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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後8年目

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1352/1357

1352 星暦559年 藤の月 13日 調査協力(5)

 国税局(か軍)の人間が大量に地下室に来て隠し棚の書類を運び出し始めたので、俺と補佐官(多分)は別の階に行くことにした。

「あ、その前にちょっと隣の家に繋がっている廊下を確認して良いか?」

 廊下が地面の下にあるのは視たが、何か隠されているかとかの確認はしていないからな。


「どうぞ」

 あっさり頷かれた。

 という事で奥の廊下へ進む。隣家へ続く廊下はちゃんと床も壁も天井もしっかり漆喰で塗り固められてあり、壁には補強用らしき柱まで数メタ(メートル)おきにあった。


 これって自分たちで掘ったんではなく、ちゃんと職人を雇ってやらせたってことだよな?

 どういう言い訳で隣家とつなぐ地下廊下なんかを作ったんだろう?

 その職人が今も生きているのかちょっと気になるところだが、廊下自体は所々に苔が生えてそれなりに古そうなので、元は単なる非常時の緊急脱出口と言う感じだったのかな?

 違法なことをやっているとか、違法な連中に喧嘩を売っているんじゃない限り、隣の家まで使うような緊急脱出口が必要なのかはかなり怪しいところだが。

 まあ、もしかしたら単に偶然隣の家が売りに出たから商会で買い取って、当主とかその一族の人間がそちらに住んで雨の日とかに濡れずに行き来できるように地下に廊下を作っただけなのかもしれない。


 ……雨除け程度だったら隣家との壁をぶち抜いて地上に屋根付きの渡り廊下を作る方が安上がりだろうが。

 やっぱそう考えると、この地下廊下ってそれなりに悪事の自覚がある時点で造られてそうだよなぁ。

 そうなると、職人の身の安全がマジで気になるところだが、今更調べても分からない可能性が高そうだし、俺が気にしても何か出来る訳でもないので考えないようにしておこう。


 特に隠し場所が無かった廊下を見終わった後は1階は後回しにして、2階の書斎へ行った。

 書斎って隠し物があることが多い場所だからね。

 さっさと隠し場所を暴いて書類とかを持ち出させれば、それだけ俺が早く帰れる可能性が高まる。


 2階の書斎に入ったら、まだ税務局の職員っぽいのが複数で会計帳簿っぽいのを木箱に詰めて持ち出している作業中だった。

 うわ、税務調査って全部もってっちまうのか?

 これって今年の税務報告が出来なくなるじゃん?

 その分の遅延は許してもらえるんだよね??

 国税局の調査のせいで税務報告が出来なかったのに、遅れた分の罰金を徴収されるというのはちょっと理不尽だろう。


 この時期に税務調査するって言うのはほぼ黒なことが確定していて、実際に書類を持ち出すのは何か証拠が見つかったからなのかな?

 ある意味、これが冤罪だったら怖いよなぁ。

 書類を持ち出されて、その中に怪しい裏帳簿っぽい物を勝手に投入されて『発見』された場合なんて、冤罪を晴らすのは至難の業になるんじゃないのか?


 殆どの作業を複数の人間がやっているようだからそう簡単に冤罪が出来るとは思わないが、国税局の職員が悪事なんてする訳がないと皆思っているのか、特にお互いの行動を見張ってはいないからなぁ。

 これだったら書類を箱に入れる際にこっそり懐に忍ばせていた裏帳簿モドキを紛れ込ませても、ほぼ確実にバレないと思う。

 少なくとも俺だったら書類を抜き取るのも、差し込むのも全く問題なく出来るな。


 税務局員にそこまでのプロがいないと期待しておこう。

 いつの日か、俺たちが嵌められるかもなんて考えると怖いぞ。

 まあ、侯爵家子息な上に蒼流高位精霊に溺愛されているシャルロを嵌める度胸があって、それを実行するほど頭が悪い人間はそうそういないだろうが。


「失礼」

 取り敢えず、壁一面の本棚の向かい側にある壁に掛けてあった絵に近寄り、それを少し持ち上げて下の突起を押してみる。うん、右に動くね。

 ガタンとすぐ横の暖炉の方から音がした。

 書斎に暖炉があると、都合が悪い書類の焼却にはかどりそうだよなぁ。

 うっかり一気に大量に捨てるとちゃんと燃えなくて灰の中に十分文字を読める状態で元の書類が残っちまうこともあるが。

 そんなことを考えながら、暖炉の左下の床石が浮き上がったところを外す。

 こんなに暖炉の傍だったら、熱で隠し場所を動かす仕組みが壊れたりしないのかね?

 流石に金属が解けることはないにしても、弱まったり歪んだりして使えなくなりそうな気がするが。


 それともこの暖炉はお飾りでそこまで熱くなるほどは火は燃やさなかったのかな?

 そんなことを考えながら、石の下から取り出した箱を補佐官に渡した。


「銀行の金庫の鍵かな?」

 小さな金属しか入っていないので、多分鍵だと思う。

 まあ、家の中のどこかの隠し場所の鍵の可能性もあるが、外部の隠し場所の鍵の可能性の方が高そうだ。

「これは……南海銀行の紋章だな」

 鍵を窓際まで持っていき、日にかざしてじっくり観察した補佐官が言った。

 なるほど~。

 こういう仕事をする人間だと、銀行の紋章とかを全て網羅しているのか。


 ますます銀行に金を預けるよりもどっかの地面に埋める方が安全な気がしてきた。

ちょっと被害妄想気味なウィル君w

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― 新着の感想 ―
>ちょっと被害妄想気味なウィル君w 現実にでっち上げがバレた例が有りましたからねえ 税務署じゃなくて検察でしたけど
ウィル君、そういう疑問は隣の税務官に聴いておけ。 相手もそういう悪印象、払拭したくて仕方ないんだから。 (実際に税務相談にお気軽に来てくださいってのを見つつ) しかし、手間隙掛けて悪いこと企むけど、濡…
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