第157話 今の発言は確実に不敬罪だ
王城に残していくと言うと、メルテラから大いに反対された。
「何でわらわが留守番なのじゃ!? 置いていくならゴースト女でええじゃろ!」
「シルヴィアだと怖がられるだろ。そもそも昼間は見えないし。ほら、帰ってきたら好きなもの食べさせてやるから」
「む……それは何でもよいのか?」
「もちろん」
「……仕方ないのう」
ちょろい。
「あと一応、ベイビースーラを何体か置いといてやるから」
『まかせてなのー』
スーラから分離した個体が、メルテラの頭や肩の上に乗っかる。
それからシルヴィアも置いていくことにした。
ゴーストなど別に要らぬわ! とメルテラは叫んでいたが、きっと強がりだろう。
「馬車をご用意しましょう」
「あ、大丈夫。馬車だと遅いし、時間かかっちゃうから」
「……?」
マチンカの提案を断り、土の船を作り出すリオン。
この方がずっと早く目的地に着くことができるからだ。
「こ、これは……?」
「「ふね!」」
「船……? いや、確かに形状はそうですが……しかし、船は水の上を走るはず……」
怪訝な顔をするマチンカの前で、土船を出発させる。
地面の上を走る船という非現実的な光景もさることながら、凄まじいスピードで遠ざかっていく様子に、マチンカは呆然とその場に立ち尽くした。
「あの辺りっぽいな」
土船を走らせ続けること小一時間。
リオン一行は、地図に記されていた場所へと辿り着く。
そこは巨大な大岩が連なる岩石地帯。
船を降りて一帯に立ち入ると、どこからともなくわらわらと岩と同じ色の大きな蜥蜴が群がってきた。
ロックリザードと呼ばれる、岩場に棲息する魔物だ。
見た目が岩に似ているだけでなく、その鱗も岩のように固い。
「えい」
「やあ」
「「「~~~~~~っ!?」」」
しかしそんなロックリザードたちも、双子の殴打で軽々と鱗を粉砕され、吹き飛ばされていく。
無論、リオン一行の足を止めることはできない。
やがて、無数の岩群の中にひっそりと隠れるように、ダンジョンの入り口らしき穴が開いているのを発見した。
だが――
「軍隊か?」
その入り口付近に、百人規模の武装した集団の姿があったのだ。
あちこちに軍幕が設置されており、ここでキャンプをしているようである。
構成員の種族は様々だ。
「「いく」」
双子は気にせずそのキャンプ地へと近づいていった。
「猫人族の子供……?」
「人間もいるぞ……?」
困惑している獣人たちの中から、猫人族らしい男が出てきた。
身なりからして、どうやら士官クラスのようだ。
「おい、ここで何してる?」
「「そっちは?」」
「ああ? こっちが聞いてんだよ。てめぇらどこのガキだ、こら? 痛い目見たくなけりゃ、どっか行くんだな」
男が鋭い目つきで脅してくる。
無論、それで怯むような双子ではない。
「「ん」」
「……は?」
一瞬で距離を詰める。
唖然とする男の足をアルクが払って地面にひっくり返すと、その腹をイリスが踏みつけた。
「ぶげっ!? て、てめぇら、何をぶごっ!? こ、このオレに手を出したら、どうなるか分かっぎゃぶっ!?」
……ボコボコである。
最近、暴力で物事を解決し過ぎではないかと、リオンは少し心配になった。
「な、何してやがる!? とっとと助けぶぎゃっ!?」
男が叫び、突然のことに呆然としていた他の獣人たちが慌てて動き出そうとする。
「「「がっ!?」」」
しかし彼らは助けに入る前に、見えない壁に激突してしまった。
リオンが展開した結界だ。
「ひ、ひぃ……て、てめぇら、許さねぇぞ! どこのガキか知らねぇが、このオレは獣王様の最側近の一人、ラグドー様の命令でここに来てるんだっ!」
「「命令?」」
「ああそうだ! このダンジョン内に、反政府派の重要人物が隠れてるって話だからな! そいつを始末するためだ! これ以上オレたちの邪魔するなら、てめぇらも反政府派と見なして容赦しねぇぞ!」
脅し文句のつもりだったのだろう。
だがそれは効果をもたらすどころか、かえって双子の怒りを買うこととなった。
「「……」」
「ひっ? な、な、何だ、その目は……っ!? お、オレに歯向かうってことは、獣王様に反抗するってことだぞっ!?」
「「獣王なら倒した」」
「……はあ?」
当然だが、まだここには情報が伝わっていないようだ。
男は双子の言葉をただの妄言だと考え、哄笑した。
「ぎゃははははははっ! 獣王様を倒しただって? てめぇらみたいなガキどもが?」
「ん。倒した」
「倒してから、ここに来た」
「こいつはなかなか面白れぇ冗談だな! 獣王様はこの国最強のお方だ! ガキごときに負けるわけねぇだろうがよ! つーか、もう終わりだぜ、てめぇらは! 今の発言は確実に不敬罪だ! 死刑決定だ、死刑!」
まさか本当に目の前の双子に獣王が破れたとは露知らず、幻の威光を背に怒鳴り散らしている様は、なかなか滑稽である。
「「うるさい」」
「ぶぎゃあっ!?」
双子に吹き飛ばされ、男は完全に気を失う。
他の兵士たちは双子に気圧されてしまったのか、その場から動くことができない。
それどころか、双子が通ろうとすると慌てて道を開けた。
「「行く」」
そうしてリオン一行は、ダンジョンへと足を踏み入れたのだった。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。





