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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後5年目

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696 星暦556年 緑の月 24日 久しぶりに船探し(8)

「漁船とか、漁船かどうか微妙な小さな商船っぽい船って意外と沢山沈んでいるのね」

海岸の砂浜でピクニックランチを食べた後、更に数刻探し回ってもうそろそろ帰ろうか話していた時に見つかった小さな船の残骸を前に、ケレナがコメントした。


小さな商船だと漁船と比べて長距離航海が出来るように帆が違うだけな場合もあるので、帆やその他の細かい内装が残っていない残骸だとどちらなのかの判断が難しい。


まあ、小さな商船なんて、金を節約するために漁船を改造しただけのが多いらしいからね。

ある意味違いが分かりにくいのは当然なのだが。


「漁船も小さな商船も、海に出られない期間が長くなると持ち主が飢えるからね~。

どうしても無理をしがちだし、無理をした時に何とか出来る魔術師を乗せてないから沈没する確率も高いんじゃない?」

シャルロが答えた。


海水がしみ込んだ木材って燃やした時に綺麗な色の炎が上がることもあるので、流木だったり海岸に流れ着いた船の残骸だったらそれなりに良い値段で売れるのだが・・・流石に海底から持って行くほどの価値は無い。


ということで、今日の成果は何も無し。

ぼろい小船はいくつも見つかったんだけどねぇ。

まあ、ここら辺だったら乗っていた人間が岸まで流れ着いた可能性もそこそこあると期待しておこう。


最初の一隻目の漁船はケレナが興味を示したので中に入ってみたが、ぎりぎり俺たちの寝室分ぐらいのサイズがあるか否かの船倉が穴の開いた甲板の下にあっただけだったので、ケレナとしてはかなり失望したようだった。


まあ、それでも砂を打ち払った際の乱反射とか、海底にある固まりへ近づく際の期待感とかをそれなりに楽しんだようだったが・・・明日は同行しなそうだな。

それに明日は友人の伯爵夫人と会うんだろうし。

何かもう少し大きな引き上げるだけの価値がある船が見つかったらそれの内部の探索にシャルロが誘えば良いだろう。


・・・ケレナも毎日伯爵夫人と遊ぶわけにもいかないだろうし、こうなるとシャルロも毎日沈没船探しではなくもう少し休む必要があるかな?

まあ、前回のアドリアーナ号の探索依頼と違い、今回の沈没船探しは気分転換とお遊びだからな。

シャルロがケレナと遊んでいる間にアレクがこっちの地方での商業的な伝手を増やし、俺はシェイラに会いに行くなりシェイラとこっちの辺を飛び回ってみるなりしても良い。


そんなことを考えている間にシャルロが蒼流に頼んで調べた区画に目印を付けて貰い、俺たちは海面に上がって屋敷船へと戻った。


「今日は夕食はどうするの?」

船に戻ってシャワーを浴びた後に皆で集まったリビングでお茶を飲みながらケレナが尋ねた。


そう言えば、まだパディン夫妻は帰ってきてないな。

メイドはいたけど。

ちゃんと指示しておいた通り、港の係留所の係員に送って貰ったようだ。


登録した人間じゃないと屋敷船に乗り込めないが送って貰う程度のことなら出来るので、メイドは適当に街を見て回って食材とかを買い入れした後は船に戻ることになっていたんだよね。


パディン夫妻は娘に会いに行って夕食を食べた後に小型船で帰ってくる予定だ。

考えてみると、みんなで色々と別々に動き回るなら小型船が2つか3つある方が便利そうだな。


今回は俺とシャルロで手漕ぎボートを蒼流か清早に頼んで動かせるが、アレクとその他の人間が別々に行動しようとした場合に魔石で動く小型船が1隻しかないとちょっと大変そうだ。


「商業ギルド経由で美味しいレストランとやらに予約を入れてある。

まだ少し早いがもう出て、ちょっと街中も歩き回ってみるか?」

アレクが尋ねた。


「そうだね」

俺一人だったら適当にこっそり動き回るが、シェイラが喜びそうな店の場所とかを聞いておいても良いかも知れない。


まあ、一番喜ぶのは骨董品の店なのでその場所をアレクが知っているかは微妙だが。


ついでに魚を捕まえてパディン夫人に料理して貰っても良いかもですね〜。


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