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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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997/1357

997 星暦557年 桃の月 18日 家族(?)サービス期間(21)

「お待たせ!

・・・何か面白い物でもあった?」

シェイラが戻ってきて俺の手元を覗き込んだ。


「う~ん・・・箪笥に魔術回路が刻まれているのなんて珍しいから何か役に立つ新しい機能なのかな?と思って書き写してみたんだが・・・嫌がらせ用かも。

シェイラの方はどうなんだ?

結局あの壺は本物っぽいのか?」

どっから来たのか分からない壺なのだ。

答え合わせは出来ないとは思うが、シェイラ的にはどう思ったんだろうかと尋ねてみる。


「まあ、茶壷であることは確実だけど、多分意図して偽物を造ったか、単にセルナウム王国中期に流行った模様が好きでそれっぽいのを使ったってだけな感じだったわ。

それよりも、嫌がらせ用ってどういう事?

中に入れた物が黴るとかそんな魔術回路なの?」

シェイラが眉を顰めながら聞いてきた。


最近は色々と魔術回路を分解して研究するようになったせいか、実際に回路を組み立てて魔力を流さなくてもかなり魔術回路の機能が分かる事も多くなってきた。

まあ、魔術回路ってちょっとの違いで全然想定外な効果を生み出すことあるから、実際に作ってみるまでは確実とは言えないが。

でもこれは比較的単純だし、隠蔽しようとしてないから読み取りやすい。


「こっちの部分は大気の魔素を集める効果がある筈。

で、こっちは集まった魔素がある程度以上になると箪笥を少しだけ揺するんだとと思う。

箪笥が倒れるような力が掛かる訳じゃあ無いんだが、上に何かバランスが微妙な物があったら倒れるとか、中に入っている物が横に当たってコトコトと音を立てるとか言った程度だな」

大した効果はない。

だけど、時折思い出したように上に飾った花瓶が倒れるとか、夜中の寝静まった間にカタカタ音がする箪笥って・・・使用者にとってはかなり嫌だろう。


「確かに幽霊でもいるのか、もしくは鼠でも住みついているのかって気になりそうだわね」

シェイラが顔をしかめた。


「そうなんだよなぁ。

多分熟睡していたら起きない程度の音だと思うけど、転寝している時とか、さあ寝ようと思っている程度だったら聞こえると思う」

日中に活動している間だったら殆ど聞こえないと思うし、動き回っている時に花瓶が倒れても自分が部屋に入った時に箪笥にぶつかったか自分の動きで生じた風とかでバランスが崩れたのかとかって思うから大して気にしないだろう。


だが、ベッドに寝ている時なんかに小さくても突然音がしたら・・・自分が原因じゃないのははっきりしているし、他に音がしないのだから注意を引くし怖いだろう。

花瓶が倒れでもしたら更にもっとぎょっとするだろうな。


しかも、部屋の中に人がいる方がそいつから漏れ出る魔力が部屋の中の魔素濃度を多少上げる可能性が高いから、箪笥を揺らす機能が起動して音が鳴る可能性も高まると思う。


ある意味、嫌いな客とか、憎い姑とかに贈る箪笥に良いかも?

嫁が姑に箪笥を送るってことはあまりなさそうだから、嫁入りする嫌いな姉に家に残る弟や妹が今までの苦労の分を籠めて嫌がらせをした花嫁家具って感じかね?


それなりに箪笥の素材や表面の細工は悪くないのだ。

持ち主も微妙な微音が気になるけど、捨てるには惜しいってことで売って、買った人間がやっぱ音が気になって売り・・・と繰り返している間に蚤市まで落ちて来たんじゃないかな。


「・・・ある意味、面白い嫌がらせね。

ジャムール()にでも送ってやろうかしら。

でもあいつはベッドに入った瞬間に熟睡しているようなタイプだから、効果はなさそう?」

シェイラは俺の話を聞いて、大元だった箪笥に近づいてじっと見つめながら考え込み始めた。


「流石にそれを転移門で持って帰るのは無理だぞ?

取り敢えず買って領事館で保管しておいてもらって、次に屋敷船で来るときに持って帰って来るっていうなら可能だが」

箪笥サイズじゃあシェフィート商会とか他の伝手がある商会に気軽に頼んで持って帰ってきてもらうのも難しい。


屋敷船だったら幾らでもスペースがあるから箪笥でも持って帰れるんだがな。

・・・シャルロとかアレクのお袋さん達は年初にジルダスに来る予定とかってあるのかな?

去年は来ていたようだけど、2年連続は無いかな?


染料を見に東大陸まで来るかもしれないから、その際についでに頼むのは可能かも知れないが。


「う~ん、私の家族は新しい物好きだから嫌がらせをするなら新しい箪笥に魔術回路を刻んでもらうことになるわね。

その他の知り合いは流石に箪笥を贈れるぐらい近い人間で嫌がらせをしたい相手は居ないし」

シェイラが肩を竦めながら動き始めた。


まあ、そうだよな。

結婚するとか実家を出て独り立ちする親戚とかにだったら箪笥を贈るのもありかも知れないが、単なる知人や友人に箪笥を贈ったらかなり意味深だ。


だが。

プレゼントにこっそり魔術回路を仕込んで悪戯をするというのは面白いかも?

周囲の魔素を吸収する魔術回路を使ってどんなことが出来るか、今度考えてみよう。



ああ、年始ののんびり期間が終わっちゃった・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新しい話と年の仕事始めお疲れさまです。 そしてびっくり箱系かぁ………使い所が……。 どちらかと言うと魔術回路の読み取りに関する講師を、学院から頼まれそうな予感。 邪神召喚編で魔術院の偉い人が…
[一言] やっぱりまた何か、工夫するとヤバくなりそうな魔法陣拾ってる。
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