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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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852/1357

852 星暦557年 青の月 10日 魔術回路の素材(2)

「へぇぇ、魔術師の髪の毛と普通の人のとであまり違いは無かったんだ?」

ノンビリと遺跡がある森の中を歩きながらシェイラが言った。


色々と試行錯誤した結果を散歩がてら話していたのだ。

意外なことに、魔術師の髪の毛はシャルロの物ですらアスカの抜け毛に断然劣った。

まあ、日常的に使っている魔術回路に誰かの髪の毛が溶かし込んであるなんて考えると微妙な気持ちだったから、効果が無くて良かった気がするけどね。


まだ外に置いてあるような防御結界用の魔具に使う程度なら良いが、寝室に置いてある魔具や、お茶を沸かすためのポットに使っているのに人の毛が入っていると思うと・・・微妙過ぎる。


なんと言っても、人体の一部となるとちゃんと本人が合意して売り出した物か分からないのが怖いし。

カツラだって微妙だが、少なくともあれはかなり長く伸ばして状態の良い物でなくては見た目が悪い。

だから資金繰りに行き詰った貴族や商家の女性が非常手段として売ることも多いが、少なくともそれまではそれなりに良い生活をしていたことが分かる。


魔術回路の素材に溶け込ましてあるのだと、虐待した相手を丸刈りにして無理やり奪っていても分からないからな。

そう考えると誰かの怨念が沁み込んでいそうで、出来ることなら自分の傍には置きたくない。


人の恨みなんてものは心眼サイトでも視えないが、視えないからこそ余計近くに来て欲しくない。


「そう。

効果が高かった幻獣の抜け毛なんて言うのも現実的に量を集めるのが難しいから、商業ベースで使うのは海水から抽出した塩を混ぜた混合物が一番良い感じかな。

どうせ海水から真水を抽出する魔具は船や給水用の島で使われているから、そこの排出物を捨てる代わりに持って帰ってきて売れば金になるし、海岸沿いでやるんだったら普通に海水を汲んできたら抽出できるし、一番現実的かつ魔力消費の改善率も悪く無かった」


普通の岩塩でも中々効果が良かったのだが、何故かシャルロが試した海水を抽出した後の排出物がかなり良かったのだ。

もしかしたらどこの海から採った海水かで効果が違う可能性もあるから、一応近いうちに東大陸の方へ今度転移門を使って海水を汲みに行ってそっちのも試す予定だ。


大理石も多少混ぜると魔力伝達の効率が上がったが、あまり増やすと混ぜて精製した銅線が切れやすくなった。

石灰岩は大して効果なし。

大元の素材は同じとどっかで聞いたんだけど、あの硬さの違いは魔力の伝達効果も変えたみたいだった。


まだ色々と試している最中なのだが、取り敢えず銅10:海水から真水を抽出した後の排出物2:大理石1程度が一番良い結果が出ている。


単品ではなく色々混ぜると意外と変わるので、更に他の物も混ぜてみようとシャルロが遊びまくっているので、試作品づくりはシャルロ、テストが俺、費用計算がアレクと言う感じで実験をしまくっている。


「面白いねぇ。

どの程度効果が上がるの?」

立ち止まってじっと大樹の幹の傷を文様かどうかと見極めようと色んな角度から観察しながらシェイラが聞いてくる。


その傷って魔力が微小だけど線沿いに残っているから文様だと思うぞ?

とは言え、大樹の成長に伴って線があちこちで切れたり歪んだりしたせいで効果は無くなっているっぽいからあまり調べてもしょうがない気がするが。


聞かれたら教えるが、基本的に何も言われない場合は色々と想像するのを楽しんでいるんだろうと言うことで口を出さないことにしている。

そうじゃないと森の散歩なんて完全に発掘作業の下準備になっちまうからね。


一応デートなんだ。

あまり専門的な方向には進まない方が気楽でいい。

どうせここの遺跡は調べることが山ほどあって、手が全然足りていないのだ。

中心部の方の調査が全部終わったら改めてここら辺のまで手を伸ばせばいいだろう。


「1割から2割程度かな?

ただ、素材によっては魔術回路が発熱しちゃうんだよなぁ。

多少の発熱だったら特に問題はないが、下手をしたら回路が弱って歪んだり切れたりする可能性があるし、部屋が暑くなったら夏なんかは迷惑だし。

一応出来るだけ変な温度効果が無いのを探している」

ついでに微妙に光るのもあるが・・・あちらは温度が変わらないなら無視している。

どうせ魔術回路なんてカバーをかけて傷がついたり安易にコピーが出来ない様にしてあるのだ。

光っても特に問題は無いだろう。


「発熱ねぇ。

それはなんか問題になりそうだよね。

熱を上手く逃せない構造の魔具に使った時に下手をしたら発火したりするかもだし。

ところで。

ここの傷で魔力が通ってる文様の部分のを、スケッチしてくれない?」

ペンとノートを差し出しながらシェイラが言ってきた。


やはり文様だと気付いたかぁ。

まあ、この程度だったら構わないが、俺はシェイラと違って幾つものことを同時にやるのはそこまで得意じゃないぞ。


会話がちょっと上の空になっても怒らないでくれよ?




マメに休息日のたびにシェイラの所に遊びに来ているウィル君ですw

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石に髪の毛は「江戸時代のかつらに使用」程度ですが。 トイレは長屋の大家の重要な収入源でしたし、クジラ一頭上がれば骨まで使い倒しましたし。 江戸などの大都市では、町中に落ちてたゴミは再利用用…
[一言] 将来「二人はどんなデートしてたの」って子供に聴かれて、ウィル君が苦笑いする絵面が想像できるな。 しかし、素材の配合分野でも先駆者になりつつありますなぁ。 まあ、本人たちは「面白そうだからやっ…
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