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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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899 星暦557年 萌葱の月 17日 久しぶりに遠出(20)

家令補佐の部屋には想定通りにちょっとした書類と金貨及び宝石が隠してあった。

とは言え、換金額の合計的にはメイドとほぼ違いは無い・・・か少ないかも?

使って減っただけという可能性も高いが、微妙に怪しさが更に増えている気もする。


まあ、まだレディ・トレンティスに怪しまれている段階だからがっつり金を毟り取れていないせいで報酬の分け前もあまり多くないだけという可能性もあるが。


メイドも怪しいが、取り敢えず書類が出てきた家令補佐の方から始めようということで目を覚まさせ、水代わりに多少意識がぼんやりする薬を混ぜたお茶を飲ませてから部屋から出てきた書類を見せて審議官が質問を開始した。


「レディ・トレンティスから色々と覚えのない買い物や寄付の出費が最近起きていると相談を受けてね。

覚えのない買い物の支払いが行われた取引先を調べたら怪しい書類が出てきたのでその決裁を扱った君の部屋を調べさせてもらったらこの書類が出てきた。

審議官として、この真偽の分かる魔具を使ったうえで幾つか質問をさせてもらうから、正直に答えてくれたまえ」

審議官のおっさんが映像用の魔具を家令補佐の頭に乗せ、徐に机に座っている家令補佐の方に身を乗り出した。


「今回の詐欺事件はどういう流れで始まったんだ?

最初から正直に話せば処罰に関してもそれなりに配慮してもらえるよう言葉を添えても良いぞ」

家令補佐の見えないところにある映像側の魔具を見ると、どうやら色々と混乱しているのか物凄い勢いで色々な場面が現れては消えている。


お。

あのマキウスとかいう男も出て来たな。

メイドも一緒にいる?


「チャルと付き合い始めて、サルソートの街までちょっと遊びに行った酒場でたまたま一緒になった男が、地元の取引先の一つの支店長補佐だったんです。

色々と話している間に、お偉いさんなんか金が余っているからどこに払っているかなんて碌に注意していないから、内部と取引先とで手を組めば幾らでも金を抜き取れるって話になって・・・」

お茶の入ったマグを両手で握りしめながら家令補佐が話し始める。


あのメイドがチャルっていうのか?


確かにちゃんと自分の収支を把握していない貴族は多いし、そこら辺は家令に任せていることが多い。家令が補佐に細かい作業を任せていて確認もおざなりなら、貴族にとって小さな金額を抜き取る程度だったら意外とバレないかも知れないか。


そう考えると、レディ・トレンティスが気付いたのはちょっと意外だな?

というか、ちゃんと日常の収支を確認しているような貴族は標的にするべきじゃあないだろうに。

手ごろな老貴族は既に食い物にしたから、薬で手ごろじゃない貴族を狙い始めたのかね?


「注意していないのだったら変な薬を混ぜたお茶をレディ・トレンティスに飲ませる必要な無かっただろうに。

毒を盛るのは単なる横領よりもはるかに罪が重くなるぞ」

審議官が重々しく言う。


「マキウスが色々と今までに知り合いから聞いた成功談っていうのを聞かせてくれて・・・チャルも、もうそろそろ結婚するなら色々とお金がいるしってちょっと乗り気になって。

でも、私はレディ・トレンティスはちゃんと毎月収支を確認する人だから変に出費が増えたらバレるから残念だって言ったんだ」

へぇぇ。

メイドと結婚する予定だったのか。

まあ、兄嫁が来たから実家に居辛くなった女だったらそれなりの生活が出来るなら結婚して自分の家を持ちたがるだろうな。


とは言え、貴族の家令補佐と専属メイドだったらそれなりに収入はある筈だ。

まあ、結婚して住み込みを止めたら専属ではなくなるから給料が下がるかも知れないし、なんと言ってもレディ・トレンティスはそれなりの年だから死んだら館が無人になって使用人の数もぐっと減るかもと思った可能性はある、かな?


なんか、メイドの方が乗り気だった印象だな。

共犯者の片方の言い分だから、単に自己正当化しているうちに印象も勝手に改竄している可能性も高いが。


「そうしたら、ちょっと注意力緩慢になって何か質問して来てもこちらの答えを信じてくれる上に、タイミングを上手く計ればこっちが言ったことをやってくれる薬があるって言われて。

チャルがレディ・トレンティスが好きで個人的に飲む紅茶に混ぜれば他の人にバレずに少しずつそれを使えるかもって乗り気になって・・・」

ぼそぼそと家令補佐が続ける。


魔具の映像ではどっかの酒屋でマキウスとメイドが二人がかりで熱心に話しかけている姿が見える。

これってマジでメイドが家令補佐をマキウスに会わせて説得する役割だったんじゃないか?

説得役は名目上はマキウスがやることでメイドは単に一緒に誘われただけな様に思わせているかも知れないが、酒場で会う前にマキウスがメイドに先に話を持ち掛けていた気がするな。


とは言え、金の横領の実行犯は家令補佐だから罪はそれなりに重いが。

誘われたにせよ、実行に合意したのは此奴なのだ。


ただまあ、少なくともメイドが何も知らずに悪い男に騙されたという線は無くなったな。

金を騙し取ろうという話し合いに最初から参加していたんだ。

悪気はなかったなんて言い訳は通用しない。




家令補佐は実はそれなりに雇ってくれた事に感謝して真面目に働くつもりだったんですね〜。

あっさり女と金の誘惑に流されましたが。

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― 新着の感想 ―
[一言] ………コレ、美人局なんじゃ(滝汗)。 どっちにしても極刑不可避な商会の輩(名前も書きたくねぇ)は兎も角、家令補佐は要監視の上で労務ぐらいで済みそう。 というか、コレは別のところから鎌に依頼が…
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