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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後8年目

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1351/1357

1351 星暦559年 藤の月 13日 調査協力(4)

 入り口から横に行った奥にあった階段を使って地下に降りて、右側にあった扉を開ける。

 鍵がついていたのだが突入した部隊がざっと中を確認するために既に物理的に解錠したのか、鍵のそばの板が一部欠落していた。

 これはバールを使ったな?

 扉を蹴り破るよりはマシだが、こういう捜査に来る場合は鍵開け位出来る人間を連れて来いよなぁ。

 まあ、連れてこられた人間は捜査対象の商家の本店を調べるのに忙しいのかもだが。


 言ってくれたら俺がやっても良かったんだが……いや、そう言う技能は見せない方が要らん疑いを掛けられなくていいか。

 現時点では単に心眼サイトで隠し場所を見つけるのが得意な魔術師ってだけの認識な可能性が高いからな。

 どこにでも忍び込めて鍵を開けられる盗賊シーフ上がりな魔術師と知られる人間の数は出来るだけ少ない方が良い。

 ただでさえ変に当局者の間で顔が売れそうなのだ。

 隠し金庫や隠し部屋が暴かれて中身が盗まれる度に俺が疑われて、犯行があったと疑われる時期のアリバイの証明をする羽目になるのは避けたい。


 という事で、何も言わずにワインセラーの中に入り、もう一度じっくり中を見て回る。

 お?

 上から気付かなかったが、小さな隠し引き出しがこっちの下にもあるな。

 なんか鍵っぽい物が入っている?


 という事でワインセラーの2列目の奥の他の下の方の板の継ぎ目をグイっと押すと、隣の部分が引き出しの様に飛び出した。

「何だ?」

 後ろから補佐官(多分)が俺の肩越しに覗き込みながら声を掛けて来た。


「鍵だな。

 そこにある隠し棚の鍵かも?」

 隠してあるんだから鍵なんぞなくても知らない相手には探られないんだから良いと思うし、隠し棚の存在を知っている部下に勝手に夜中とかに忍び込んで中を弄られたくないから鍵を掛けるんだったら、同じ部屋に鍵を隠しては意味がないと思うが。


 隠し棚の存在は知っているけど使う権限がない人間(つまりは捜査員が内部侵入している場合なんか)が夜中に漁って開けられないようにするためなのかな?

 でも、犯罪組織に内部侵入するような捜査員は鍵開け技能ぐらいは身につけているだろうに。


 取り敢えず。鍵を取りだし、それを寄越して欲しいような顔をしている補佐官を無視してそのまま奥の壁の前に行く。

 ちょっとここだけワインの棚と棚の間が空いているんだよな。

 とは言え、不自然ではない程度だが。

 部屋の大きさと棚のサイズをちゃんと計算しなかったせいでスペースが開いたと思ってもおかしくはない程度だ。


 という事で、隠し棚の前のワインラックをどうやって動かすのか探るためにじっと見つめる。


 物理的に筋肉で動かすんじゃあないと思うんだよな。

 それじゃあそのうち誰かが腰をやっちまいそうだし、床に大きく傷がついて目立つ。

 何か動かす仕組みがある筈……。

 お!

 これかな?

 よく見たら、奥と奥から2メタ(メートル)ぐらいの所にある床板の隙間がちょっと大きいと思ったら、よく見たらレールが埋め込まれている。

 さて、これを使ってワインラックを動かす仕組みが……これか。

 ガタン。

 下の方にあったワインボトルを一つ、グイっと押し込んで持ち上げると、ワインラックが僅かに持ち上がり、棚の横を引っ張ったらあっさり前に出てきた。


「うわ?!」

 補佐官が突然動いたワインラックから飛び退いた。


 ワインラックの後ろの壁の中央部分に一つ鍵穴があり、そこに先ほどの鍵を突っ込んで回したら、あっさりと壁が左右に開いた。

 単なる木のカバーだったようだ。

 上に漆喰を塗って他の壁と同じように見せかけていたのか。

 木の板に漆喰を塗ると壁っぽく見えるんだな。


 板の裏には先日ウチの工房に入れたような大きな棚が壁一面にあり、奥には引っ張り出したらテーブルになるような板と折り畳み式の椅子があった。


 うわ~。

 あれに座って書類作業するのか?

 長時間やったら腰や首が痛くなりそうだな。

 まあ、麻薬を売るような組織の人間だったら腰も首もガンガン痛くなれとは思うが。


「この書類とかのチェックは持ち出して他の場所でやるのか?」

 流石にここでやるのは大変だよな?

 これを運び出す間、俺は他の部屋を探していていいのか?


「大発見だ!!

 直ぐに人を寄越すからちょっと待っていてくれ!!」

 補佐官が興奮した方に上に行きかけて、思いとどまり、後ろに待機していた軍人に人と箱を寄越すよう命じてこっちに戻ってきた。

 俺をここに一人(一応軍人の見張りが残ったんだろうけど。多分)にするのは不味いと思ったらしい。


「他にもこの部屋に何かありそうか?」

 補佐官が聞いてきた。


「隠し棚や引き出しはないな。

 ワインボトルの中に何か酒以外のモノが入っていてもそれは俺には分からん」

 液体の毒や麻薬だってあるのだ。

 ワインボトルの中にしらっと混じっていても俺には判明のしようがない。

 ワインって封を開けちまったら保存期間が一気に短くなるって話だが、開けたら誰がそれを飲むんだろ?

 ワインセラー一杯ののワインボトルを急いで飲まねば……となったら喜んで協力する軍人や役人が居そうだが。

 だが、捜査に忙しすぎて飲んでいる暇なんてないかな?






証拠品を飲んじゃいけない気もするけど、開封して中身を調べたせいで1週間後ぐらいに大量のそこそこ良いワインが全部お酢になっちゃったら勿体無い気も……。

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― 新着の感想 ―
ワインの方はワインマニアがいれば「存在しない銘柄や作つけしてないはずの年度」から割り出すことは可能でしょうが。 でも、そういう人は飲みそうだからなぁ。 保存も含めて非破壊検査が必須なんですが……そんな…
捜すところを見ていた補佐官が後で同僚斗かに 凄い魔術師がいると話すから どんどん存在が公になって行くことに
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