くつくそうだったから私は断りたかったんだよなぁ。はじめは。
そういえば最近、一花ちゃんと勇樹くんから遠回しに各所への取りなしを頼む感じのメールが届いていたけど面倒すぎて無視している。優奈に「目が死んでたわ」と言われた。それを言った当人も兄から「小鳥遊さんの妹さんに小鳥遊さんとご家族との仲を取り持ってもらえるよう頼めないか」みたいなメールが届いたらしく死んだ目で着拒していた。
「あの男、家族との仲を取り持ったところであの女の記憶にすら残る可能性が少ないのをわかっていないわ」
ひょっとしたら記憶にくらいはのこ……いや、一花ちゃんって結構お花畑系だから残らないかもしれない。勇樹くん至上主義なとこあるし。私、勇樹くんが関わった時の一花ちゃん意味分かんなすぎて怖い。
優奈のセリフにちょっとゾッとした私だった。
枠が全て埋まった生徒会で滞りなく業務を遂行している。
女子一人でも意外と何も言われないことに首を捻っていたが、藍川くん曰く、「魔王から小鳥遊並に役に立つのなら考えてあげるよって言われた人たちが撃沈してて、おまえも会長たち側のやばい人間だと思われているだけだぞ」らしい。解せぬ。ヤバい人間とはなんぞや。
ところで魔王ってなんだ?
そこまで恐ろしいの誰かいたっけ?
覇王系のワイルドイケメンと悪魔っぽい微笑みの国宝級超絶美形と、天界から降りてきた系の美人はいるけど魔王は心当たりがない。でもなんか話の流れ的には日上先輩か八神先輩な気がする。魔王かどうかはちょっとわからないけど。
そんな感じで六月が過ぎていった。
七月に入る頃、ようやく生徒会メンバーの魔道具が完成した。非常に協力的だった。厳密には一人につき二つを各自自費で負担する形で作成した。
藍川くんはお父さんとちゃんと話をしてからお金関連がマシになったらしく、「……小遣いを元手に何か金増やす手段無ぇかな」と不穏なセリフを放った。極端にお金が減るのが耐えられないタイプだという自己分析のもと、節制をして貯めているらしい。
そんなある日、会長が私たちに告げた。
「魔法科高等学校対抗戦のメンバーを決めた。そういうわけで、ここにいる五人は夏季休暇は実家に戻らずここで合宿をすることになる。盆以外は帰れぬと連絡しておけ」
「はい、質問です会長ー!!」
「何だ、藍川」
「それは、ここにいる五人が対抗戦の出場メンバーであるという意味なのか、生徒会役員として出場する生徒のサポートをしろという意味なのかどっちでしょうか!」
「ここにいる五人が出場メンバーだ。何か言われることがあれば日上光一が独断で全て決めたので基準は知らんと言え」
そう言って会長は資料に目を通し始めた。寝耳に水である。とはいえ、追加魔道具の申請来なかったから「そうなるかも?」とは思っていたのだけど。
遥先輩は「次から次にどうして……」と胃のあたりを摩っていたし、藍川くんは「姉貴との遭遇率が低くなる夏休み最高がすぎないか?」とはしゃぎ気味だ。それを言われると、一花ちゃんとの関わりが少なくなるのは歓迎すべきかなって思っちゃうじゃん。
お盆にある地元の花火大会は優奈や地元の友人と行く約束してたのでお盆帰れるだけで全然おっけー!まぁ、お祭り巡りは諸事情でできないんですが。
と、少し気分を上げながら窓口になる三月くんに話をすると溜息を吐いていた。
「帰って来ないのは正直正解だと思うよ。一花姉さん、あの男と夏中くっついてるつもりらしいし。でも魔法科高等学校対抗戦の方はあの男とその姉さん含む取り巻きも出るらしいから気をつけた方がいい。二菜ちゃんは……うん、二菜ちゃんはそこまで悪くないけど、すぐ巻き込まれるから怪我とか気をつけて」
そういえば、二菜が準ヒロインやってるの原作のこのあたりからだったな。
怪我とか絶対気をつけよ。怖。




