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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1332/1357

1332 星暦558年 桃の月 25日 久しぶりの手伝い(11)

「森の中の巨木に刻まれている術は、熊みたいな大型な獣を追い払う術だと思うとアルフォンスが言っていた」

 アルフォンスから色々と教わった話を夕食を食べながらシェイラに伝えた。


「熊よけ?!

 確かにあの森ってそれなりに色々とハチの巣とか実のなる木とかもあるのに熊はいなかったわね。

 と言うか、鹿も時折小鹿が紛れ込んでいる程度で群れが入って来るのは見ないわね?」

 俺の言葉にシェイラが手を打ちながら応じた。


 へぇぇ、ハチの巣とか実がなる木があると熊が来やすいのか。

 というか、木ってどれでも実がなるんじゃないのか。

 単に目立たないだけなのかと思っていたが。

「植物って種で増えるんだろう?

 木の種って実の事だと思ったんだが、実がならない木ってどうやって増えるんだ?」

 ふと気になって思わず尋ねてみる。


「種って言っても食べておいしい実じゃなくて、粉っぽいんのとか松ぼっくりみたいのとか、色々とあるでしょう?

 あの森には栗やドングリや果物の木もそれなりに生えているのに、考えてみたらそれを食べる大型な獣がいないのよ。

 ……まさか遺跡の術で追い払っているとは思わなかったわ〜」

 シェイラが教えてくれた。


 へぇぇ。

 栗や果物の木も生えているのか。あまり気にした事が無かった。

 だったらもう少し秋の早い目な季節に行ったら、そういうのを採取できるのかね?

 でもまあ、ちゃんと人間が色々と手入れしている果樹園の木の実の方が美味しいんだろうが。


 ……そう考えると、果樹園って時々熊に襲われるのか?

 そうだとしたら、巨木を四隅に植えるだけで熊が来なくなるかもって聞いたら確かに興味を示す領主は多そうだな。


「ちなみに、術を掛けるには10年から20年ぐらいかかるらしい。

 現存の術が掛かっている巨木の樹木霊に頼んで挿し木する枝を貰い、それを魔力多めな水を定期的に掛けて肥料も魔力を多めにして育てると早く大きく育って樹木霊の目覚めも早いから、それだと5年目ぐらいで交渉が出来るようになるんだと。その際に交渉に成功して紋様を刻むと10年目ぐらいで効果が出始めるんだってさ」

 うっすらと元の樹木霊とのリンクも残っているから話しかけた時の目覚めも早いし、意思疎通もしやすくなるらしい。


 普通の木相手に交渉するなら、やはり魔力が多めな環境で育て続けた上で10年後ぐらいに声を掛けたら樹木霊が応じてくれるかも?との話だった。

 しかも、樹木霊が話し合いに応じても、紋様を刻むことに合意するとは限らないらしいし。


「10年!!!

 気が長い話ねぇ。

 それじゃあ王宮研究所でも厳しそうね」

 シェイラが溜息を吐きながら言った。


「シャルロが実家の方の果樹園で試してみたいから、明日挿し木する枝を貰いに行ってもいいかって。

 ちょっとは寄付すると言っていたから、どの程度要求するかツァレスと話し合っておく方がいいかも?

 ただまあ、上手くいった際にガンガン枝を盗みに来ようとする貴族の手先が出てきたら困りそうだし、枝があったって5年間も魔力多めな環境を提供するのは難しいだろうから、どうやって情報を広めるかは事前に話し合っておく方が良いかもとも言っていたが」

 単に魔術師に魔力を注がせた水を遣ればいいのか、それとも俺やシャルロみたいに水精霊と伝手がある人間が精霊に頼んだ水をやらなきゃいけないのかで、大分と難易度が変わるし。


「あら。

 寄付はいつでも大歓迎だけど、出来ればシャルロが魔力を提供するところと、別の魔術師に水や魔力多めな肥料を作らせて与えるところと、二通りに試してもらえないかしら?

 水精霊の加護持ちじゃないとダメとなったら再現性はほぼないに等しいもの」

 シェイラも問題点に気付いたのか、テストの幅を広げるよう要求してきた。


「確かにな。

 というか、クルストフの爺さんも魔術師だろ?

 少なくともあと5年ぐらいは生きているだろうし、あの爺さんに頼んでどこかヴァルージャ近辺の果樹園で実験させて貰ったらどうだ?」

 ヴァルージャの方が南方だから木の成長も早そうだし。

 5年、10年後にツァレスとシェイラがあの遺跡発掘チームにいるかどうかは不明だが、それでもシャルロの所の試験結果よりは発掘チームがテストに関与できるだろう。


「確かにそうね。

 シャルロの方もだけど、私たちの方でも実験をしてみなきゃね!」

 ちらりとシェイラが俺を見ながら言った。

 これってもしかしてクルストフの爺さんがぽっくり逝ったら俺が協力することになるのか?

 だが、俺も水精霊の加護持ちだからなぁ。

 一般向けのテストには向かないと思うぞ?



魔術師の寿命って長めな事が多いので、一般的な定年退職チックな年齢で辞めたクルストフ老師もまだまだ長生きする可能性も十分ありますw

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― 新着の感想 ―
獣害対策は必須ですが、10年単位の研究ができるかと言うと。 魔術院と王立研究所に情報を共有して、「それでもやる」奴が出てくるまで封印かなぁ。 そして前回の話題もちょっとした世界線の違いで、ドラゴンが闊…
日本熊森協会という頭が逝ってしまってる団体が現実に存在していると知ってビックリしました 事実は小説より奇なり
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