表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

896/1357

896 星暦557年 萌葱の月 16日 久しぶりに遠出(17)

「はいちょっと失礼~」

机の傍に座っていることで引き出しを動かしにくくしている女性を椅子ごと後ろに動かし、2段目の引き出しを取り出して二重裏になっている板を動かし、中の書類を取り出す。


丁度机の上に開いてあった帳簿と内容の見た目が似ているので、机の上のが名目上の帳簿で、こっちの書類が裏帳簿かな?

頁数が少ないから・・・残りはあのマキウスとか言う支店長補佐?が持っていそうだな。


女性の服や装飾品は特に良い物ではないが・・・不正に加担する報酬はなんだったんだろうな?

まあ、家族の薬代とか、老後の為の貯金とか色々とあるだろうが、そこら辺は調査官に言い訳と一緒にぶちまけて貰おう。


同情すべき事情があったところで罪は変わらないが、多少は刑罰が軽くなったり、服役中に家族への支援が得られる可能性だってないとは限らない。

つうか、領主の老婦人から金を騙し取るのに加担したのだ。同情すべき事情が無かったら家族は領地から夜逃げする羽目になるだろう。


考えてみたら、同情すべき事情がそれこそ『寝たきりで動けない病人』でもない限りどちらにせよ夜逃げは必要かな?

しかも病人がいたところで、その薬代は流石に援助してもらえないだろうから詰んでるが。

もしかしたらこの女の弱みを造る為に家族が高額な薬を必要になるように毒を盛られた可能性もありえるが・・・そこまでやらなくても大抵の悪事って言うのは誰かが金に釣られて協力するからなぁ。


「裏帳簿の一部ですかね」

取り合えず引き出しの二重底から取り出した紙と机の上にあった帳簿を税務官の爺さんに渡す。


他の机もちらっと視るが、特に露骨に細工してある隠し場所は無かったので、先ほどマキウスとやらが出てきた部屋の方へ進む。


「おい!

勝手に人の部屋に入るな!!」

おっさんが俺の腕を掴んで止めようとするが、警備兵にパシっとその腕を叩き落とされていた。


こいつ、アホか?

捜査官と一緒に来た人間へ自分の仕事部屋に入るなって・・・。

というか、職場どころか此奴の住居の方もひっくり返されることになるのに、分かってるのかね?


ウォレン爺あたりがこの事件の話を聞いたら王都側の黒幕も家の壁紙から床板まで全部剥しまくる勢いで調べまくりそうだが・・・本来はこういう事件って王都側では審議官が調べる筈だと思うけど、今回は根回しする時間が無かったからどうなるのかな?


マキウスの単独犯行じゃないとしたら、薬の入手と効果的な投与方法や金の騙し取り方とか、それなりに慣れているっぽいから大々的に金持ちな老貴族や引退後の豪商とかを狙う組織があるのかもな。


まあ、金がある上に記憶力や思考力が落ちがちで、しかも家族とか知り合いとのやり取りが減ってきても『しょうがない』と思われがちな老人っていうのはこういう詐欺のターゲットになりやすいだろうから、やっているのは一つの組織だけじゃあないだろうが。


下手をしたら手数料を払うから老当主がボケた様に見える薬を盛ってくれと依頼するせっかちな跡取りが居ても不思議は無いが・・・ボケの症状って短期的に会って話すだけでは分かりにくい事も多いから、多少ボケても思う通りに当主の座の移行がいかなくて却って大変な事になりそうだ。


それはさておき。

マキウスの部屋には大きく立派な執務机と本棚があり、書類や本が色々とびっしり並べられていた。

これで実質支店のトップじゃないなんて、あり得んだろ。

どんだけ儲けたら支店長補佐(?)にこれだけ金を掛けられるって言うんだ。


それに地方の中小商会の支店長補佐程度にこんなに大量の書籍が必要かね??

このマキウスって男は変なコンプレックスを拗らせてる感じだな。


王都で成功できなかったから地方で・・・と頑張っても思ったように稼げずに悪事に手を染めるタイプか?

まあ、真面目にキリキリ働いていたってそこまで金って簡単に稼げるものじゃあないんだ。

地方で必要もない高級ジャケットなんぞを好む人間が満足できるような金を稼ぐのはまず無理だろう。


というか、必要もない贅沢を欲するタイプって、結局いくら稼いだって満足できないんじゃないか?

もっと質素な毎日に満足すれば生きていくのも楽だろうに。


理不尽な理由で殴られず、毎日空腹を抱えて寝ないで済むだけで、人生は素晴らしいんだぞ?

まあ、女性なんぞは『寝る前に食べると太るから』って事で空腹になっても夜は絶対に就寝前は食べないんだってシェイラが言っていたが。


そんなことを考えつつ、後ろの立派な書籍の中で書類を束ねて本のカバーを上から被せてあるものを取り出し、中を開いてみる。


お。

さっきの女性の所の裏帳簿と同じ筆跡だな。

こっちが残りの裏帳簿か。


他に・・・ああ、此奴も2番目の引き出しが二重底になってるな。

同じ工房ででも作らせてるんかね?


下手に二重底なんぞにするよりも、普通の書類の中に混ぜておけばいいのに。

ヤバい書類なんて、探していない人間が偶然見てもそうそう分からないものなんだから、下手に隠さない方が良いと思うだけどなぁ・・・。



豊かになった日本でも、空腹を抱えて寝る哀れな人たち・・・体重を気にする女性陣w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普通の書類に混ぜとくと、素人にはわからなくてもふつうの調査で発覚しちゃいますからね
[一言] 心はね豊かになっていないんですよ。悲しいことに
[一言] ………………ウィル君の言には納得しますが、作者さんの一言には、是が非でも首をどちらにも振りたくないでござる(滝汗)。 自分の命は惜しいからね、死亡フラグなんて建てたくないんだよ。 まあその…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ